2019年の全国新酒鑑評会において、金賞受賞数が7年連続日本一に輝いた福島県。国内有数の酒どころとして知られている一方、ビールやワイン、ウイスキーなどのアルコール類をはじめ、海の幸から山の幸まで、多種多様なおいしい食材がそろっている地域でもあります。

そんな福島県の「酒」と「食」の魅力を発信するため、2019年に「テロワージュふくしま」というプロジェクトが立ち上げられました。発起人の北村秀哉さんにお話を伺い、その内容をご紹介します。

「テロワージュふくしま」発起人の北村秀哉さん

「テロワージュふくしま」の発起人・北村秀哉さん

現地に来てもらうことを目指す「テロワージュ」

「テロワージュ」とは、フランス語で「気候風土と人の営み」を表すテロワール(terroir)と、「食と酒の組み合わせ」や「結婚」を表すマリアージュ(mariage)を組み合わせた造語。仙台市の秋保温泉エリアにある「秋保ワイナリー」のオーナー・毛利親房(ちかふさ)さんが提唱した言葉です。

「テロワージュ東北」の発起人・毛利親房さん

「テロワージュ東北」の発起人・毛利親房さん

毛利さんは、東北6県をひとつのくくりとした「テロワージュ東北」を立ち上げた人物。酒や食だけにとどまらず、土地の自然や文化、造り手も含めて魅力を発信するツーリズム事業を行っており、国内外から「現地に来てもらう」ことを目指して活動しています。

東北全体を盛り上げていくためにも、かねてより毛利さんは県単位のプロジェクトを構想していました。それが、「テロワージュふくしま」の発想へとつながっていきます。

食を通して、福島の魅力を発信する

「テロワージュふくしま」の発起人・北村さんは東京出身で、現在もご家族は東京に住んでいます。なぜ、事業の立ち上げに至ったのでしょうか。

実は、北村さんは東京電力ホールディングスの社員。人事異動により、現在は福島復興本社に勤めています。フランスに住んでいた経験を活かして、福島ワインの発展を目指した「ふくしまワイン広域連携協議会」や双葉郡川内村のワイナリー「かわうちワイン」の立ち上げなど、福島の方々と協力して社外の活動にも取り組んできました。

テロワージュふくしまぶどう栽培

川内村のブドウ畑

そんな北村さんが、強い思いを持って立ち上げたのが「テロワージュふくしま」です。福島を代表するメディアの福島民友新聞社と共同での立ち上げとなりました。

「地域を盛り上げる活動において、食は重要な要素。福島にはおいしいものがたくさんあるので、もっと発信していきたいですね」(北村さん)

生産地だからこそ味わえるおいしさ

「テロワージュふくしま」では、生産者や県内の飲食店、宿泊施設と協力。酒と料理の、地域性を活かした組み合わせから生まれる魅力を発信します。

オンラインでの発信に加えて、協力店舗などが記載されたガイドブックを作成することにより、まずは「テロワージュ」の魅力や考え方を普及していきたいとのこと。

パリ日本文化会館内の会場

パリ日本文化会館内の会場

北村さんは「福島の素材は素晴らしい。質のよい料理とのペアリングによって、ひとつ上の段階にいけるはず。国内外の人に来てほしいですね」と話します。

1月21日(火)〜2月1日(土)の期間には、フランスのパリ日本文化会館にてプロモーションが行われます。大和川酒造「弥右衛門」、仁井田本家「にいだしぜんしゅ」、笹の川酒造「笹の川」、豊国酒造「一歩己」などの日本酒が提供される予定だそう。

また、フランスで開催される日本酒コンクール「Kura Master」の審査員によるテイスティングの機会も設けられるとのこと。

観光客が少ない東北、そして、風評被害が完全には消えていない福島県。地域としても、どれだけ来訪者を増やせるかが課題となっています。

「テロワージュふくしま」のテーマは、「究極の美味しさは産地にあり」。福島県の魅力を伝える新たな一手となるでしょうか。「酒」と「食」の可能性に懸ける人々の、今後の活動に注目です。

(取材・文/立川哲之)

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