山田錦と並ぶ酒造好適米の代表「雄町」。その雄町で醸されたお酒が一堂に会し、その出来栄えを競う「雄町サミット」の第10回が、7月24日(火)に都内で開催されました。

第10回雄町サミット

今年は全国から207点の雄町酒が出品され、厳正な審査の結果、吟醸酒部門で28点が、純米酒部門で14点が優等賞に輝きました。その結果をお伝えします。

「雄町」の魅力が詰まった受賞酒の数々

吟醸酒の部(純米吟醸酒を含む)

  • 「伊七 雄町純米大吟醸」(熊屋酒造/岡山)3年ぶり2回目
  • 「赤磐 雄町 生」(利守酒造/岡山)3年連続6回目
  • 「櫻室町 極大吟醸 室町時代」(室町酒造/岡山)3年連続6回目
  • 「乾坤一 純米大吟醸」(大沼酒造店/宮城)2年ぶり3回目
  • 「初孫 巧実 純米大吟醸」(東北銘醸/山形)3年連続3回目
  • 「フモトヰきもと 純米吟醸 雄町 」(麓井酒造/山形)初受賞
  • 「山形正宗 純米吟醸 雄町」(水戸部酒造/山形)初受賞
  • 「辯天 備前雄町 純米大吟醸」(後藤酒造店/山形)4年連続4回目
  • 「儀兵衛 純米吟醸 雄町」(山口/福島)2年連続2回目
  • 「あぶくま 純米吟醸 雄町」(玄葉本店/福島)3年連続8回目
  • 「愛友 大吟醸 備前雄町」(愛友酒造/茨城)2年ぶり3回目
  • 「御慶事 純米吟醸 雄町」(青木酒造/茨城)2年連続2回目
  • 「結ゆい 純米大吟醸」(結城酒造/茨城)3年連続3回目
  • 「武勇 純米吟醸 なごやか」(武勇/茨城)3年ぶり2回目
  • 「望bo: 純米大吟醸 雄町」(外池酒造店/栃木)初受賞
  • 「辻善兵衛 純米吟醸 雄町」(辻善兵衛商店/栃木)3年ぶり5回目
  • 「七水 55 純米吟醸 雄町」(虎屋本店/栃木)2年ぶり2回目
  • 「龍神 純米大吟醸 赤磐雄町」(龍神酒造/群馬)2年連続2回目
  • 「帝松 鳳翔 純米大吟醸」(松岡醸造/埼玉)2年連続3回目
  • 「旦 山廃純米吟醸 雄町」(笹一酒造/山梨)2年ぶり2回目
  • 「蓬莱 純米大吟醸 赤磐セブン 家宝伝承酒」(渡辺酒造店/岐阜)2年ぶり2回目
  • 「二兎 純米吟醸 雄町五十五」(丸石醸造/愛知)2年ぶり2回目
  • 「みむろ杉 ろまんシリーズ 純米吟醸 雄町」(今西酒造/奈良)2年連続2回目
  • 「雑賀 雄町 純米大吟醸」(九重雑賀/和歌山)6年ぶり2回目
  • 「南方 純米大吟醸 雄町 薫る甘口」(世界一統/和歌山)初受賞
  • 「黒牛 純米吟醸 雄町」(名手酒造店/和歌山)初受賞
  • 「雨後の月 純米吟醸 雄町」(相原酒造/広島)3年連続6回目
  • 「長久正宗 純米吟醸 雄町 5年熟成」(嘉美心酒造/岡山)3年ぶり2回目
「御慶事」青木酒造の青木知佐専務

青木酒造の青木知佐さん

雄町の主要産地である岡山県の酒蔵は、雄町を使う量が多いため、例年は優等賞にずらりと並ぶことが多かったのですが、今年は山形県と茨城県の健闘が目立ちました。

4年連続の入賞を果たした、山形県・後藤酒造店の後藤大輔さんは以下のように話しています。

「辯天」後藤酒造店の後藤大輔専務

後藤酒造店の後藤大輔さん

「雄町で造ったお酒は、シャープですっきりとした味わいになります。その独特な味わいを好んで指名買いするファンがいる一方、それが口に合わないと敬遠する人がいるのも事実。しかし、雄町の個性は商品のラインアップをつくるうえでは欠かせません。毎年力を入れて醸しています。

