『おいしいを、讃えよう。』をキャッチコピーに、専門家による評価ではなく一般の方々の評価から「今、一番おいしいお店」を選出する「The Tabelog Award 2020」。1月下旬、その授賞式が The Okura Tokyo にて開催されました。
月間利用者1億人を超える、レストラン検索・予約サイト「食べログ」に掲載されている約90万店から、過去1年間に総合点4.00以上を獲得したお店がノミネート。ユーザーによる投票で、各賞の受賞店が決定しました。
今年は過去最高となる624店が受賞。「Gold(ゴールド)」「Silver(シルバー)」「Bronze(ブロンズ)」の各賞と、テーマ別の3つの部門賞が贈られます。
今年で4回目となるこの祭典に「SAKETIMES」を運営する株式会社Clearは、昨年に続いて協賛をしています。
近年は和食のみならず、フレンチやイタリアンなど、各国の料理とのペアリングも注目されている日本酒。受賞した一流店は、どのように日本酒を提供しているのでしょうか。授賞式の様子と合わせてお伝えします。
日本を代表するシェフやソムリエが集まる"食の祭典"
料理人やソムリエだけでなく、食に関わる著名人が一堂に介し、アワードは華やかな雰囲気でスタート。
司会は、お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建さんと、フリーアナウンサーの平井理央さん。プレゼンターを務めるのは俳優の髙嶋政宏さん、お笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」の寺門ジモンさん、「公益社団法人 日本フェンシング協会」会長の太田雄貴さんらです。
式典の冒頭では「食べログ」を運営する株式会社カカクコムの取締役・村上敦浩さんが登壇しました。
「日本が世界に誇る素晴らしいお店、料理人をもっと多くの方々に知ってもらうことを目的としてアワードを開催しています。お店の方々がお互いを讃え合い、日本の食を盛り上げていってほしいと思います」と語り、大きな拍手が湧き起こります。
続いて、3つの部門賞が発表されました。
そのひとつが「Chefs' Choice」。料理人の投票によって、料理人から尊敬を集めるシェフが選出されます。
受賞したのは、東京のフレンチレストラン「カンテサンス」の岸田周三さん。昨年は、ドラマの料理監修をしたことでも話題になりました。
「『料理人になるという夢をもった若い人を増やしたい』『憧れられる職業にしたい』との思いから監修をさせていただきました。今後は、飲食業界の根幹に関わる活動として、水産資源の保護活動に力を入れていきたいです」と、今後のチャレンジについて熱く語ります。
続く2つの部門賞は、今年から新設されたものです。
「Best New Entry」は、初めてノミネートされたお店の中で上位10店に贈られる賞。この賞のスポンサープレゼンターとして、株式会社Clear 代表取締役CEOの生駒龍史が登壇しました。
「世界的に見れば、日本酒はまだニューエントリーです。受賞されたみなさまとともに、日本酒の魅力をさらに広げていきたいと思います」と、協賛した理由をスピーチ。
受賞店には副賞として、Clearが展開する最高級日本酒ブランド「SAKE100(サケハンドレッド)」のフラッグシップ商品「百光(びゃっこう)」が贈られました。
「Best Regional Restaurants」は、どんなに時間をかけてでも食べに行く価値のあるお店を、東日本・西日本の両エリアから1店ずつ選出する賞。東日本からは、秋田県「日本料理 たかむら」、西日本からは滋賀県「徳山鮓」が受賞しました。
トップシェフたちが考える「日本酒」の存在
「Gold」「Silver」「Bronze」の3賞は、あらかじめ受賞店に配布された封筒を当日開封する方式で発表されます。「それではご開封ください」という司会の合図とともに、一斉に封筒が開けられると、会場のあちこちから歓声が湧き起こりました。
