江戸時代から商業の街として発展してきた日本橋。伝統と革新が融合するこのエリアに、2014年にオープンした商業施設「コレド室町2」に、フレンチレストラン「LA BONNE TABLE(ラ・ボンヌ・ターブル)」があります。
東京・西麻布にあるフレンチの名店「L'Effervescence(レフェルヴェソンス)」の姉妹店としてスタートして以来、常に驚きと感動を与えてくれるこのお店は、フレンチと日本酒の抜群のペアリングを提供することでも有名です。
3月20日に5周年を迎え、日本酒の蔵元も参加して盛大なアニバーサリーイベントが開催されました。その様子をお伝えします。
スパイスやハーブを使った料理に合う日本酒を選ぶ
客席と一体化しているようなオープンキッチン。肉を焼く火、スパイシーな香り、スタッフの掛け声。目と耳で感じ、嗅覚で味わい、料理を口に運ぶ瞬間までも楽しく感じられるような、臨場感あふれる空間です。
LA BONNE TABLEの中村和成シェフ
オープンから5年間、この場所で腕を振るう中村和成シェフは「初心にかえって、突っ走ってきました。本当にあっという間の5年でした」と話してくれました。
日本酒とのペアリングも積極的に提案している「LA BONNE TABLE」。日本酒との出会いはどのようなものだったのでしょうか。
「日本酒の知識は、全くと言っていいほどありませんでした。それが、3年前にFarmer's Marketでお手伝いをしていた時、Aoyama Sake Fleaで熱燗を飲ませてもらって、衝撃を受けたんです。それをきっかけに日本酒にハマっていきましたね」(中村シェフ)
「LA BONNE TABLE」のお酒のチョイスは、ソムリエにすべて任せているのだとか。そこで、ソムリエの戸澤さんにも話をうかがいました。もともと、和食店でソムリエとして働いていた戸澤さん。ワインだけでなく日本酒の知識も豊富です。
LA BONNE TABLEのソムリエ・戸澤さん
「あくまでもシェフの料理が主役のお店なので、"料理に寄り添うもの"という考えで選んでいます。また、日本のフレンチなので、日本のお酒を必ず置くようにしています。ワインも国産のものを選んだり、日本酒に限らず焼酎も置いています」
味の濃い野菜を使い、スパイスやハーブなどの香り高い料理もあります。それに合うお酒を選んでいるため「比較的、クセのあるタイプが多いかもしれません」と話しました。
3月の通常営業に合わせた、戸澤さんの日本酒ラインナップはこちら。
木戸泉酒造の古酒「AFS」や、寺田本家の菩提酛仕込み「醍醐のしずく」など個性豊かな日本酒が並びます。シェフの料理と組み合わさると、どんなマリアージュになるのか気になるところです。
中村シェフの「好き」が散りばめられた空間
石井酒造の石井さん(写真左)と、MUEZの上田さん(写真右)
今回のアニバーサリーイベントでは、蔵元みずから日本酒を提供。石井酒造からは「花あかり」、MUEZからは「女たらし」が振る舞われました。「お祝いの場なので、発泡している華やかなお酒を紅白で選んでみました」と、蔵元の粋な計らいが光ります。
石井酒造の「花あかり」
「花あかり」は、色のつく酵母を使用した、ほんのりピンク色の日本酒。細かく弾ける泡が特徴で、米の旨みも感じつつ、後味はすっきりです。
MUEZの「女たらし」
「女たらし」は、特別ラベル。しっかりした発泡感で酸が際立ち、ドライな印象でした。
この日のメニューは、子持ち鮎のなれずしの熟成米にサワークリーム、生クリームを混ぜた白熟クリームが乗っている原木しいたけ、らっきょうととんぶり、黒オリーブのソースがかかった黒マグロ、肝ソースの芳醇な香りがするカツオなど、和の要素が取り入れられたフレンチです。
会が進むと、店内はライブ感あふれる状況に。次々と料理が運ばれ、お酒は注がれ、スタッフと参加者が一緒にこの空間を楽しんでいる様子がうかがえます。
実は学生のころにバンドを組んでいたという、音楽好きの中村シェフ。今回のイベントではdeadbundyのライブもあり、臨場感あふれる生演奏に会場全体が酔いしれます。
「料理が好き、音楽が好き、デザインが好き。こういう自分の好きという思いをパワーにしています。楽しいことを追求していれば、まわりもきっと楽しくなるのではないでしょうか。このまま、できる限りこの場所で長くやっていきたいですね」との言葉通りに、中村シェフの「好き」が散りばめられた空間でした。
中村シェフの料理と戸澤さんセレクトのお酒。この楽しい空間で、これからももっと多くの人たちにフレンチと日本酒の魅力を体感してほしいと思います。
(文／まゆみ)