今シーズンは、米が例年以上に溶けて心配しましたが、優等賞の連続記録が途絶えなかったので、ホッと胸をなでおろしています」

純米酒の部

  • 「赤磐雄町 特別純米」(利守酒造/岡山)2年連続2回目
  • 「極聖 特別純米 高島雄町」(宮下酒造/岡山)5年連続5回目
  • 「橘屋 特別純米 雄町」(川敬商店/宮城)3年連続7回目
  • 「結ゆい 特別純米」(結城酒造/茨城)5年連続5回目
  • 「丹澤山 山廃純米 凛峰」(川西屋酒造店/神奈川)4年ぶり2回目
  • 「明鏡止水 純米雄町」(大澤酒造/長野)3年ぶり2回目
  • 「十六代九郎右衛門 特別純米 山廃雄町」(湯川酒造店/長野)初受賞
  • 「磯自慢 特別純米 雄町」(磯自慢酒造/静岡)5年連続9回目
  • 「喜平 静岡蔵 純米 限定謹醸 雄町」(静岡平喜酒造/静岡)3年連続3回目
  • 「開運 純米 雄町」(土井酒造場/静岡)2年ぶり2回目
  • 「W 赤磐雄町 原酒」(渡辺酒造店/岐阜)初受賞
  • 「ふた穂 雄町 特別純米」(長龍酒造/奈良)9年ぶり2回目
  • 「紀土 -KID- 無量山 純米 雄町」(平和酒造/和歌山)初受賞
  • 「30 VISION 雄町」(寒北斗酒造/福岡)2年ぶり2回目
「磯自慢 特別純米 雄町」(磯自慢酒造/静岡県)

「磯自慢 特別純米 雄町」(磯自慢酒造/静岡県)

驚いたことに、5年連続で優等賞を獲得した蔵が、3蔵もありました。通算で9回の受賞を果たしている磯自慢酒造(静岡県)には別格の雰囲気が漂っているなかで、今回もっとも脚光を浴びたのは、吟醸酒・純米酒のダブル受賞を3年連続で達成した、茨城県・結城酒造です。

初出品の第6回から、すべての年で優等賞を獲得している、蔵元杜氏・浦里美智子さんに話を伺いました。

結城酒造・蔵元杜氏の浦里美智子さん

結城酒造の浦里美智子さん

「私にとって初めての酒造りで使ったのが雄町でした。それ以来、雄町が蔵の軸になっています。今季の雄町は溶けやすく、扱いにくいという話を聞いていたので、慎重に造り始めました。修正を重ねながら、狙いどおりのお酒を造れたと思います。おかげさまで、今シーズンは雄町を使ったお酒を出品した品評会すべてで賞をいただくことができました。特に今年は、岡山県で雄町を栽培している女性農家・堀内由希子さんの米のみを使ってお酒を造ることができたので、評価された感慨もひとしおです」

「結ゆい 純米大吟醸」と「結ゆい 特別純米」(結城酒造/茨城県)

「結ゆい 純米大吟醸」と「結ゆい 特別純米」(結城酒造/茨城県)

両部門を合わせた通算受賞回数ランキング

  • 13回=宮下酒造(岡山県)
  • 11回=磯自慢酒造(静岡県)
  • 10回=秀鳳酒造場(山形県)
  • 8回=出羽桜酒造(山形県)、玄葉本店(福島県)、結城酒造(茨城県)、利守酒造(岡山県)
  • 7回=葛城酒造(奈良県)、白菊酒造(岡山県)、川敬商店(宮城県)、室町酒造(岡山県)
  • 6回=酒田酒造(山形県)、神沢川酒造場(静岡県)、菊池酒造(岡山県)、相原酒造(広島県)
  • 5回=辻本店(岡山県)、十八盛酒造(岡山県)、富久千代酒造(佐賀県)
「極聖 特別純米 高島雄町」(宮下酒造/岡山県)

「極聖 特別純米 高島雄町」(宮下酒造/岡山県)

今年の注目は、山廃のお酒で優等賞を獲得した蔵が2つあったことでしょう。

なかでも、長野県・湯川酒造店は山廃の純米酒のみを出品し、高い評価を得ての初受賞。蔵元杜氏・湯川慎一さんは次のように話しています。

湯川酒造店・蔵元杜氏の湯川慎一さん

湯川酒造店の湯川慎一さん

「乳酸を添加する速醸系酒母よりも生酛系酒母のほうが魅力的なお酒になると思い、軸足を移しつつあります。生酛は味わいがすっきりとしますが、山廃はしっかりと味が出ると感じています。

そこで、良く溶けて味が出る雄町と山廃を組み合わせることで、ジューシーでトロピカルな味わいを狙っています。搾りたての時点で納得できるレベルでしたが、火入れをして1年間寝かせてみると、エッジの立った部分がなめらかになりました。飲み口がさらに良くなっていたので、昨年度のお酒を出品したのですが、私の意図が評価されてうれしく思っています」

出品酒が年々増え、大盛況をみせる「雄町サミット」。雄町を使う酒蔵が全国に広がりつつあるため、優等賞を獲得する蔵も全国各地に分散するようになりました。

山田錦に次ぐ魅力的な酒米として、今後、ますます美味しい雄町酒が増えていってほしいですね。

(取材・文/空太郎)

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