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“地元住民のための憩いの場”として八海醸造がプロデュースする『魚沼の里』は、なぜ全国の人々を惹きつけるのか(現地取材レポート)

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新潟県南魚沼市・長森の一角にある『魚沼の里』は、銘酒「八海山」を生産する八海醸造の酒蔵を中心に、同社が経営する飲食店や洋菓子店などが点在するエリアです。

積極的な観光PRをしていないにも関わらず、『魚沼の里』には全国からの訪問客が後を絶えません。事実、昨年には、年間およそ25万人もの来客があったといいます。

なぜ『魚沼の里』は、人を惹きつけるのか。何を求めて、人々は『魚沼の里』に足を運ぶのか。実際に現地に赴かなければ分からない魅力が、そこには確かに存在しました。

SAKETIMESが八海醸造の真髄に迫る特別連載。第6回は八海醸造がプロデュースする『魚沼の里』の現地取材レポートをお送りします。

『魚沼の里』の出発点は、ひとつの酒蔵

東京から上越新幹線に乗って1時間半、JR浦佐駅で下車。そこからタクシーで15分ほど、見晴らしのよい山里をしばらく走った先に『魚沼の里』は現れます。霊峰・八海山の麓、あたりを山々と田園に囲まれた地で、その建物群は大きな存在感を放ちつつも、不思議とあたりの風景に溶け込んでいます。

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とりわけ遠方からでも目立つのが、モノトーンの外装が緑のキャンバス上で映える、大きな酒蔵。八海山の主にレギュラー酒の製造を担う「八海醸造 第二浩和蔵」です。

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2004年に増設されたこの酒蔵では、長年の経験を蓄積した蔵人たちが日々、神経を研ぎ澄ませて酒造りと向き合っています。だからか、どことなく周りの空気が張り詰めているように感じられました。

『魚沼の里』のすべては、ここから始まりました。

ご当地名物は出さない「そば屋 長森」

「第二浩和蔵」ができた頃、周辺には豊かな自然の恵み以外、何もありませんでした。そこに、人目を引くこの施設が現れたことで、少しずつ人が集まるようになりました。いや、“なってしまった”と言った方が、正確かもしれません。案内をしてくれた八海醸造の商品開発・営業企画室の勝又沙智子さんは、当時の様子を振り返って、次のように話してくれました。

「第二浩和蔵は見学不可の施設です。蔵しかなかった当初は、来てもらっても『ごめんなさい』と謝って、お帰りいただくしかありませんでした。そこで『せめて、わざわざ足を運んでくれた人が何もできず、ガッカリすることのないように』との思いから、飲食店を設けようという話になりました」

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こうして生まれたのが「そば屋 長森」です。もともと数キロ離れたところで経営していたそば屋を、移転しました。

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今風に洗練された第二浩和蔵とは打って変わって、伝統的な日本家屋の温かみを、目と、手と、足で感じられます。

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南魚沼の地では、古くからつなぎに「ふのり」という海藻を使った、「へぎそば」がよく食べられてきました。言わばご当地の名物であり、あたり一帯のそば屋の多くがへぎそばの店になっています。

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一方、「そば屋 長森」が提供するのは、上質なそば粉を使用した、江戸前のそばです。「へぎそばを出している所は、ほかにたくさんあるから」と、店主は言います。

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へぎそばを取り扱ったほうが、外から来る者にとっては新鮮味があり、受けがいいはず。しかし、「そば屋 長森」は、江戸前そばを出すことにこだわり続けています。酒蔵ができて、最初にこの地に集まり始めたのは、地元の人々でした。その頃から貫いてきた「地元の人々に喜んでもらうために」という姿勢は、観光客が増えた今もなお、揺るぎません。

パティシエを口説くのに3年  菓子処「さとや」

「食後に甘いものが食べたくなるね」
「このあたり、ほかにお店はないけど」
そば屋に来た地元の人たちの声が、『魚沼の里』に新しい風を呼び込びました。
長森の次にできたのが、菓子処「さとや」です。

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八海山の酒粕を練り込んだ「さとやバウム」や、酒造りでも重宝されている銘水で仕込んだ「さとや大福」など、作るものに和洋の垣根はありません。メニューの監修を務めるのは、地元の洋菓子店「パティスリー・シュクレ」のオーナーである佐藤浩一さん。八海醸造の南雲社長がその腕に惚れ込み、3年かけて口説き落としたそうです。

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店内の2階には、喫茶スペースが。窓の外に広がるのは、瑞々しい山々と”雪花の丘”と呼ばれる広大な山の斜面。春には菜の花が咲き誇り、晩秋にはそばが白い花をつけ、やがて冬になると一帯は真っ白な雪化粧を装います。四季折々で、ここに切り取られる景色は、大きく移ろいゆく。いつ来ても、その時々にしか鑑賞できない一枚絵が楽しめます。

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地元の人々に、地元のよさを食べて感じてもらいたい「みんなの社員食堂」

その後、『魚沼の里』にはうどん屋「武火文火」ができて、さらに賑わうようになりました。地元の人が、遠方からやってきた親戚や客人を連れてくるシーンも、次第に増えていきました。

週末ともなるとどちらの店も大混雑。そこで、ニーズに応えるようにして設けられたのが『みんなの社員食堂』です。

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もとより、本社社屋の中にあった社員食堂。従業員の増加によって手狭になっていたため、増設が検討されていました。従業員の間でも、おいしいと評判が高かったこともあり、「ならば、いっそ一般にも開放してしまおうか」と、別個の施設として新築されたのが、こちらの建物です。

