木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)や飛騨川などの清流が流れ、良質な伏流水に恵まれている岐阜県。特に、木曽三川にほど近い西濃地方は、7つの酒蔵が集まっているエリアです。
2019年10月6日、そんな西濃地方のJR大垣駅前商店街にて、枡と日本酒とスイーツのマリアージュ体験イベント「メルカード de セイノー( mercado de SEINO)」が開催されました。
主催は、木製の枡のメインに計量器や食器なども製作する、岐阜県大垣市の「大橋量器」。枡を通じて、地域に根差した取り組みや新しい価値の創出にも取り組んでいる企業です。
「枡×日本酒×スイーツ」のコラボとは、なんとも珍しいイベントです。今回は、当日の様子をレポートします。
西濃地方の「おいしい!」を発見できるイベント
イベント名の「メルカード」とは、スペイン語で「市場」のこと。スペイン語のイベント名にしたのは、イベントを企画した大橋量器の伊藤大地さんがスペインに留学した経験と紐付いています。
「スペインで定期的に開かれる『メルカード』は、地元の人や観光客などたくさんのお客さんで賑わい、その土地のおいしいものを知ることができる場です。日本に帰ってきて、まだ知られていない西濃地方のおいしいものがたくさんあると感じ、『もっと多くの人がその魅力を発見できる場を作りたい!』という思いがイベント名の由来になっています」と、伊藤さん。
今回のイベントは、大橋量器の枡と西濃地方で醸されるおいしい日本酒、地元のスイーツの3者を組み合わせて「自分の好みを見つける」という新しい試みでした。
「地元商店街のイベントに織り込んだ形で開催することもあり、家族連れのお客さんが多いですね。通常の日本酒イベントとは違って、おつまみではなくスイーツを合わせることで、お子さんといっしょに楽しめるイベントを目指しました」
和食ブームの影響などから、枡はエキゾチックで斬新な器として海外でも好評なのだとか。「枡」を「増す」と捉えて、"幸福が増す"、"益々めでたい"など、縁起物としても多く使われているそうです。
オリジナルの枡で、西濃のお酒を楽しむ
今回のイベントには、西濃地方にある7蔵のうち5蔵が参加。それぞれ代表銘柄は以下のとおりです。
- 所酒造:「房島屋」
- 渡辺酒造醸:「美濃錦」「白雪姫」
- 武内合資会社:「美濃紅梅」「大垣城」
- 三輪酒造:「白川郷」
- 玉泉堂酒造:「美濃菊」「醴泉」「無風(むかで)」
いずれの酒蔵も、地域に根差した酒造りをしています。普段は造りに携わってるスタッフも参加し、お客さんとのコミュニケーションを楽しんでいる様子でした。
イベントに参加するためには、はじめに受付で200円を支払い、かわいらしいデザインの3勺枡を受け取ります。表には「メルカード de セイノー」のロゴ、裏には参加蔵の代表銘柄がデザインされた限定品です。焼印のように見えますが、実はレーザープリント。細部まで正確に印字されています。
続いて、蔵のブースへ進みます。どの酒蔵さんも、自慢のお酒を2~5種類ほど用意。代表銘柄はもちろん、普段はあまり流通していない銘柄や梅酒も含めて、一杯200~300円とお手ごろ価格です。
もし銘柄選びに迷ったら、蔵の方に聞いてみましょう。スイーツとの相性だけでなく、温度による味の違いや、家飲みでの楽しみ方なども教えてくれます。
最後に、購入した日本酒と合わせるスイーツを選びます。パウンドケーキやクッキー、フローズンフルーツに大垣名物の水まんじゅうなど、思わず目移りしてしまうラインナップです。
あとは、おいしい日本酒とスイーツを合わせて楽しむだけ。秋空のもと、スタンディングテーブルで乾杯しましょう。
日本酒×スイーツのマリアージュ
さっそく、日本酒とスイーツのおすすめの組み合わせをご紹介します。
「醴泉 純米大吟醸」(玉泉堂酒造) × 低糖質クッキー
おしゃれなラベルが目を引く「醴泉(れいせん)」の純米大吟醸。2018年秋には、JALの国内線のファーストクラスで採用されたお酒です。
一口飲むと、流行りのフルーティな純米大吟醸酒とは少し異なり、香り高く、お米の甘みがしっかりとしています。
蔵元いわく、食中酒のように楽しめる万能選手なんだとか。ぬる燗にして、鍋やお肉に合わせるのがおすすめだそう。これからの季節にぴったりですね。
合わせるスイーツは、おから粉で作った「源喜」の低糖質チーズクッキーです。
低糖質とは思えないほど、しっかりとしたチーズの風味。それでいてサクッとした軽さがあります。「醴泉」といっしょに食べると、チーズの塩気と日本酒の甘みがマッチします。お酒が進む味わいでした。
「房島屋 純米酒」(所酒造) × おつまみシュケット
次は「房島屋」の純米酒。今回は常温でいただきましたが、杜氏のおすすめは10度ほどか、ぬる燗だそう。
味わいははっきりとしていて、キレが良い印象。おすすめの食べ合わせを伺うと、スパイスの効いたインド料理とのお答え。なかなか珍しい組み合わせですね。
この辛口の純米酒には、「ギャルリシュシュアー」のおつまみシュケットを合わせます。シュケットとはフランスのお菓子で、見た目は小さなシュークリームのよう。
本場の味付けは甘いものが多いようですが、今回はプレーン、チョコ味、抹茶味のスイーツセットと、ソーセージ味、チーズ味、カレー味のおつまみセットの2種類が用意されていました。今回はおつまみセットの中でも、カレー味のシュケットと合わせてみます。
シュケットの中は空洞で、少し固めの生地。食べてみると、カリッと小気味よい音がします。スパイスが効いた甘めの生地は、まさにカレーを思わせる味わい。軽めの食感なので、ついついお酒にも手が伸びてしまいますね。
「白川郷 純米にごり酒」(三輪酒造) × フレッシュフローズンいちご
最後の組み合わせは、ととりべファームの「フレッシュフローズンいちご」と、「白川郷」のにごり酒。まさかの組み合わせですが、蔵元さんおすすめの裏メニューです。
こちらは、フローズンいちごが入った袋に、お酒を直接注ぎます。にごり酒といちごの色が映えて、いちごミルクのような見た目です。外側からいちごをつぶしてシェイクし、ストローを使っていただきます。
一口飲むとびっくり。いつもは濃く感じるにごり酒が飲みやすくなっていました。にごり酒の酸味とお米の甘さが相まって、どんどん飲み進めてしまいますが、にごり酒はアルコール度数が高めなので、ゆっくりと楽しみましょう。
「西濃地方の思い出になればうれしい」
今回のイベントは、企画の立ち上げからわずか半年という短い期間で開催されたのだとか。
「大垣市の酒屋『ムトウさかや』さんに相談したところ、あれよあれよと言う間に話が進み、わずか半年で開催することになりました。準備は大変でしたが、関係者のみなさんのおかげでなんとか間に合いました。
今日は、みなさんがイベントを楽しんでいる姿が見られて感無量でした。西濃地方の思い出として、今回のイベントがみなさんの心に残ってくれればうれしいですね」と話す伊藤さん。その言葉からは、地元愛をひしひしと感じます。
なんとも新鮮な、日本酒とスイーツの組み合わせ。お客さんも思い思いの組み合わせを楽しんでいたようで、幸せそうな笑顔が会場にあふれていました。
次回は、いったいどのようなイベントになるのでしょうか。今から開催が待ち遠しいですね。
(文/spool)
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