月桂冠は100年以上も前から日本酒を台湾に輸出しています。台湾における月桂冠の活躍を綴った前編では、長い歴史のなかで、台湾の日常に寄り添い、現地企業とともに"チーム"として台湾清酒市場を開拓している様子をお届けしました。
年配層から若年層まで幅広い顧客に対して、手に取りやすい価格の商品を提供し続けてきた月桂冠。消費の現場では、月桂冠のお酒はどのように楽しまれているのでしょうか。今回は、実際に台湾を訪れ、現地のスーパーや酒屋、飲食店などを取材してきました。
幅広い日本酒が揃う台湾のスーパーマーケット
日本酒の品揃えが充実している台北市内のスーパーマーケット・ジェイソンズ・マーケットプレイス。台湾に23店舗を展開する、輸入食材を中心に取り扱っているお店です。特に日本から輸入された食材は人気が高く、見慣れたメーカーの商品が多く販売されていました。
日本酒は1,000~3,000元(約3,700~11,000円・720ml)ほどで販売されています。300mlの小瓶やスパークリング日本酒、果実酒などの品揃えも多く、台湾でさまざまなバリエーションのお酒が親しまれていることがうかがえますね。
月桂冠が現地のディストリビューター・味丹(VEDAN)社と共同製造している「月桂冠 芳盈清酒」もありました。500mlで160元(約600円)前後という、リーズナブルな価格が魅力的です。
「月桂冠 芳盈清酒」は、月桂冠が原酒のまま台湾へ輸出したものを味丹社が加水・ボトリングしたお酒です。原酒への加水を国内ではなく台湾で行うことによって関税がかかる量を減らすなどでコストを削減。価格競争に強い商品として2013年から販売されています。
現地の方々にとって安心感のあるお酒、月桂冠
次に訪れたのは輸入酒専門店のオレンジ・ワインショップ。2008年から台北市内にお店を構え、20~50代の幅広い世代の会社員に人気のお店です。店長兼オーナーのポール・チェンさんに台湾での日本酒人気について話をうかがいました。
「年々、日本酒の売れ行きは好調になってきていますよ。購入していくのは40代が多いですね。時折、特定のメーカーがブームになり、店頭に並べた途端にすぐに売り切れることもあります。そういう点では、台湾人は新しいものを好む傾向があるかもしれません。新商品を並べると、すぐに売れてしまいます。
ただし、それはあくまでも短期的な反応です。一時的に人気が出てもリピーターはなかなか増えません。そんななかで、常に安定して人気なのは月桂冠。昔から台湾で愛されてきたお酒なので、知名度が高く安心感があります。"清酒といえば月桂冠"というブランドが形成されているんです。年配層は月桂冠の一升瓶を、若年層はかわいらしいおしゃれな小瓶を購入される方が多いですね」
台湾で日本酒を広めるためには、飲む習慣をどのように変えていくかがポイントだと、ポールさんは言います。
「台湾では、仲間同士の歓談を楽しみながらたくさんのお酒を飲みます。アルコール度数の高いウイスキーなどが好まれ、日本酒はあまり選択肢に入らないのが現状です。また、レストランで日本酒を飲むことは、若者にとってかなり贅沢なこと。日本酒を飲む機会をどう提供していくかを考えなければいけません」
今ではさまざまな銘柄の日本酒が台湾に輸入されるようになり、おしゃれなラベルのものや今まで飲んだことがないような酒質のものなど、多様な選択肢の中から日本酒を選べるようになってきています。
そのなかでも、流行に左右されることなく安定したブランドを確立し、愛飲されている月桂冠。手に取りやすい小瓶の商品から大吟醸酒まで、顧客層や飲酒シーンに合わせたラインアップを展開する月桂冠は、台湾で日本酒を広めていくためのキープレイヤーであることは間違いないでしょう。
月桂冠は台湾料理にもぴったりと寄り添う
レストランでは、どのような世代の人たちが、どのような機会に日本酒を飲んでいるのでしょうか。
20代後半から40代前半の会社員が仕事後によく訪れるという、台北駅近くの飲食店「33区熱炒」を訪れました。
33区熱炒では、豚肉の肝臓の炒め物や四川風ピータンとピーナツの和え物、はまぐりとバジルの炒め物など、伝統的な台湾料理を提供しています。台湾で人気の料理「火鍋」には月桂冠のお酒を入れているのだとか。鍋で鶏を煮るとふつうは徐々に硬くなってしまうそうですが、日本酒を入れることで肉質が柔らかくなるのです。
そもそも、日本酒は台湾料理に合うのでしょうか?
