【7月9日、「IWC 2019」SAKE部門のチャンピオン・サケが発表されました】
2019年5月、世界的ワインコンテスト「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」のSAKE部門にて、各カテゴリーのトロフィー受賞酒が決定しました。そしていよいよ、SAKE部門の最高栄誉である「チャンピオン・サケ」が、7月9日(火)に発表されます。
今年のチャンピオン・サケに輝くのは、どの銘柄なのでしょうか。
日本酒の海外進出における登竜門「IWC SAKE部門」
IWCは世界最大級のワインコンテスト。毎年ロンドンで開催され、今年で36年目を迎えます。
「SAKE部門」は2007年に新設され、現在は「普通酒」「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「本醸造酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」「スパークリング酒」「古酒」の9部門に分けられています。
そもそも、世界的なワインコンテストになぜ、日本酒の部門が設立されたのでしょうか。当時、設立に貢献した株式会社佐浦の佐浦弘一さんに経緯を聞きました。
きっかけは2003年。日本酒の海外普及を目指して開催されたセミナーに、後にIWCの審査最高責任者のひとりとなるサム・ハロップ氏が参加したことでした。ハロップ氏は、セミナーを通して日本酒に興味をもち、IWCに日本酒の部門を設置したいと申し出たのだそう。
日本酒の海外進出を促進するためには、ワインのコミュニティにその魅力を発信することが不可欠と考えていた佐浦さん。特にロンドンは、ワインビジネスやジャーナリズムの発信地でもあることから、願ってもない機会であると強く感じたのだとか。
当時、日本酒造青年協議会の会長だった佐浦さんは精力的にSAKE部門の設置に取り組みます。そして2007年、SAKE部門が設立されました。
世界的な影響力をもつワインコンテストにSAKE部門ができたことは、日本酒の長い歴史において、エポックメイキングな出来事でした。以降、日本酒の世界進出における登竜門のひとつとして、IWCのSAKE部門はそのポジションを高く確立していきます。
SAKE部門の特徴は、ワイン業界の最高権威といわれるマスター・オブ・ワインが審査員として数多く参加していること。IWCの結果が彼らの強い影響力で世界に発信されることによって、特に中小規模の酒蔵にとっては、世界へ羽ばたくチャンスになっているのです。
「知名度の向上はもちろん、販売促進にも効果があったという事例を数多く聞いています。また、受賞蔵のみならず、その地域全体への良い効果もあったようです」と佐浦さんは話します。
たとえば、山形県天童市の「出羽桜」の受賞は、兵庫県に次いで2番目となる審査会の国内開催をもたらしました。山形県での開催は県内蔵の出品意欲を向上させ、結果的に多くの上位入賞を果たし、山形清酒のイメージを高めました。
チャンピオン・サケの栄誉は、受賞した酒蔵だけでなく、その地域にも良い影響を与えるのです。
チャンピオン・サケはどの銘柄に?
2019年は1,500銘柄が出品し、95銘柄が「ゴールドメダル」を獲得。さらに、各部門ごとにもっとも優れている1銘柄に、トロフィー(各部門最高賞)が与えられました。
チャンピオン・サケはトロフィーを受賞した9銘柄から選出されます。発表を前にした今、どのような心境なのでしょうか。各部門のトロフィーを受賞した蔵元に話を伺いました。
- 普通酒トロフィー「菊正宗 しぼりたて ギンパック」(菊正宗酒造/兵庫県)
- 本醸造トロフィー「かたふね 特別本醸造」(竹田酒造店/新潟県)
- 純米トロフィー「宮の雪 山廃仕込 特別純米酒」(宮﨑本店/三重県)
- 純米吟醸トロフィー「勝山 純米吟醸 献」(仙台伊澤家 勝山酒造株式会社/宮城県)
- 純米大吟醸トロフィー「秀よし 純米大吟醸」(鈴木酒造店/秋田県)
- 吟醸トロフィー「初孫 冬のカノン 吟醸酒」(東北銘醸株式会社/山形県)
- 大吟醸トロフィー「文楽 大吟醸 袋吊無濾過原酒 中汲み」(北西酒造株式会社/埼玉県)
- スパークリングトロフィー「紀土 純米大吟醸 Sparkling」(平和酒造株式会社/和歌山県)
- 古酒トロフィー「特別本醸造 釜屋 古酒」(株式会社釜屋/埼玉県)
普通酒トロフィー「菊正宗 しぼりたて ギンパック」(菊正宗酒造/兵庫県)
国内外でさまざまな賞を獲得している「菊正宗 しぼりたて ギンパック」。独自開発の新酵母により、低精白でも瑞々しい華やかな香りを実現。しぼりたてを生のまま低温貯蔵することで、新酒のようなフレッシュさを実現しています。
「紙パックのお酒が日本酒業界に奇跡を起こせるか、ドキドキしています。1人でも多くの方に飲んでいただくきっかけになればと思います。」(マーケティング課 課長 宮内大輔さん)
本醸造トロフィー「かたふね 特別本醸造」(竹田酒造店/新潟県)
「かたふね 特別本醸造」は竹田酒造店のなかで出荷量がもっとも多いお酒。主力商品が海外でどのように評価されるのかを知るために、毎年出品しているのだそう。
