山田錦と並び、代表的な酒造好適米として知られる「雄町」
そんな雄町を使ったお酒が一堂に会し、その仕上がりを競うイベント「第9回 雄町サミット」が都内で開かれ、審査結果が発表されました。
今回は、全国126軒の酒蔵が計194点の雄町酒を出品。厳正な審査を経て、吟醸酒部門から26点、純米酒部門から15点が優等賞に輝きました。
吟醸酒の部(純米吟醸酒を含む)
- 「大典白菊 純米大吟醸 雄町」 (白菊酒造株式会社/岡山) 3年連続5回目
- 「極聖 純米大吟醸 高島雄町」 (宮下酒造株式会社/岡山) 3年連続8回目
- 「櫻室町 極大吟醸 室町時代」 (室町酒造株式会社/岡山) 2年連続5回目
- 「初孫 巧実 純米大吟醸」 (東北銘醸株式会社/山形) 2年連続2回目
- 「秀鳳 大吟醸 奥伝」 (有限会社秀鳳酒造場/山形) 3年連続5回目
- 「出羽桜 純米吟醸 雄町」 (出羽桜酒造株式会社/山形) 5年連続8回目
- 「辯天 純米大吟醸原酒 備前雄町」 (合資会社後藤酒造店/山形) 3年連続3回目
- 「くどき上手 純米大吟醸 雄町44%」 (亀の井酒造株式会/山形) 4回目
- 「儀兵衛 純米吟醸 雄町」 (山口合名会社/福島) 初受賞
- 「あぶくま 純米吟醸 雄町」 (有限会社玄葉本店/福島) 2年連続7回目
- 「会津娘 純米吟醸 雄町」 (高橋庄作酒造店/福島) 3年連続3回目
- 「結ゆい 純米大吟醸」 (結城酒造株式会社/茨城) 2年連続2回目
- 「御慶事 純米吟醸 雄町」 (青木酒造株式会社/茨城) 初受賞
- 「龍神雄町 A-spc」 (龍神酒造株式会社/群馬) 初受賞
- 「帝松 鳳翔 純米大吟醸」 (松岡醸造株式会社/埼玉) 2回目
- 「喜八郎 純米大吟醸」 (五十嵐酒造株式会社/埼玉) 3年連続3回目
- 「橙の英君 純米吟醸」 (英君酒造株式会社/静岡) 初受賞
- 「富士錦 純米大吟醸 雄町」 (富士錦酒造/静岡) 2年連続2回目
- 「みむろ杉 ろまんシリーズ 純米吟醸 雄町」 (今西酒造株式会社/奈良) 初受賞
- 「雨後の月 純米大吟醸」 (相原酒造株式会社/広島) 2年連続5回目
- 「寿喜心 純米吟醸 雄町」 (首藤酒造株式会社/愛媛) 初受賞
- 「繁桝 純米大吟醸 雄町」 (高橋商店/福岡) 初受賞
- 「七田 純米吟醸 雄町50」 (天山酒造株式会社/佐賀) 2年連続4回目
- 「松浦一 純米吟醸」 (松浦一酒造株式会社/佐賀) 初受賞
雄町の主産地・岡山県の有力蔵が多く並びました。そのなかでも、3年連続8回目の受賞となった宮下酒造はさすがですね。
しかしそこに負けず劣らず奮闘したのが、5年連続8回目の受賞となった山形・出羽桜酒造。また、初受賞のお酒がたくさんあったのも印象的でした。
純米酒の部
- 「赤磐雄町 特別純米」 (利守酒造株式会社/岡山) 初受賞
- 「gozenshu the silence Clean Reverb」 (御前酒蔵元辻本店/岡山) 2年連続5回目
- 「燦然 特別純米 雄町」 (菊池酒造株式会社/岡山) 5回目
- 「極聖 特別純米 高島雄町」 (宮下酒造株式会社/岡山) 4年連続4回目
- 「橘屋 特別純米 雄町」 (合名会社川敬商店/宮城) 2年連続6回目
- 「杉勇 生酛山卸 純米原酒 雄町」 (合資会社杉勇蕨岡酒造場/山形) 2年連続2回目
- 「秀鳳 特別純米 無濾過 雄町」 (有限会社秀鳳酒造場/山形) 3年連続5回目
- 「結ゆい 特別純米」 (結城酒造株式会社/茨城) 4年連続4回目
- 「菊 スペシャルエディション 山廃」 (株式会社虎屋本店/栃木) 初受賞
- 「正雪 特別純米 雄町」 (株式会社神沢川酒造場/静岡) 2回目
- 「磯自慢 特別純米 雄町」 (磯自慢酒造株式会社/静岡) 4年連続8回目