こちらのお店では、男女関係なく友人3~5名で日本酒と台湾料理を楽しむ方が増えているのだそう。女性はお酒を冷やして飲む人が多いですが、男性は熱燗に梅干しを入れて飲む人もいるようです。
人気の銘柄はもちろん月桂冠。"清酒といえば月桂冠"と考える台湾人が多く、プロフェッショナルなメーカーとして信頼されている様子が感じられます。
飲食店でも確認することができた月桂冠のブランド。食中酒としての確固たる存在感がありました。
月桂冠のお酒は台湾料理特有の脂っこさをさらりと洗い流し、口の中をリフレッシュしてくれます。柔らかな口当たりでキレの良い月桂冠のお酒は台湾料理にぴったりと寄り添っていました。
イベントを通して、日本酒の魅力を若者に
台湾では、大小さまざまな清酒試飲イベントが開催されています。日本酒学講師を務める歐 子豪(Michael Ou)氏が主催する「Sakelism」は今年で5回目を迎える台湾最大規模の日本酒イベント。昨年は日本酒に加えて他のアルコール飲料も含めた大規模なイベントに発展し、30代を中心に約3万人が来場されたそうです。
「Sakelism」の運営に携わるWine & Spirits Digest(以下WSD)の社長 レオ・ウーさんにお話をうかがいました。
「『Sakelism』は2013年の初開催以来、お客様から大きな反響をいただいています。来場者層は若者が多く、特に女性の割合が大きいことに私たちも驚きました。台湾で日本酒を広げるためには、若年層へのアピールが重要です。そんな彼らと接点を持てる『Sakelism』は、日本酒の台湾展開においてとても重要なものといえるでしょう」
WSDはアジア唯一のアルコール飲料専門誌も出版しています。ウイスキーやワインが人気の台湾ですが、日本酒も含め多様なジャンルのアルコール飲料を取材・紹介しているWSDのミッションはアルコール飲料の市場拡大。台湾をはじめとするアジア全体のアルコール飲料業界に幅広い知見を持っています。
ここ3年で急速に伸びてきた台湾の日本酒市場。そのなかでも、特に月桂冠のお酒が一番人気だとレオさんは言います。
「『Sakelism』でも、たくさんの若者が月桂冠のブースを訪れていました。スパークリング日本酒や果実酒も含めさまざまなラインアップを提供していたので、多くの若者や女性が月桂冠の魅力に惹きつけられていましたね。月桂冠のお酒は、親の親の世代から台湾で親しまれ、街中のさまざまなスーパーや酒屋、レストランで目にします。"昔から流通している"という安心感に加え、幅広い顧客層に合わせて商品を展開している月桂冠のお酒は、台湾の誰もが"初めて口にするお酒"と言えるかもしれません」とレオさんは話してくれました。
"清酒といえば月桂冠"というブランド
戦前から台湾の日常に根付いてきた月桂冠。現地の料理にもぴったりと寄り添い、最高のペアリングを生み出しています。"昔から流通している"という信頼に甘えることなく、価格競争力の高い商品を現地企業と共同開発したり、試飲イベントで若年層に向けて日本酒ベースのスパークリングリキュールや果実酒を提供したりと、日々努力を続ける月桂冠の姿からは「お客様の期待に応えたい」という企業の思いが見えてきました。
今年380年を迎えた月桂冠。その記念に社員たちが大挙して台湾を訪れました。参加した約400名の社員たちはそれぞれ、先人が築いてきた月桂冠と台湾の関係を耳にし、また自社商品が台湾で消費されている様子を目の当たりにし、月桂冠が目指す"最高品質"をさらに世界へ届けていこうという意志を新たにしたようです。
台湾は、月桂冠にとって単なる"日本酒の輸出先"ではありません。大勢の社員を連れて記念旅行を行うほど深い関係にある月桂冠と台湾の間には、長い歴史と物語がありました。だからこそ今、台湾で"清酒といえば月桂冠"というブランドが形作られているのでしょう。
(取材・文/古川理恵)
sponsored by 月桂冠株式会社