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「結ゆい」を醸す茨城・結城酒造の魅力に迫る

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今回は、日本酒の酒蔵に嫁入りした女性が、30代になってから一念発起で酒造りを学び、ついには杜氏(製造責任者)になってしまったお話をご紹介します。

その女性とは茨城県結城市にある「結城酒造」の浦里美智子さんです。

最近は女性杜氏も増えてきて、日本全国には30人前後いると思われますが、そのほとんどは蔵元のお嬢さんで、それ以外は稀です。ましてや嫁入りしたご夫人が杜氏になるというのは珍しいこと。しかし、美智子さんの場合、1年目から素晴らしい仕上がりで評判となり、彼女が醸す「結(むすび)ゆい」は、わずか3年で首都圏でも知られる人気銘柄になっています。

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日本酒のおいしさに目覚め、一から学び直した酒造り

美智子さんが、蔵元息子の昌明さんと結婚したのは9年前。

その当時、結城酒造の造るお酒のほとんどは醸造アルコールを加えた普通酒ばかりで、美智子さんは何もわからないまま手伝っていました。ところが、一番寒い時期に例外的に造っていた大吟醸酒を飲んで驚いたそうです。「日本酒っておいしいんだ」と。

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それ以来、いろいろな地酒を飲み比べて、日本酒への関心を深めていきます。

一方で主力商品の冠婚葬祭用の普通酒が大手の価格攻勢を受けてじり貧となり、じわじわと蔵の売り上げが落ち込んできました。何かを変えなければと蔵のみなさんで打開策を模索していたころ、茨城県工業技術センターで酒造研修があるという話が舞い込んだきました。

ちょうど、お子さんが保育園に預けられるようになった時期だったので、「私が研修に行きたい」と昌明さんに頼むと快諾されて、研修に向かったのでした。

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研修は非常に充実して内容の濃いものだったそうで、美智子さんは次のように話してくれます。

「酒造りの工程は手伝っていたので、漠然とはわかっていました。けれど、吟醸酒造りというのはまったく初めてで、目からうろこのことばかりでした。

普通酒を造る際は、何時になったらこの作業をする、といった具合に人間側の都合で作業時間が決まっているんです。ところが吟醸酒造りでは、微生物の状況を把握して、彼らが理想となるお酒を造ってくれるように人間側が作業を合わせなければならない。

麹や酵母に気持ちを込めて向き合い、手触りや香り、発酵の音など五感をフル活用しなければならないことがよくわかりました」

看板商品は雄町の純米吟醸!全量特定名称酒の造りに大転換

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こうして技術を学び、4年前の平成24BY(醸造年度)の造りで初めて仕込みを1本、“責任仕込み”で挑みました。

使ったお米は岡山県産の雄町で、50%の純米吟醸を醸したのですが、これが思った以上の出来で、取引先からも高い評価を獲得。商談会で都内の有力酒販店との取引も決まりました。

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2年目の造りに備えて、さらに腕を磨き、生産量も増やしました。そして、岡山県のJAが主催する雄町サミットで優秀賞を獲得しました(47の出品酒中9点が受賞)。

「うちの蔵と雄町のお米は相性がいいことを確信しました。だから、『結ゆい』の看板商品は自然と雄町の純米吟醸になったのです」と美智子さん。

「結ゆい」の売り上げが順調に伸びたことから、3年目の造りにあたって、普通酒を全廃し、全量特定名称酒の蔵に変身するとともに、蔵の杜氏(製造責任者)に就きました。

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「結ゆい」のデザインは地元の書道家とコラボして作ったもので、地元名産の絹織物、結城紬の真綿が吉の字を優しく包み込むのをイメージしています。

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「まだまだ駆け出しです。4年目の今季もいろいろ悩みながら造っています」と美智子さんは話していますが、できあがったお酒は昨年にも増して美味しい仕上がりでした。

今季は新たに北海道産の酒造好適米を使ったお酒も商品化していますし、3年目となるお米をほとんど削らない90%精米の純米酒の味わいも秀逸でした。

美智子さんは目指すお酒として、「自分好みのお酒を造りたい。口当たりが柔らかくて、優しい味わい。ちょっと華やかで、かつ芯がしっかりしているお酒です」と話していました。「結ゆい」のさらなる進化に期待します。

(文/空太郎)

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空太郎

日本酒指導師範(菊正宗認定)&酒伝道師です。 1年365日、日本酒を飲んでいます。 10人未満で丁寧にお酒を醸す銘酒小蔵がたくさん存在することが、 日本酒の多様性と魅力を維持するのには欠かせないと思っています。 そんな酒蔵の活動や、それを応援する酒販店や居酒屋の動きを お伝えしていきます。