- 「喜平 静岡蔵 純米 雄町」 (静岡平喜酒造/静岡) 2年連続2回目
- 「富士錦 特別純米 雄町」 (富士錦酒造株式会社/静岡) 初受賞
- 「龍口水 洛伝 特別純米」 (東山酒造有限会社/京都) 3回目
- 「百楽門 純米古酒 1992年度醸」 (葛城酒造株式会社/奈良) 4回目
注目すべきは、4年連続8回目の受賞を達成した、静岡・磯自慢酒造。その実力を改めて知らしめました。
両部門を合わせた、通算受賞回数ランキング
- 1位 (12回) 宮下酒造株式会社(岡山)
- 2位 (10回) 有限会社秀鳳酒造場(山形)、磯自慢酒造株式会社(静岡)
- 3位 (8回) 出羽桜酒造株式会社(山形)
- 4位 (7回) 有限会社玄葉本店(福島)、葛城酒造株式会社(奈良)、白菊酒造株式会社(岡山)
- 5位 (6回) 酒田酒造株式会社(山形)、合名会社川敬商店(宮城)、結城酒造株式会社(茨城)、株式会社神沢川酒造場(静岡)、利守酒造株式会社(岡山)、菊池酒造株式会社(岡山)、室町酒造株式会社(岡山)
- 6位 (5回) 御前酒蔵元辻本店(岡山)、十八盛酒造株式会社(岡山)、相原酒造株式会社(広島)、富久千代酒造有限会社(佐賀)
吟醸酒と純米酒の両部門で優等賞を獲得した酒蔵もありました。
吟醸酒部門と純米酒部門でダブル受賞を達成した酒蔵
- 有限会社秀鳳酒造場(山形) 3年連続4回目
- 宮下酒造株式会社(岡山) 3年連続3回目
- 結城酒造株式会社(茨城) 2年連続2回目
- 富士錦酒造株式会社(静岡) 初
- 利守酒造株式会社(岡山) 初
山形・秀鳳酒造場の古頭慎太郎氏は次のように話しています。
「おととしから2年連続のダブル受賞を果たしていたので、今年も獲れそうな気がしていました。その理由は、うちの酒造りと雄町の特性がマッチしているから。私たちは派手な酵母を使わず香りを控えめにしつつ、米の味わいを最大限に生かすための酒質設計をしています。
飲んだ人の心を落ち着かせるような、ほどほどの甘味を出しながらも、味の幅が広いお酒を模索してきました。特に、アルコール度数が17度台の原酒を主力にしているので、雄町特有の太い味わいがちょうど良いのでしょう。
15年以上前から雄町を使っています。複数の酒米を使っているうちの蔵でも、重要度の高い大切な酒米ですね」
続いてお話をうかがったのは、2年連続のダブル受賞を記録した、茨城の結城酒造。
杜氏を務めるのは、蔵元夫人の浦里美智子氏です。彼女は杜氏に就任した1年目に、雄町を使った純米酒をこの「雄町サミット」に出品。いきなり優等賞を獲得しました。純米酒部門では、4年連続の受賞を果たしています。
さらに、吟醸酒部門でも昨年から連続受賞するという快挙。浦里さんは喜びの声を伝えてくれました。
「製造責任者になるとき、最初に『どの酒米を使うか』と蔵元から問われました。いろいろ飲んだなかで一番好みだったのが雄町を使ったお酒だったので、深く考えることなく『雄町が欲しい』と言い切ったんです。雄町は山田錦に並ぶ高級品種で価格も高く、非常に人気の酒米。容易に入手できるわけではないので、なんとも無謀な希望でした。
ところが運良く、タンク1本分の雄町が手に入ったんです。そして、無我夢中で造ったお酒がものすごく美味しかった。『自分が造りたいお酒はこれだ!』という確信と同時に、運命を感じましたね。
『雄町サミット』では優等賞をいただくことができ、今年は全国新酒鑑評会でも雄町の純米大吟醸で金賞を獲得することができました。もう、雄町に足を向けて寝られません」
雄町を使う酒蔵が全国に広がっているのと比例するように、雄町を愛する"オマチスト"も増えています。
今後も、雄町の美味しいお酒が醸されていくことを期待しましょう。
(取材・文/空太郎)