「あずきバー」でおなじみの食品メーカー・井村屋グループが、2021年に立ち上げた日本酒ブランド「福和蔵(ふくわぐら)」。酒造りはまったくの未経験というスタートでしたが、2年目に全国新酒鑑評会で入賞し、関係者やファンを驚かせました。
さらに、3年目となる2023年には、イギリス・ロンドンで開催されている世界的なワインコンテスト「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(International Wine Challenge/以下「IWC」)」のSAKE部門で、ゴールドメダルを獲得しています。
「IWC」は、世界でもっとも権威のあるワインコンテストと言われ、2007年に設立されたSAKE部門は、海外市場における日本酒の評価基準のひとつとして、国内外のプロフェッショナルが注目しています。
2023年のゴールドメダルを受賞した「福和蔵 純米大吟醸 1回火入れ」は、三重県産の山田錦を精米歩合40%まで磨き、同じ三重県の飯高町で採水した口当たりのなめらかな硬水と、三重県オリジナルの酵母「MK-1」「MK-3」を使って醸された、福和蔵の地元・三重県の素材にこだわった一本です。
そんな「福和蔵 純米大吟醸 1回火入れ」を実際に取り扱っている酒販店は、どのような点に魅力を感じているのでしょうか。大阪府内にある2軒の酒販店を取材しました。
徹底した衛生管理による「安定した美味しさ」
最初に訪問したのは、大阪府の寝屋川市にある「地酒の奥広屋」。
1965年に創業し、“町の酒屋”としてさまざまな酒類をそろえていましたが、2006年に現・代表取締役の池田正博(いけだ・まさひろ)さんへ代替わりすると、日本酒専門店にシフトしました。また、酒販店だけでなく、厳選された日本酒を実際に味わえる居酒屋「日本酒のめるとこ」も経営しています。
大の日本酒好きで、「酒匠」や「日本酒学講師」などの専門資格を保持している池田さん。取り扱う商品を選ぶ基準として、「幅広い味の日本酒をそろえるようにしている」と話します。
「私は日本酒の多様性が好きなので、さまざまな香りや味わいの日本酒をそろえています。低アルコール酒や熟成酒、淡麗辛口から甘口までいろいろなタイプのお酒があるので、お客さんに『バラバラですね』と言われることもあるんですが、多様性があってこその日本酒。どんなお客さんが来店しても、好みの日本酒に出会えるようにしたいんです」
卸を経由している商品もありますが、直接の取引をしている酒蔵だけでも70軒ほど。販売先は大阪市内の飲食店が中心で、関西エリアではここにしかない銘柄もあるため、他県から買いに来る人も少なくないのだとか。
「福和蔵」の取り扱いを決めた理由として、池田さんは「美味しさが安定していること」だと語ります。
「日本酒のメーカーは、ナショナルブランドと呼ばれる大手の酒蔵から家族経営の小さな酒蔵まで、千差万別です。醸造や貯蔵の方法も酒蔵によってさまざまですが、微生物を扱う業種として、衛生管理の考え方はますます厳しくなっていくだろうと思います。
その点、井村屋さんはもともと食品メーカーなので、衛生管理が徹底されています。以前、製造の現場にお邪魔したことがあるのですが、チリやホコリがひとつも見当たらない、細部にまで行き届いた清掃をしていらっしゃいました。私が見た中では、『越乃寒梅』の石本酒造さんや『雪の茅舎』の齋彌酒造店さんなど、全国の銘酒蔵と同じレベルでしたよ」
「徹底した衛生管理の結果として、酒質が安定しているのでしょう。タンクごとに味が異なることを売りにしている商品もおもしろいですが、例えば、お客さんの口に入る料理やお酒に最大限の気遣いをするハイエンドな飲食店では、ブレのある商品は取り扱いにくいという面もあります。安定した美味しさの『福和蔵』は、そうした飲食店にも自信を持って提案できますね」
2022年4月に発売された「福和蔵 純米大吟醸 1回火入れ」は、百貨店のイベントで出会ったことをきっかけに取り扱いを始めました。
