アジアの日本酒市場を牽引する香港。この地で開催される日本酒コンテスト「Oriental Sake Awards」(以下、OSA)は、世界中に数ある品評会のなかでも、アジアならではの味覚を反映する審査の場として注目されています。

高級酒のニーズも強く、アジア市場の中枢として機能する香港のコンテストについて、これまで参加した酒蔵は、どのような効果を感じているのでしょうか。

2025年に4点が金賞を獲得した高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」と、最優秀賞である「Sake of the Year」に輝いた新澤醸造店(宮城県)へのインタビューから、OSAへ出品する理由と、受賞がもたらしたリアルな手応えを探ります。

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2万本のグラス、5℃環境の出品作業─アジア最大の日本酒コンテスト「Oriental Sake Awards」の舞台裏

「OSA受賞」が購入の理由に直結する─SAKE HUNDRED

ラグジュアリー日本酒のトップブランドとして、高価格帯市場を牽引する「SAKE HUNDRED」。2025年のOSAでは、「天彩」「思凛」「礼比」「弐光」の4銘柄が金賞を獲得、さらに熟成酒(Elegant Type) のチャンピオンに「礼比」が選ばれました。

SAKE HUNDRED「礼比」

「Oriental Sake Awards 2025」の熟成酒(Elegant Type) チャンピオンに選ばれた「礼比」

ブランドオーナーの生駒龍史さんは「当初は、日本酒の輸出エリアのトップ5のなかでも輸出単価の高い香港での評価を、日本国内でのプロモーションに活かすつもりで出品したんです」と話します。コンテストの結果はあくまでもプロモーションに有効な話題のひとつと捉え、消費者に対しては「この受賞がどうすごいのか」を翻訳する過程が必要だと考えています。

ところが、受賞後に香港で実施した、フラッグシップ「百光」の抽選販売では、抽選応募者に送付したアンケートに対して、購入者の約3割が購入理由について「Oriental Sake Awardsで受賞したから」と回答。「正直、受賞結果がこんなふうに購買へ貢献するとは意外でした」と驚きを見せます。

「主催者のミッキー・チャン氏をはじめ、OSAの運営や審査員は香港の日本酒市場の中枢にいる人たちですから、その評価がアジア市場でのお墨付きになるのは理解できます。コンテストの結果が香港の一般消費者へのマーケティングに活用できると証明できたのは、大きな収穫のひとつです」

「SAKE HUNDRED」ブランドオーナー・生駒龍史さん

「SAKE HUNDRED」ブランドオーナー・生駒龍史さん

いまや世界各地でさまざまな日本酒コンテストが開催されていますが、SAKE HUNDREDでは、顧客や流通の反応を分析したうえで、出品先をイギリスの「International Wine Challenge」、フランスの「Kura Master」、そして香港の「Oriental Sake Awards」の3つに絞っています。

「特に高級酒において、品質の客観的な裏付けは重要です。自分たちが最高においしいお酒だと思っていても、第三者からどのように評価されているかは、定期的かつ健全なチェックが必要です。

そして、日本酒輸出の約6割をアジア市場が占めている現状を考えると、各酒蔵は『アジアでどのように評価されているのか』を念頭に置いた酒造りやマーケティングに力を入れるべきでしょう。

日本には『欧米で権威性をつくって、アジアで量を売る』という風潮がありますが、アジアでの評価こそが価値の骨格となる。早い段階でOSAに参画していくことは、中長期的なグローバル展開への追い風になると思っています」

日本の感覚に近い、信頼できるコンテスト─新澤醸造店

2025年のOSAでは、最優秀賞にあたる「Sake of the Year」に、新澤醸造店(宮城県)の「あたごのまつ 鮮烈辛口」が選ばれました。華やかな吟醸酒が高く評価されやすい世界市場において、酒米をあまり磨かないでつくる本醸造酒がトップに君臨するのは、極めて異例なことです。

新澤醸造店「あたごのまつ 鮮烈辛口」

「Oriental Sake Awards 2025」の「Sake of the Year」を受賞した「あたごのまつ 鮮烈辛口」

新澤醸造店の代表取締役・新澤巖夫さんは、今回の受賞は「技術が評価されたことを意味している」と捉え、喜びを見せます。

「限られた原価のなかで品質の限界に挑んだ結果だと考えています。今は原料米の価格が高騰しているので、低精米のお酒が評価されることには大きな意義があると感じています」

