西宮市では「西宮の日本酒」振興プロジェクトの一環として、酒蔵地域一帯をキャンパスに見立て「西宮日本酒学校2016」を開講しています。第1回の日本盛、第2回の白鷹に続き、第3回は1月28日(土)、大関株式会社をキャンパスに行われました。
灘の酒造りに貢献した大関。私費で設置した灯台は今も現役
大関株式会社は、1711年に初代の大坂屋長兵衛が創業しました。1884年に商標条例が発令されたのを機に「大関」に変更。1935年に株式会社化し、当初は「北辰馬商店」という名でしたが、1929年に株式組織へ改め「株式会社長部文治郎商店」、1962年に「大関酒造株式会社」、1991年に「大関株式会社」と社名を変更してきました。
東京オリンピック開催と同じ日(1964年10月10日)に発売した「ワンカップ大関」は1合カップ容器の先駆けで、1979年には年間1億本を販売する大ヒット商品になっています。
1810年に5代目・長兵衛が、酒を運ぶ樽廻船の海路安全を願って私費で設置した「今津灯台」は、今も航路標識として使われています。現役の灯台としては日本最古のもので、大関株式会社が運営しているとのこと。
今回の講義会場は大関株式会社。本社工場には、瓶の搬入から洗瓶、瓶詰、品質検査、商品の梱包、搬出までを完全自動化した「ワンカップ大関」の充填プラントがあります。
講義のテーマは「大関きき酒道場」
第3回は「大関きき酒道場」と銘打って、きき酒について学びます。きき酒は、耳・目・鼻・口をフル活用して判断するのだそう。
- 耳…発泡の音を聞く。
- 目…色や冴えを見る。
- 鼻…小刻みに香りをかぎ、香りの強さや性質をみる。
- 口…酒を口に含み、舌の先から奥へ転がすようにして舌全面で味をみる。
「口から吸いこんだ空気を鼻から抜きながら香りをみたあと、酒を吐き出し後味をみる」という手順で行い、感想や評価を記録します。
テーブルには銘柄がわからないように隠された10本の瓶と問題用紙などが置かれています。順々にプラカップに注いで飲んでいきますが、緊張も相まって判断に悩みました。
これが今回出題された問題。
第1問のアルコール度数は、13度・15度・17度の3種類を度数の高い順に、第2問の甘辛度は、日本酒度−6・+1・+5の3種類を甘い順に並べます。第3問は大吟醸酒・純米酒・本醸造酒・樽酒の4種類をそれぞれ当てはめるというものでした。
約30名の参加者はみんな真剣。迷ってもう一度飲み比べると、さらに悩んでしまうということを繰り返しながら、答えを記入して提出します。ちなみに第3問のきき酒で出題されたお酒は以下のものでした。
- 「超特撰 大坂屋長兵衛 大吟醸酒」
- 「純米酒 醴(RAI)」
- 「上撰 辛丹波(からたんば)」
- 「上撰 金冠 樽酒」
「きき酒」実践のあとは、日本酒の造りに関する座学です。発酵の仕組みや、発酵と腐敗の違い(人にとって有効なものが発酵で、人にとって害を成したり役に立たないものが腐敗だそう)、清酒の製造過程などについて学びました。
座学の終わりには「灘の酒用語集WEB版」の紹介がありました。灘酒研究会100周年を記念して作成されたもので、製造工程や酒に関する用語が細かく解説されています。
いよいよ正解と成績の発表です。
全問正解は1人のみという難関。満点の方には一級の認定証が授与されました。
私は甘辛度を1か所(2問)間違い、二級の認定証をいただきました。ゆったりとした気持ちで飲む酒もいいですが、緊張感がある真剣勝負の「きき酒」も刺激があって楽しいものですね。
(文/天田知之)