2018年9月に東京農業大学で開催された「Professional Sake College 2018」。今年で3回目となるこのイベントは、日本酒業界の関係者に向けた勉強会です。今年は、90の酒蔵や43の酒販店などから、約200人が参加しました。

「Professional Sake College2018」参加者のみなさん

勉強会は第1部「ブラインドテイスティング」、第2部「東京農大 数岡准教授による講義」、第3部「再テイスティングと受賞酒の発表」の3部構成で行なわれ、朝から夜まで丸一日かけて、日本酒を学びます。

酒のプロが90種の出品酒をテイスティング

第1部は、酒のプロによる本気のテイスティングです。

評価するポイントは「香り」「味」「バランス」の3項目。90種類の日本酒について、それぞれ5点満点で評価します。それぞれの瓶にはフィルムがかけられ、銘柄などの情報がわからなくなっているため、味覚と嗅覚のみが頼りです。

「Professional Sake College2018」のブラインドテイスティング

テイスティングには、勉強会の趣旨に賛同した蔵の酒が使われます。出品酒は「酢酸イソアミル>カプロン酸エチル」「酢酸イソアミル<カプロン酸エチル」「生酛・山廃系」の3カテゴリーに分けられ、参加者の評価をもとに、入賞と金賞が選ばれます。

「Professional Sake College2018」の出品酒

さらに、出品酒の香気成分値や有機酸成分値などのデータを詳細に分析し、他蔵との差を含めて、出品酒蔵に還元されます。

成分データを酒造りに活かすには

第2部は、東京農業大学の数岡准教授による講義。テーマは、成分分析値やその他数値の傾向、日本酒の分析手法などについてです。

東京農業大学の数岡准教授による講義

ある蔵元に話を聞くと「蔵での成分分析では香気成分の含有量などを数値化していないので、とても参考になった」とのこと。香りの数値化とその活用などについて、酒蔵がふだん考えない視点、研究機関ならではの視点で説明され、蔵元たちが今後の酒造りにどのように活かしていくか考えながら聞いている様子が印象的でした。

感覚とデータを紐付ける、2回目のテイスティング

2回目のテイスティングは、数岡准教授が分析した各値を見ながら行なわれます。

各種分析値をみながらのテイスティング

1回目のテイスティング結果と科学的な分析値を比べながら、「〇〇と感じる酒は、△△の含有量が多い」など、感覚とデータを紐付けていくのがねらいです。

「Professional Sake College2018」の受賞酒

そして、2回のテイスティングを合わせて、高得点を受賞した酒が発表されました。今年の最優秀酒には「雪の茅舎 秘伝山廃 純米吟醸酒」が選ばれています。

「データや根拠をもって、日本酒を説明できるように」

主催者である朝日屋酒店の小澤さんは「蔵元にとっては、自社製品の詳細な情報と酒質向上のヒントを得る機会として。酒販店や業界関係者には、より深い知識を習得する機会として。大学には、より多くのデータを収集できる機会として。それぞれの立場でこの機会を活かし、日本酒業界の発展に役立ててほしい」と、会の趣旨を話します。

朝日屋酒店の小澤さん

「酒屋として接客をしているなかで、自分の感覚だけで説明するのではなく、しっかりとした根拠や裏付けが欲しいと思っていました。特に、日本酒の大きな要素である"香り"については出回っている情報がほとんどなく、自分の感覚以外にその多寡を計る手段がなかったのです」

そんな時に数岡准教授と知り合い、日本酒の分析値を知る機会を得たのだそう。知り合いの蔵元や酒販店の仲間に声をかけて、勉強会を開いたことを始まりに、現在は直接取引のない蔵元や意欲的な酒販店からの申し込みも多数あるようで、会そのものが大きく広がってきているのだとか。

次年度以降の開催も楽しみな勉強会「Professional Sake College」。一般の方は参加することができませんが、入賞した酒や分析値の見方について、参加した酒販店に聞いてみてはいかがでしょうか。

◎関連リンク

(文/小林健太)

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