世界中のコンテストに出品し、その受賞数の多さから「世界酒蔵ランキング」で史上初となる4年連続1位を獲得した新澤醸造店。数ある品評会のなかで、OSAはどのような立ち位置にあると考えているのでしょうか。

「OSAの評価は、世界のコンテストのなかでも、もっとも日本の感覚に近いと感じます。運ではなく実力のある酒蔵が受賞するよう、審査員をトレーニングしている。まだ新しいですが、信頼性の高いコンテストですね。

受賞後のフォローも丁寧です。2025年の授賞式はマカオの高級ホテルであるウィン・パレスで開催されたんですが、そのレストランが実際にお酒を扱ってくれるようになりました。賞状を渡して終わりではなく、酒蔵や業界のために何ができるかを考え、次に繋げようとしてくれていると感じます」

新澤醸造店 代表取締役・新澤巌夫さん

新澤醸造店 代表取締役・新澤巌夫さん

5℃の冷蔵環境での事前準備や2万本のグラスを使った審査など、徹底した姿勢を「純粋に公平なコンテストであることの現れ」と評価する新澤さん。

「そもそも、結果が信用できないようなら、コンテストとしての意味はありません。OSAはこれだけ丁寧に運営をしているからこそ、お客さんにも受賞の効果が本物として伝わるのだと思います」

「Oriental Sake Awards」がブランドにもたらすもの

SAKE HUNDREDと新澤醸造店の事例を通して見えてくるのは、OSAの受賞は単なる実績にとどまらないということです。

まず、SAKE HUNDREDを購入する理由にOSAの受賞があったように、アジア市場における信頼の獲得につながります。香港は日本酒市場として成長の最中にあり、消費者自身が日本酒を選ぶ基準を育てる段階にあります。そうしたなかで、日本酒に精通した審査員たちに選ばれたという事実が、購入の後押しになりやすいのでしょう。

次に、受賞後のネットワークの構築です。授賞式が行われたホテルのレストランで新澤醸造店の受賞酒が扱われるようになったように、実際にお酒の販売につながる場を生み出す機能を担っています。

さらに、酒蔵にとっては、出品自体がアジア市場の市場調査としての役割も果たします。アジア10地域の消費者嗜好を体現するプロフェッショナルによる審査は、そのまま「アジアでどのような日本酒が評価されるか」の指標になるのです。

「Oriental Sake Awards」のトロフィー

2社の話からは、OSAが単に「香港で評価された」という称号を与える場ではなく、香港がつなぐアジア全体の現在地を知り、信頼や人脈を構築するための場として機能していることがわかります。その存在感は、アジアの価値基準を可視化する場として、今後さらに大きくなっていくことでしょう。

2026年のOSAの出品締切は、2026年6月5日(金)です。ますます発展するアジア市場で自社のお酒がどのように受け止められるのかを知る機会として、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

(取材・文:Saki Kimura/編集:SAKETIMES)

◎「Oriental Sake Awards 2026」応募概要

  • コンテスト名:Oriental Sake Awards 2026
  • エントリー期間:2026年4月3日(金)〜 6月5日(金)
  • 出品酒サンプル提出期間:2026年6月23日(火)〜 25日(木)
  • 審査:2026年8月18日(火)〜 20日(木)
  • 受賞酒発表:2026年9月9日(水)
  • 表彰式・Sake of the Year発表:2026年10月29日(木)
  • 参加費:
    • 方法①(日本国内指定倉庫への発送):1エントリーあたり 2,200香港ドル(参加費・送料込み)
    • 方法②(香港指定倉庫への直接発送):1エントリーあたり 1,500香港ドル(参加費のみ/送料は参加者負担)
  • 提出サンプル数:
    • 720mL/750mL:4本
    • 500mL:6本
    • 300mL〜375mL:8本(スパークリング日本酒カテゴリーのみ)
  • 申し込み方法:公式サイトにて申し込み

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