平成から令和に時代が変わり、ラグビーワールドカップに日本中が沸いた2019年。日本酒業界では海外輸出の伸長や、製造免許の新規発行に関するニュースがありました。
今回は、日本酒専門WEBメディアである「SAKETIMES」に関わるメンバーそれぞれが、2019年に公開した記事のなかから「これだ!」という1本をピックアップします。
SAKETIMES編集長:小池潤
まぼろしの酒米を23%精米─ 純米大吟醸「蔵光」は菊水酒造が挑戦し続ける証
選定理由
主に大吟醸系の商品で「技術の粋を集めた」という表現がよく使われますが、すべてのパラメータを限界まで振り切れば最高の酒が完成するかと言われたら、決してそんなことはない。お客さんにとっての「美味しい」を追い求める細やかな微調整にこそ、本当の意味での「技術の粋」があるのではないかと考えさせられました。
SAKETIMES運営元 株式会社Clear 代表取締役CEO:生駒龍史
輸出向けに限り、日本酒製造の新規免許が発行可能に─ 酒蔵を新設するために必要な機材コストはいくら?
選定理由
日本酒産業に関わる大きな法改正が検討段階にあるというニュースが、11月に発表されました。この知らせを受けて迅速にヒアリングを進め、一次情報を記事化・配信したことは、スピードと正確性というメディアにおいて必要な業務を達成しており、SAKETIMESの独自性・重要性を業界内外に広く証明することができました。
株式会社Clear マネージャー:高良翔
元・ミュージシャンがカリフォルニアでSAKEを醸す─ 3つ星レストランにも評価された「Den Sake Brewery」の酒造り
選定理由
2019年は、「海外醸造」が日本酒産業のひとつのキーワードとして認識された年だったのではないかと感じています。
ハンドメイドの醸造機器と地元産の米でつくった"ローカルSAKE"が、3つ星レストランでワインと横並びで楽しまれる。これってすごく未来のある話だなぁと。まさにグローバリズムとローカリズムの融合です。それを地で行っている「Den Sake Brewery」はとてもかっこいいし、大きな可能性を感じます。そして、本人に取材をしてしっかり掘り下げた記事は、実にSAKETIMESらしいと思い、選出しました。
SAKETIMES International ディレクター:古川理恵
6 Great Stores to Sip and Buy Sake in Tokyo
選定理由
2019年に公開した「SAKETIMES International」の記事のなかで最も読まれたものです。記事で紹介した酒屋さんから「この記事を読んで来店した外国人観光客の方がたくさんいるよ」という声をいただき、世界中の人が日本酒を手に取るきっかけになれていることが実感できました。
SAKETIMES 編集部スタッフ:シライジュンイチ
酒米栽培から酒造りまで一貫生産!富山・吉乃友酒造を引き継いだ農業ベンチャー「越乃めぐみ」が挑む6次産業化への取り組み
選定理由
酒蔵が自ら酒米を育てて日本酒を醸造する試みは数多くありますが、富山県の「吉乃友」は、酒米農家有志で組織する会社が酒造を子会社化し、酒米の栽培から精米、酒造り、酒販売までを一貫して手がける極めて稀なケースです。食用米の需要が減り、耕作放棄地が年々増えるなかで、日本酒造りを核にした地域活性の良い事例になりそうです。
SAKETIMES 編集部スタッフ:内記朋冶
日本酒の購入予算は若い世代が高い!?─2,000件を超える回答から見えた日本酒飲用動向
選定理由
漠然と感じていた消費者動向の変化が、統計調査によって興味深い数字として顕在化しました。特におもしろいと感じたのは、ギフト用に購入する日本酒の予算を、通常の所得状況とは逆に若い世代が高く想定していること。高付加価値の日本酒が普及しつつある今の市場の変化が生んだ、価格に対する世代間のイメージ格差を表していると感じました。今後も消費者動向調査は定期的に行い、しっかりとトレンドを追っていきたいですね。
SAKETIMES 編集部スタッフ:佐藤颯太
東日本大震災から8年半、ついに故郷で酒造りを再開!─ 津波で全壊した宮城・佐々木酒造店の“いま”を追う
選定理由
震災からの復興を取り上げた記事ということで、酒蔵の再建そのものが大きな話題であることはもちろん、台風19号や山形県沖地震などの災害によって被害を受けた蔵の復興を願っての選定です。本記事では、2011年3月11日の東日本大震災のあと、長らくプレハブで酒造りを行ってきた宮城県・佐々木酒造店について、創業の地での酒造り再開を詳細に取り上げています。
SAKETIMES 編集部スタッフ:熊澤淳太
国内売上No.1ブランド・白鶴酒造「まる」に込められた“いつもの味”へのこだわり─ おいしさの秘密は「白麹」と「ブレンド」
選定理由
リーズナブルかつ手軽に手に入るパック酒だからといって、「簡単に造られている」「おいしくない」と安易に決めつけるべきではありません。白鶴酒造の「まる」は6種類のお酒をブレンドしていたり、白麹が使われているなど、高い技術力があってこそ生まれたお酒。特別な時に飲むお酒がある一方、日常に寄り添ったお酒もあり、そのすべてに造り手のこだわりが込められているのだと再確認するきっかけになりました。
SAKETIMESが配信するのは、足を動かして取材した一次情報にこだわった記事です。それらの情報をもって読者のみなさまに驚きと学びを提供し、"もっと日本酒を知りたくなる"メディアであり続けます。
(文/SAKETIMES編集部)