鮮やかな青と白のパッケージの中央に描かれた、カタカナの「ハクツル」の文字。昭和レトロなデザインで注目されている「白鶴 香るうまくち原酒」は、しぼりたての鮮烈な香りと、原酒らしい芳醇で旨味のある味わいを追求した、白鶴酒造の新たな定番商品です。

白鶴 香るうまくち原酒

写真提供:白鶴酒造

180mLの飲み切りサイズという手軽さも相まって、発売当初から好調な売り上げを見せている「香るうまくち原酒」ですが、このレトロなデザインが生まれた背景には、白鶴酒造がこれまで歩んできた歴史とのつながりがありました。

この記事では、パッケージのデザインを中心に、この「香るうまくち原酒」の魅力に迫ります。

カタカナの「ハクツル」を採用した理由

2022年2月に発売開始した「白鶴 香るうまくち原酒」。開発の背景について、マーケティング本部 課長代理の小倉健太郎さんは「実はさまざまな要素が重なって生まれた商品なんです」と話します。

白鶴酒造 マーケティング本部課長代理 小倉健太郎さん

白鶴酒造 マーケティング本部 課長代理 小倉健太郎さん

「当時、白鶴酒造の研究室が独自に開発した酵母を使って、なにか新しい商品ができないかと考えていました。その酵母を使用すると、バナナやメロンを思わせる甘い香りが非常に強く出るうえに、酒質が劣化する要因となる成分が出にくく、フレッシュな味がキープできるというものです。

一方で、別の部署からは、ふたを開けてそのまま飲めるような、広口のアルミ缶の商品が製造できるかもしれないという話がありました」

オリジナル酵母を使用した日本酒と、手に取りやすいアルミ缶のアイデア。小倉さんは、このふたつを組み合わせて、この日本酒をしぼりたての原酒のまま缶に密封して、開栓すると同時にフレッシュな風味をダイレクトに感じてもらえるような商品にしようと考えました。それが、この「香るうまくち原酒」です。

白鶴 香るうまくち原酒

今回の商品開発で重視したのは、パッケージのデザイン。「香るうまくち原酒」の缶には、カタカナの「ハクツル」の文字が印象的に配置され、昭和レトロの雰囲気を感じさせます。

近年、日本酒のクラシックなイメージから脱却しようとポップなデザインの商品が増えてきているなか、どうして、このようなレトロなデザインに仕上げたのでしょうか。

「若者を中心に国内外でレトロカルチャーがブームになっていることを知り、約300年の歴史がある白鶴酒造なら、本格派のレトロが体現できるのではないかと考えました。加えて、コンビニやスーパーに並んでいる日本酒をあまり手に取らない方々にも新しいイメージを持ってほしいという思いもありました」

目指したのは、昭和の雰囲気をイメージしたぬくもりのあるデザイン。その発想のもととなった看板は、白鶴酒造の本社に併設する白鶴酒造資料館にあります。

デザインにこだわる白鶴酒造の伝統

白鶴酒造資料館は、昔ながらの酒造りの工程をはじめ、これまでの白鶴酒造の歩みが貴重な資料とともに展示された施設。地元の観光地としても人気のスポットです。

白鶴酒造資料館 館長の髙田昌和さん

白鶴酒造資料館 館長 髙田昌和さん

「これが『香るうまくち原酒』のデザインのモチーフになった看板です」

そう言って案内してくれたのは、館長の髙田昌和さん。そこには、白地に「ハクツル」と書かれたホーロー製の看板がありました。

「ハクツル」と書かれたホーロー製の看板

「カタカナの『ハクツル』の表記が使われていたのは、昭和30年代ごろ。本社の看板もカタカナで書かれていた時代です。おそらく当時の最先端のデザインだったのでしょうね」(髙田さん)

昔の白鶴酒造の社屋

1964年(昭和39年)〜1970年(昭和45年)ごろに撮影された白鶴酒造の本社

言われてみれば、展示されているホーロー看板は、白地に赤い文字が際立ち、雑踏の中にあっても目を引きそうです。「香るうまくち原酒」の「ハクツル」は、この看板のデザインをもとに、書体を現代風にアレンジしながらデザインされました。

「白鶴酒造は、昔から派手なラベルが好きなんですよ。しかも、ただ派手なだけではなく、きれいな色合いが意識されていたように思います。他社と違うものや新しいものを追求する精神は、デザインの観点でも伝統的に受け継がれてきたのかもしれませんね」(髙田さん)

白鶴酒造の商標の変遷

そんな髙田さんの言葉を聞いたうえで、展示されている過去の商品のラベルを見ると、美しく凝ったデザインの数々に目が留まります。

昔の白鶴酒造のラベル

白鶴酒造では、1979年にCI(コーポレート・アイデンティティ)を統一するまで、実に多彩なラベルが作られ、お酒を彩っていました。鶴が描かれた日本画を転用したものや、斬新なカッティングが施されたもの。どれもカラフルでセンスが良く、現代でも通用しそうなものばかりです。

昔の白鶴酒造のラベル

酒造りとともに、ラベルのデザインへのこだわりもまた、長い時間をかけて培われてきた白鶴酒造の財産であることが感じられます。

アルミ缶日本酒のイメージを変える存在に

「代わり映えのない売場はつまらない。どうやったら新しく見せられるか」をモットーに、常に目を引くデザインを考えているという小倉さん。

「新しい商品のデザインを決めるときは、酒質のイメージと消費者の手に取りやすさ、その中間点を探していきます。方向性が見えてきたら、実際にデザイナーと売場をまわって、棚に並んだときの商品の見え方を確認しながら検討を進めていきます」

流行や時代を読み、昭和レトロの路線で仕掛けた「香るうまくち原酒」のデザインはSNSなどで好意的な反応があり、小倉さんはデザインの力で消費者の反応が変わる様子を目の当たりにしたと言います。

「アルミ缶は一升瓶や四合瓶と比べて小さいので、目に留まりにくいのがデメリットだと思っていましたが、写真に撮ってSNSにアップしやすいようで、ここまでの拡散力があるとは予想以上でした。若い層に届いたことはひとつの成果ですね」

「白鶴 香るうまくち原酒」が店頭に並んでいる様子

写真提供:白鶴酒造

そして、小倉さんの視線は海外市場にも向けられています。

「アルミ缶は、ガラス瓶のように割れる心配がなく、軽いので輸送コストが軽減されます。さらに、紫外線を遮断できることで、フレッシュな美味しさがキープされます。海外進出には大きな可能性があると感じています。

また、花見やキャンプ、旅行中の電車内などのアウトドアシーンだけでなく、自宅で少しだけお酒を飲みたいときにも、『香るうまくち原酒』は寄り添ってくれます。国内・国外に関係なく、新しい飲用シーンの開拓に期待しています。

とはいえ、ふだんからお酒を嗜んでいる方々にも味わっていただきたく、アルコール度数は飲みごたえのある19度としました。ロックや炭酸割りでも美味しいので、ビギナーの方々にも楽しんでいただけると思います」

白鶴 香るうまくち原酒

写真提供:白鶴酒造

日本酒を手に取ってもらうためには、その味わいはもちろん、ラベルの印象や売場での見え方、どのような場面でどのような方に飲んでいただくのかというシチュエーションまで、包括的にデザインすることが求められます。

今回の商品をきっかけに「アルミ缶日本酒のイメージをポジティブに変えたい」という小倉さん。デザインにこだわった「白鶴 香るうまくち原酒」は、歴史ある白鶴酒造の新たな定番商品として、これからも愛されていくことでしょう。

(取材・文:渡部あきこ/編集:SAKETIMES)

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