原料である米の美味しさを表現するのが、竹田酒造店の一貫した方針です。「かたふね 特別本醸造」は、そのままで美味しいのはもちろん、食事をさらに美味しくするお酒を目指しています。
「受賞に至らなかったとしても、これからも美味しさに磨きをかけていきます。でもいつかは、チャンピオン・サケを獲りたいですね」(代表取締役社長 竹田成典さん)
純米トロフィー「宮の雪 山廃仕込 特別純米酒」(宮﨑本店/三重県)
宮﨑本店は2018年5月に蔵を新設したばかり。「宮の雪 山廃仕込 特別純米酒」は杜氏の長谷川さんが初めて設計したお酒で、思い入れが深いとのこと。山廃らしい旨味があり、燗上がりするお酒です。味わいがありながら、後味はすっきりとしています。
「昨年の大吟醸トロフィ-受賞に続いて、今年も大吟醸部門のゴールドメダルをいただけたことに喜びを噛み締めていました。今年は純米酒部門でもトロフィ-を受賞できたことに驚いています。正直、チャンピオン・サケの受賞までは想像できません。ただ、もし受賞できれば、会社のメンバーもご愛顧いただいているお客様も喜んでくれると思います」(製造部醸造課 課長 社内杜氏 長谷川元輝さん)
純米吟醸トロフィー「勝山 純米吟醸 献」(仙台伊澤家 勝山酒造株式会社/宮城県)
「勝山 純米吟醸 献」は数々のコンテストで高評価を得ている一本です。上品で香りと味のバランスが良く、均整のとれた酒質は、オードリー・ヘップバーンをイメージしているのだとか。
「お酒の評価に絶対はなく、審査員の嗜好や構成によるところも⼤きいと思っています。しかし『勝山 純米吟醸 献』は素晴らしいお酒だと信じているので、もし受賞できれば、酒造⼈⽣において最⾼の喜びになると思いますね」(代表取締役社⻑ 伊澤平藏さん)
純米大吟醸トロフィー「秀よし 純米大吟醸」(鈴木酒造店/秋田県)
地元の酒米「秋田酒こまち」を40%まで磨き、秋田県が開発した酵母「こまちSP」で仕込まれた「秀よし 純米大吟醸」。奥羽山脈の伏流水に由来する柔らかい味わいで、全体のバランスが整っています。
「純米大吟醸部門のトップであることに満足しています。創業330年という記念の年に花を添えることができ、とても嬉しいです」(代表取締役社⻑ 鈴木直樹さん)
吟醸トロフィー「初孫 冬のカノン 吟醸酒」(東北銘醸株式会社/山形県)
今年は全部門に出品している東北銘醸。国際色豊かな審査員からどのような評価を得られるのか期待しているといいます。「初孫 冬のカノン 吟醸酒」は香味のバランスが優れ、生酛造りによるフルーティーでゴージャスな味わいが特徴のお酒です。
「2年連続でトロフィーを受賞しましたが、今年はどうなるのか......ドキドキの心境です」(取締役 製造部部長 後藤英之さん)
大吟醸トロフィー「文楽 大吟醸 袋吊無濾過原酒 中汲み」(北西酒造株式会社/埼玉県)
厳しい競争のなかでどこまで通用するのかを確かめるために出品したという「文楽 大吟醸 袋吊無濾過原酒 中汲み」。袋吊りで搾ることにより、繊細できれいな華やかさを表現しています。また、柔らかな旨味や甘味を保つことで、均整の整った酒質となるように心がけたそうです。
「チャンピオン・サケを受賞してさらなる高みに登れたら嬉しいです。一方で、どんな結果になろうとも今回のトロフィー受賞を誇りに思い、さらに酒質向上を目指して邁進していきます」(製造部醸造課・杜氏 村上大介さん)
スパークリングトロフィー「紀土 純米大吟醸 Sparkling」(平和酒造株式会社/和歌山県)
「紀土 純米大吟醸 Sparkling」は「純米大吟醸の技法で世界の泡を超えよう」との想いから生まれた乾杯酒。米のふくよかでやさしい甘味がありのままに表現されています。「繊細な泡と米が織りなす優しい味わいを、世界の日本酒の飲み手に届けたい」と代表取締役社長の山本さんは話します。
「『紀土』が生まれてから10年。この10年間でどのような成長を遂げているのか......緊張とともに、その結果が楽しみです」(代表取締役社長 山本典正さん)
古酒トロフィー「特別本醸造 釜屋 古酒」(株式会社釜屋/埼玉県)
2018年に24年熟成の古酒として発売された「特別本醸造 釜屋 古酒」。どんな古酒よりもきれいな仕上がりになったと社内の評価が高く、消費者からも良い評価が得られたため、出品に至りました。
クセのないきれいな仕上がりで、複雑に層が重なり合った奥深い味わい。カラメルのような甘い風味と、スモーキーな香りのバランスが整った古酒です。
「トロフィー受賞だけでも夢のような結果。チャンピオン・サケまで獲ったらすべての運を使い切りそうで怖いです(笑)」(代表取締役社長 小森順一さん)
チャンピオン・サケの発表は7月9日!
チャンピオン・サケの発表は7月9日(火)。果たして、どの銘柄が最高の栄誉に輝くのでしょうか。
さらに、チャンピオン・サケやトロフィー受賞酒をすべて味わえるイベント「IWC2019 受賞プレミアム日本酒試飲会」がYUITO日本橋室町野村ビルにて、10月19日(土)に1日限定で開催される予定とのこと。世界が認めた日本酒を味わいに、ぜひ参加してみてください。
【7月9日、「IWC 2019」SAKE部門のチャンピオン・サケが発表されました】
(文/まゆみ)