3月16日に奈良市内で実施された「奈良市の食×観光PR事業 奇跡の日本酒プロジェクト」について、前回に引き続きその模様をお伝えします。今回は奈良市内にある今西清兵衛商店を訪問しました。

今西清兵衛商店の酒造りを知る

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左でマイクを持つのが今西社長。右でカメラを構えるのがツアーコンダクターの酒サムライ・あおい有紀さん。

今西清兵衛商店代表取締役社長の今西清隆氏より、酒蔵の一日の流れについて説明いただきました。

まずは朝6時ごろから仕込みの準備、その際にもろみの分析や温度チェックを行う。そして米を蒸し始めます。これが「朝飯前」の仕事だそうです。その後、8時ごろに米が蒸しあがるので、午前中はその米を運んだり仕込みの作業で費やされます。午後になると、洗米し、次の日の準備をしっかりと行います。こちらの酒蔵では1日1トン程度を洗米することもあるといいます。

酒蔵の中は清潔そのもの。「温度管理の徹底と、いかに衛生状態を保つか」に重きを置いているそうです。

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今西清兵衛商店といえば代表銘柄は「春鹿」。その切れ味のよさと口当たりはどこからきているのでしょうか。今西社長いわく「うちの蔵では通常より長く低温で発酵をさせている」とのこと。このあたりにヒントがあるような気がします。

現代では珍しい「木樽仕込み」

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温度や衛生管理の面から、ほとんどの酒蔵がホーロータンクを使っていますが、こちらでは奈良県内で唯一といわれる木樽での醸造を行っています。大きな木樽を作ることができる職人の数が非常に少なくなっている今、この樽はまさに文化遺産と言えるものだと思います。

さて、そのお酒の味ですが、非常にふくらみのある、木香に加えて果実味すら感じられるやわらかなお酒でした。テリーヌやフォアグラなどの料理に合いそうな感想を持ちました。

酒造りの要!酒母室を見学

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小さな部屋ですが、酒造りにおいて重要な工程「酒母造り」の行われる部屋、酒母室も見学することができました。奈良県は酒母造りの技術、そして三段仕込みの技術が確立した場所だといわれています。

今西清兵衛商店では、酵母を5~6℃の温度で20日間培養します。使っている酵母は協会901号。メロンやバナナの香りが部屋いっぱいに広がる、素晴らしい空間でした。

いよいよ試飲。こちらではお猪口を500円で購入して、さまざまなお酒の試飲を酒蔵スタッフの説明を聞きながら楽しめます。

今西社長から学ぶ奈良の魅力

見学のあとは、今西社長とあおいさんのトークタイム。今西清兵衛商店の魅力を存分に引き出してもらいました。

Q. 春鹿が目指すお酒の方向性は?
A. 超辛口といえば春鹿、というイメージを持っていただいています。エッジのきいたお酒造りを目指したい。とはいえ、お客様は多くの酒のタイプを楽しみたいとも思っているので、できるだけさまざまなタイプを作りたいですね。弊社が独自で行っている食事会で、お客様の声を直接聞くことにより酒造りに活かすよう心がけています。

Q. 海外への輸出はどのような様子ですか?
A. 韓国やアメリカでよく売れている。今後も力を入れたいです。

Q. 仕込み水にはどんな特徴がありますか?
A. 布目川の系統の水を使っていますが、通常の水道水と比べ鉄分の量が1/30程度です。

Q. 奈良の良さを、奈良で生まれて商売している立場からどのように考えていらっしゃいますか?
A. 奈良の良さはとにかくゆっくりとした時間の流れを感じることができること。そして、春日大社や東大寺のような素晴らしい場所の周辺にまだまだ素晴らしいところがあり、徒歩で訪問できること。ぜひ今後は奈良のメイン観光スポットに合わせて、酒蔵をはじめ多くの場所を訪れていただきたい。

多くの参加者がまだまだ語りたい(&試飲を続けたい)ところでしたが、時間がきてしまいました。およそ90分間、今西社長には素晴らしいお話をいただきました。

後ろ髪をひかれつつ、この後は、酛づくりの発祥の地、そして日本酒発祥の地である正暦寺へ向かいます。

(文/片桐新之介)

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