2019年10月12日、伊豆半島に台風19号が上陸。強い勢力を保ったまま北上を続け、記録的な大雨による河川の氾濫や堤防の決壊など、各地に甚大な爪痕を残しました。

酒蔵も例外ではなく、広い範囲で浸水をはじめとした被害を受けました。本記事では、各酒蔵の被害状況をお伝えします。

酒蔵の被害状況

麒麟山酒造(新潟県)

氾濫した常浪川

福島県と群馬県に源流を持ち、新潟県を流れる阿賀野川の支流・常浪川が越水。常浪川に隣接する麒麟山酒造は、貯蔵庫の一部が浸水し、約90センチほどの水深にまで達しました。

貯蔵庫には18本の貯蔵タンクが設置されており、機械系統の修繕やタンクの衛生担保のため、タンク内にある約9万リットル(一升瓶換算で約5万本)の原酒を一時出荷停止としています。設備の洗浄には約1か月かかる見通しで、操業再開の目処は立っていません。

貯蔵タンク

幸いにも、死傷者はいませんでした。蔵の製造設備も無事だといいます。

営業部の向田絵梨子さんは「商品のご購入や、飲食店でのご愛飲をいただければ幸いです」と話してくれました。銘醸地・新潟県で淡麗辛口にこだわり続ける麒麟山酒造。「麒麟山」を飲んで、復興を応援しましょう。

第一酒造(栃木県)

栃木県佐野市で「開華」を醸す第一酒造は、330年以上の歴史を誇る県内最古の酒蔵です。蔵から数百メートルの距離にある秋山川が氾濫し、泥水が敷地に流れ込みました。

第一酒造の浸水の様子

蔵には膝が隠れるほどまで水が達し、事務所も数十センチが浸水。通信機器が水没したことにより、電話やFAX、インターネットが使えない状態です。

しかし、タンクに貯蔵していたお酒に影響はないとのこと。20名以上のボランティアの方々も加わり、蔵内外の泥を片付ける清掃作業を進めています。

第一酒造の浸水の様子

「若い方から私より年配の方まで、地元のボランティアの方々にご協力していただいています。みなさんからはとても勇気付けられていて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。まだまだ普通の状態には戻りませんが、早期の復旧を目指して頑張ります」と、代表取締役社長の島田嘉紀さんは話します。

来週からは、被害を受けなかった商品の出荷を目指しているとのこと。全国新酒鑑評会で県内最多の金賞受賞数を誇る「開華」を飲んで、第一酒造にエールを送りましょう。

田中屋酒造店(長野県)

冬は積雪が2メートルを超える豪雪地帯・長野県飯山市で「水尾」を醸す田中屋酒造店。河川の氾濫により、お酒や醸造設備の多くが泥水に浸かる被害に見舞われました。

再開には修理や交換などが必要で、多額の費用がかかる見通しです。

台風19号で甚大な被害を受けた田中屋酒造店(長野県飯山市)の新聞記事や、蔵内の写真など

しかし、約2週間にわたるボランティアの方の協力により、蔵の清掃・殺菌作業を終えることができたとのこと。仕込み再開の目途も立ちつつあり、11月18日(月)の出荷再開を目指して準備を進めています。

また、長野の地酒を多く扱う四谷三丁目の居酒屋「日がさ雨がさ」が、田中屋酒造店の了承のもと、同蔵に直接全額をお渡しする義援金口座を開設しました。

みなさまのご厚意と「水尾」を愛する思いは、復興のための諸経費として使用される予定です。みなさまのご協力をお待ちしています。

◎田中屋酒造店・応援募金概要

  • 銀行名:みずほ銀行 四谷支店(店番号036)
  • 口座:普通/1332059
  • 口座名:大長野酒祭りin四谷
  • 〆切:2019年11月29日(金)
  • 振込手数料はご負担ください。
  • 詳細は日がさ雨がさのブログにてご確認ください。

◎お問い合わせ先

拝啓 毎々格別のご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます。

全国的な大災害となりました台風19号により、弊社も大きく被害を受けてしまいました。その後、約2週間にわたるボランティアの皆様の多大なご尽力・ご協力により、蔵の清掃・殺菌作業をようやく終わえる事ができました。本当に心より感謝いたしております。仕込み再開の目途も立ちつつあり、11月下旬を目指し準備を進めております。皆様にはご連絡もままならず、ご心配をおかけしまして誠に申し訳ございませんでした。

しかしながら、まずは出荷の再開をするためには、必要となる設備・備品の修理、失ったラベルの再購入等を、さらに行う必要があることが分かりました。つきましては、出荷の再開はもうしばらく延期をさせて頂き、11/18(月)の出荷再開を目指し、さらに復旧をしてまいります。

一日も早く復旧できるよう、社員一同、一丸となり前に進んでまいります。
今後ともよろしくお願いします申し上げます

株式会社 田中屋酒造店
代表取締役 田中 隆太

出典:田中屋酒造店 公式HP

ほかに被害を受けた酒蔵

伴野酒造(長野県)

出典:伴野酒造 公式Facebook

大信州酒造(長野県)

出典:Twitter

大天狗酒造(福島県)

出典:Twitter

笹の川酒造(福島県)

出典:Twitter

【精米工場】TOHOピクス郡山工場(福島県)

被災したのは郡山市道場の郡山中央工業団地内にあるTOHOピクス郡山工場。近くを流れる阿武隈川が氾濫して工場などが約1.5メートルの高さまで浸水し、精米機が使えなくなった。

精米は酒造りの最初の工程で、どの程度まで米を削るかで味や香りのバランスに影響を与える。県酒造協同組合によると、同工場には県内の酒蔵の約8割が組合を通じて精米を委託し、県内産酒米の半分以上を扱っており、打撃は大きい。

また、浸水によって工場内に搬入されていた県産の酒米「夢の香」や「五百万石」も水につかった。復旧の見通しは立っておらず、阿部淳専務理事は「現在は県外の精米施設を探している。酒米の供給が遅くなるかもしれないが、11月にピークを迎える仕込みに影響が出ないように努力したい」と話した。

多くの酒蔵が集まる会津地方の会津若松酒造協同組合(会津若松市)も、年間約192トンの地元の酒米を同工場で精米し、酒蔵に供給している。しかし、工場の被災を受けて15日に予定していた新米約20トン分の搬出を中止した。岩沢庄司専務理事は「工場と酒蔵が直接契約している分もあり、酒蔵への影響は大きい。1月には大吟醸酒の仕込みが本格化する。それまでに何とかなれば」と祈った。

出典:毎日新聞

日本酒を飲んで応援!

記録的な大雨により、各地に水害をもたらした台風19号。SAKETIMESでは、ほかの酒蔵についても被害状況を確認中です。順次、本記事を更新いたします。

被害を受けた酒蔵のお酒を飲んで、復興を応援しましょう。みなさまのご協力、お待ちしています。

(文/SAKETIMES編集部)