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一般客向けに出されているのは、メインを肉か魚の2種から選べる「八海定食」と、その日の社食として出されているメニューを楽しめる「日替わり定食」。米は魚沼産のコシヒカリ、惣菜にはできる限り、地元で取れる新鮮な野菜をふんだんに盛り込み、味噌や漬物は自家製にこだわっています。

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「みんなの社員食堂」の統括責任者である佐野美智男さんは、以前ホテルシェフとしてその腕を奮っていた料理人です。時折、社食には本格的なグリーンカレーやローストポークなどが登場するのだとか。

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佐野さんは、この社員食堂で「南魚沼の素晴らしさを多くの人に届けたい」と、胸の内を語ってくれました。

「うちの厨房にいるスタッフさんたちは、みんな地元の方々なんですよ。地元の食材を、地元の人間が料理して提供することを通じて、この地の自然と人のよさ、両方とも伝えられたらと思っています。それは、遠方からやってきてくださるお客様はもちろん、ご近所さんにも感じてもらいたくて。『俺たちの住んでる南魚沼は、すごくいい所なんだぞ』って。そんな地元愛や、誇りが強まるきっかけになってくれたら、嬉しいですね」

静寂よりも深く、時を鎮める「八海山雪室」

どれほど観光客が増えようとも、『魚沼の里』の拠り所は “地元愛”であることに、変わりはありません。その思いがとりわけ強くこめられているのが、「八海山雪室」です。

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雪室(ゆきむろ)とは、古くから食物の保存などに利用されてきた、言わば“天然の冷蔵庫”。豪雪地帯としても知られる南魚沼の地で、大昔から自然との共存を試み続けてきた、先人たちの知恵の結晶です。その脈々と継承されてきた生活文化を、八海醸造はこの雪室と共に、後世まで受け継ごうとしています。この地で酒造りを続けられている、感謝の念を込めて。

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1日に8回行われる見学ツアーに参加すれば、雪室に入ることができます。中には酒を熟成貯蔵させる大型のタンクが立ち並んでいて、その傍らではうず高く積まれた約1000トンもの雪塊が、荘厳な存在感を放っています。雪は、空気中のちりやほこり、そして音までをも吸収します。そのせいか、室内は「ここだけ、時の流れが遅くなっているんじゃないか」とさえ感じられるほど、しんと静まっています。

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雪室を出た先には試飲カウンターが設置されていて、「八海山」を各種試飲することができます。

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ここでは、雪室で3年間熟成させた日本酒も味わえます。
「あんな静寂の中で数年の時を過ごした酒は、一体どんな表情をするのだろう」と、恐る恐る一口。脳裏に残る雪室のイメージと味覚が繋がって、風味には綿雪のような柔らかさ、後味のキレには雪解けのような静かさが感じられました。

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カウンターを抜けた先には、八海醸造の酒や発酵食品、南魚沼の名産品などがずらりと取り揃えられたアンテナショップ「千年こうじや」が続きます。

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さらに、このお土産コーナーの上にあるのが、キッチン雑貨を取り揃えるスペース「okatte」です。

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こちらでは“燕三条の金物”や“加茂の桐加工”など、新潟の特産品だけでなく、全国各地から集められた選りすぐりの器なども販売されています。この店を目当てに、県外から車で来る人もいるのだとか。

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そのほか、 “贈る”をコンセプトにお包みの提案も可能なショップ「つつみや八蔵」、日本酒や料理に関する書籍を自由に自由に読むことができる。「八蔵資料館」なども、『魚沼の里』を訪れた際には足を運んでおきたいスポットです。

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「つつみや八蔵」の風情ある外観

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店内は落ち着いた和の装い

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水引を使ったお包みのデモンストレーションも見ることができます

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さまざまな書籍が揃う「八蔵資料館」

地元ファーストの精神が生んだ、観光客までも引き寄せるコンテンツ力

今回SAKETIMES取材班は、丸一日かけて『魚沼の里』をくまなく回りました。現地に来てみてはっきりと分かったのは、やはりここが“観光地ではない”という事実です。観光客向けに色気を出そうとすれば、酒蔵見学を受け入れることにはじまり、そばは“へぎそば”にするだろうし、キッチン雑貨も新潟産のもので固めるはず。それをしないのは、一つひとつの施設が向き合っている対象に“地元の人々”がいるからです。

なのに、なぜ八海醸造がプロデュースする『魚沼の里』には全国から人が集まるのか。それは、各施設が「地元の人々に向けて何ができるか」と突き詰めていった結果、ただただ純粋に「また足を運びたくなるいい店」になっているから。そば屋、洋菓子店、食堂、雑貨店……『魚沼の里』にあるどの店も、都市部にある同様の人気店と互角に張り合えるくらい、コンテンツの力強さがありました。その強さは「観光」に頼らなかったからこそ、最大限に引き出されているのだと思います。

人々は店自体の評判に釣られて、この地に足を運びます。そこで南魚沼の豊かさ、素晴らしさを知って、ファンになります。訪れる人が増え、施設が増え、雇用も増えています。何より、「全国から人が集まる」ということが、この地に住む人々の誇りに繋がっています。『魚沼の里』が地元・南魚沼に与える好影響は、まだまだ留まることを知らないことでしょう。

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これからの地域おこしのモデルケースとしても注目できる『魚沼の里』。皆さんも一度、足を運んでみてください。そして、この不思議な里の魅力を、ぜひ五感で味わってほしいです。

(取材・文/西山武志)

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