今年の受賞数は「Gold」34店舗、「Silver」102店舗、「Bronze」488店舗の計624店舗です。「Gold」受賞店の代表者が壇上に集まると、お互いに握手を交わし、讃えあう姿が見られました。
受賞店の中には、日本酒の提供に力を入れているお店も多数。そのこだわりや提供の仕方について伺いました。
日本酒の持つ伝統文化を伝えたい─「鮨 なんば 日比谷」
「Gold」を受賞した「鮨 なんば 日比谷」の難波英史さん。シャリと鮨種の温度を1度単位で管理する、徹底したこだわりで知られています。
お店で提供する日本酒についてお聞きすると、「鮨には、みずみずしく香りの穏やかな日本酒が合うと思います。鮨や刺身に寄り添ってくれるようなお酒が好きですね」とのお答え。
ペアリングについては「刺身や淡白な白身魚には、すっきりとしていて、ほどよい香りの日本酒が合うと思います。しっかりとした味わいの日本酒には、うちの甘く味付けたあん肝が合いますね。貴腐ワインとフォアグラを合わせるような感覚です」と話してくれました。
お店では、7割のお客様が日本酒を注文するのだそう。さらに、海外から来たお客様は、そのほとんどが日本酒を飲むといいます。
「日本酒がなければ僕の鮨は成り立ちません。お酢や塩気がしっかりと効いているので、お茶よりも日本酒が合うんです。日本酒は日本の伝統文化ですから、それを伝えていきたいという気持ちがあります」
酒器も楽しみながら豊かな気持ちで飲んでほしい─「御料理 宮坂」
表参道にある日本料理店「御料理 宮坂」は「Silver」を受賞。
店主の宮坂展央さんは「今はいろいろなスタイルの日本酒があります。お客様の好みに合わせたり、時には冒険したりしてもらえるよう、さまざまな特徴の日本酒をそろえています」と、日本酒のラインナップについて語ってくれました。
酒器についてもこだわりがあるそうで、「アンティークのルネ・ラリックやオールドバカラ、江戸時代から現代の酒器を使っています。エレガントな酒器で提供すると、女性のお客様に喜んでいただけますね。酒器を見ながら豊かな気持ちになっていただけたらうれしいです」と、宮坂さん。
また、日本酒と日本料理は切っても切れない関係だと宮坂さんは話します。
「八寸などの、酒のつまみには日本酒がよく合う。やはり、本当に日本料理を引き立ててくれるのは日本酒だと思っています」
中国料理で日本酒を最大限に活かす方法とは─「茶禅華」
「Silver」を受賞した、南麻布にある中国料理の「茶禅華」。シェフの川田智也さんとシェフソムリエの上野和寛さんから、日本酒の提供について以下のコメントをいただきました。
「味のトーンの静かな料理に旨味をそっと足してくれる、安心感のあるペアリング。これが、中国料理で日本酒を最大限に活かす使い方だと思いますね」(川田さん)
日本酒は手間暇をかけるほど繊細でシンプルになる。その点が中国料理に通ずるため、「日本酒を提供するのは必然」と考えているそうです。
また、上野さんは「日本酒の苦手なお客様に苦手な理由をさりげなくお聞きして、現代の高品質な日本酒を提供することもあります。そうすることで、新たな日本酒ファンになってもらえるかもしれませんから」と、日本酒の魅力を伝えようとする心遣いを感じます。
日本酒の魅力を世界へ
授賞式の会場では日本酒も提供されており、「紀土」「松の司」「白隠正宗」「貴」「田中六五」「木戸泉」「AKABU」「久保田」「真澄」の9蔵が参加。料理人やソムリエのみなさんと日本酒を楽しみながら、交流する蔵元たちの姿も見られました。
料理人・ソムリエのみなさんは、日本酒の品質やおいしさが年々進化していることを高く評価していました。日本が世界に誇る「今、一番おいしいお店」とともに、日本酒の魅力が世界へ広がっていくことが期待されます。
受賞店のみなさま、本当におめでとうございます。
(取材・文/都田ミツコ)