「華やかな香りとしっかりした旨味があり、誰が飲んでも美味しいと評価してくれる、万人受けする美味しさだと思います。酒蔵にお伺いした時、併設の立ち飲みスペースでおつまみといっしょに飲んだのですが、食中酒として優れているという印象を受けました。食事に合わせられる純米大吟醸酒というのは、とても魅力的ですよ」
合わせる料理のおすすめは「旨味や酸味のある料理」とのこと。経営している居酒屋では、酒粕を使ったおでんや、バルサミコ味噌を添えた豚肉のステーキとの食べ合わせを提案しているのだとか。
「冷蔵保存が必要なお酒ですが、冷蔵庫から取り出して少し時間をおいて、白ワインと同じように10℃くらいで飲んでみると、よりしっかりとした旨味が感じられます。実はぬる燗も良いんですよ。38〜39℃まで温めると、優しい味わいになりますね」
初年度の完成度に「度肝を抜かれた」
続いて訪れたのは、日本酒とワインに造詣が深い鍵本順司(かぎもと・じゅんじ)さんが経営する「酒専門店鍵や」。大阪府の泉大津市にある実店舗のほか、14年前の開業当初からオンラインショップを運営し、全国のお客さんに美味しい日本酒を届けています。
「オンラインショップは、大阪は都会で車を持っていない人も多いので、手で持ち帰るのは大変だろうという理由で始めました。実店舗にいらっしゃるのは、地元のお客様が多いですね。取引のある日本酒蔵は75軒で、リーズナブルな定番から高価格帯まで、商品のラインナップが幅広い酒蔵を中心にお付き合いしています」
「福和蔵」の取り扱いを始めた経緯について、商品のサンプルを試飲して「度肝を抜かれた」と話す鍵本さん。
「最初に飲んだ時、もっとも印象に残ったのは、『福和蔵 純米酒 1回火入れ』でした。火入れの技術は難しいので、酒造りを始めたばかりの酒蔵があえて挑戦しなくてもいいのにと思っていたんです。
ところが、ひと口飲んでみて、『1年目でこれほどのクオリティなのか』と驚きました。きれいでバランスの良い日本酒はたくさん飲んできましたが、このレベルの純米酒はなかなか出会えないと思いますよ」
純米酒のクオリティに衝撃を受けた鍵本さんは、「福和蔵」の全ラインナップを取り扱うことを決定。美味しさだけでなく、資材の取り扱いや配送時の梱包など、製品管理の観点でも、食品メーカーとしての安定感があると評価しています。
そうした高い評価から、「福和蔵 純米大吟醸 1回火入れ」が発売されたときも、迷うことなく仕入れたのだとか。
「純米大吟醸酒らしく、華やかな香りが特徴ですが、香りと味わいのバランスが良いんですよ。他の酒蔵の純米大吟醸酒には、香りに重点を置いて、味は控えめという商品もありますが、『福和蔵』はしっかりとした味わいがありながらも、きれいな印象を保っています。
以前、一般のお客さんを招いた試飲イベントを行ったところ、評判がとても良かったんです。『あずきバー』の井村屋の日本酒だと説明すると、みんな驚いていましたね」
おすすめの飲み方は「キンキンに冷やして、最初はキレを味わって。飲んでいるうちに少しずつ温度が上がってきたら、旨味を楽しんでほしい」とのこと。温度の変化による味の変化も、この「福和蔵 純米大吟醸 1回火入れ」の魅力だと評価します。
「ペアリングするなら、貝料理でしょうか。新鮮なサザエの刺身を肝といっしょに食べれば、それはもう絶品でしょうね。お酒にほんのりとした苦味があるので、うまくマッチすると思いますよ」
「福和蔵 純米大吟醸 1回火入れ」を取り扱っている酒販店の取材を通して、食品メーカーだからこその信頼感や安心感、そして安定した高い品質に対する驚きと評価が伝わってきました。全国新酒鑑評会での入賞や、世界的なワインコンテスト「IWC」でのゴールドメダルの獲得は、当然の結果だと納得できるものなのかもしれません。
日本酒事業を立ち上げてわずか数年で、専門家から高く評価されるブランドに成長した「福和蔵」。これから先、どのような進化を遂げていくのでしょうか。
(取材・文:Saki Kimura/編集:SAKETIMES)
Sponsored by 福和蔵(井村屋グループ株式会社)