『えんや〜〜、ま〜る〜♪』のCMソングでおなじみの「まる」を主力銘柄とする白鶴酒造。多くの日本酒ファンに知られる清酒メーカーのひとつです。業界No.1の売上・製造量を誇り、高い技術力と長い歴史をもつ酒蔵が立ち並ぶ銘醸地・灘五郷のなかでも、特に大きな存在感を示しています。
そんな業界最大手の白鶴酒造で、熱意ある若手社員が「別鶴(べっかく)プロジェクト」を立ち上げて新商品を開発しました。12月5日からクラウドファンディングがスタートしています。
白鶴酒造の長い歴史において、若手のみでプロジェクトが進行するのは異例中の異例。今回は前後編の2本立てで、革新的な挑戦の裏側に迫っていきます。
業界シェアNo.1の白鶴酒造
白鶴酒造が蔵を構える兵庫県の灘五郷エリアは、古くから日本酒造りの中心地として栄えてきました。その理由として、ミネラル豊富な地下水が湧き、六甲山の先に良質な米の穫れる地域があったこと、農閑期の農家たちが丹波杜氏として高い技術力を発揮したこと、日本酒造りに適した気候や流通の要である海路が備わっていたこと。また、六甲山と海に挟まれた傾斜のある土地のおかげで、水車を使った精米技術が発達したことなどが挙げられます。灘の辛口酒は「男酒」とも呼ばれ、多くの消費者に支持されてきました。
白鶴酒造の創業は1743年。8代将軍・徳川吉宗の時代に、材木屋治兵衛が立ち上げました。ちなみに「白鶴」という名前は当時からのものだそう。「100年後も続く品質にふさわしい名前を」という思いで「鶴」を使用していましたが、模倣品が出回ったため、鶴の前に「白」をつけたことから「白鶴」と呼ばれるようになったのだとか。
昭和初期の文献には、白鶴の味わいについて「一時の流行に流されず、甘味と辛味の調和のとれた常用嗜好品を提供することに力を込めている」という記述があります。尖ったところのない万人受けする味こそが、消費者の支持を得る要因になりました。まもなく発売から35年を迎え、日本酒ブランドの売上No.1(※)を誇るロングセラー「まる」にも、伝統的な"白鶴らしさ"が受け継がれているといえるでしょう。
※「インテージSRI調べ 日本酒 2017年1~12月累計販売金額」(全国SM/CVS/酒DS計)
時代が変化し、飲み手のライフスタイルが変化していくなかで、 "定番酒"としての立ち位置を確固たるものとしているのは、ニーズに合わせた豊富なラインナップと、スーパーやコンビニなどの身近な場所でも手に入る気軽さがあるからこそ。創業以来、275年以上にわたって、白鶴酒造は人々の暮らしに寄り添い続けてきました。
努力と挑戦を続けてきた歴史
絶大な支持を得ている「白鶴」ブランドの屋台骨を支えているのは、地道な研究と挑戦の日々。酒造りと実直に向き合う一方で、新しい挑戦に取り組み、業界の先駆者として道を切り拓いてきました。
たとえば、オリジナル酒米「白鶴錦」の開発。酒米の王様「山田錦」の父母にあたる「渡船」「山田穂」を交配させ、兄弟品種を作り上げるという試みは、構想から商品化まで15年以上もの期間を要する大プロジェクトでした。完成した酒米の品質は、白鶴酒造が培ってきた技術力の高さを業界関係者に広く知らしめました。
また、昔ながらの伝統的な製法で吟醸酒を中心に醸造する「本店二号蔵工場」、最新技術で四季醸造を行う「本店三号工場」、両方の特性を兼ね備えた「旭蔵工場」という3つの醸造所を使い分け、多種多様な商品を安定的に造る体制を確立しました。
ちなみに、現在では当たり前になった一升瓶を大々的に使い始めたのも、生貯蔵酒を初めて売り出したのも、実は白鶴酒造といわれています。消費者のニーズをいち早く捉えた取り組みは、今日の日本酒の在り方にさえ、大きな影響を与えてきました。
若手社員が挑戦する、"別鶴"な新商品
しかし近年、日本酒市場が縮小の一途をたどるなか、特に若い世代の日本酒離れが進んでいます。若い人たちが日本酒に触れるきっかけを作るにはどうすべきか、そんな思いを抱えた若手社員たちが、現状を打破すべく立ち上がりました。
メンバーはいずれも30歳前後。さまざまな部署から熱意のある若手社員8名が有志で集まり、商品開発を行う、その名も「別鶴プロジェクト」です。「これまでの白鶴とは違ったお酒を造りたい」「だれも味わったことのない"別格"のお酒を造りたい」という思いから名付けられました。
プロジェクトの始まりは、ターゲットとなる若い世代の飲酒スタイルを徹底的に分析することから。その結果、休日に仲間と過ごす時の手土産になるような、よそいきでカジュアルな日本酒の構想が完成しました。ユニークなのは、具体的なシーンに合わせて商品が設計されていることです。
天気の良い午後、柔らかな光が差し込む木陰に座り、ゆったりとした気分で飲むのにオススメな「木漏れ日のムシメガネ」は、レモングラスのような香りと爽やかな酸味が特徴。
燦々と降り注ぐ太陽と澄みわたる青空の下、開放的な気分で味わいたくなるような「陽だまりのシュノーケル」は、柑橘類の果皮のような香りとほろ苦さが特徴のお酒です。
茜色に染まった夕暮れ時、これから始まる夜宴に先駆けて飲んでいただきたいのが「黄昏のテレスコープ」。完熟した果実のような芳醇な香りとまったりとした甘味をもっています。
いずれも11〜12度の低アルコールで、日本酒を飲みなれていない人にも親しみやすい仕上がりです。これまでのクラシックな白鶴のイメージとはかけ離れた、革新的な商品のように見えますが、全量「白鶴錦」で、かつ自社開発の酵母を使用し、伝統的な樽酒の要素を取り入れるなど、新しさのなかにも白鶴酒造の技術力・商品力が息づいています。
今回の「別鶴プロジェクト」は、業界最大手メーカーの若手たちが次世代の飲み手を育成し、日本酒の可能性を世に問うもの。強い決意と覚悟が感じられます。若い世代はもちろん、往年の日本酒ファンにとっても、固定化した「白鶴」のイメージを刷新するきっかけになることは間違いありません。
現在、クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で進行している「別鶴プロジェクト」、ぜひチェックしてみてください。次回は、プロジェクトに携わったメンバーによるクロストークをお届けします。こちらもお楽しみに!
(文/渡部あきこ)
sponsored by 白鶴酒造株式会社