酒屋はもちろんのこと、デパートやスーパー、コンビニにもたくさんの日本酒が並び、ネットショップを利用すれば日本全国の地酒を簡単に買うことができる時代になりました。購入の選択肢が多くなったのは喜ばしいですが、その反面、日本酒ビギナーからは「どれを買えばいいかわからない」「説明が難しい」という声も聞こえてきます。

そこで、現役の酒屋という立場から、日本酒初心者が酒屋でお酒を選ぶときのポイントを紹介します。今回は「プレゼント編」です。

頼りになる酒屋を探すには?

日本酒の選び方・酒販店の外観

まずは、自分のよく行くエリアで、日本酒を扱っている専門店を探してみましょう。

インターネットで酒屋を探す

近年、自社のウェブサイトやSNSをもつ酒販店が増えてきました。インターネットで「地域名+酒屋」と検索してみると、さまざまな店を見つけることができます。どんなお客さんをメインターゲットにしているかで、商品の説明が変わってくるので、自分にとってわかりやすい説明をしている酒屋を選びましょう。そのなかでも、SNSでの商品説明がわかりやすい店はおすすめです。

地域の居酒屋で、酒屋の情報を集める

居酒屋をはじめとした飲食店は、その地域の酒屋について詳しいことが多いでしょう。「〇〇酒屋はこんな人がやっていて、こういうお酒に力を入れている」「△△酒屋なら、初心者にも親切に教えてくれるよ」など、地元ならではの情報を教えてもらえるかもしれません。

このテクニックを応用すると、出先で訪れた居酒屋で酒屋の情報を仕入れて、そこでおみやげ用の日本酒を買うという楽しみ方もできます。ただ、忙しい時間帯に質問するのは控えるなど、店に迷惑がかからないように気を付けてください。

酒屋へ行く前に考えておくこと

予算と本数を事前に決めておく

酒屋で目移りしてしまわないように、予算・ボトルの大きさ・本数をあらかじめ考えておきます。何人かでいっしょにプレゼントを贈る場合は、事前に相談しておくことが大事です。季節やシチュエーションによっても変わりますが、予算の相場は以下の金額が一般的といわれています。

  • 1,500円前後:ちょっとした贈り物。御礼など
  • 3,000円前後:ふだんなかなか飲めないお酒の贈り物。父の日、母の日など
  • 5,000円前後:高級な贈り物。誕生日や結婚記念日のお祝いなど
  • 10,000円前後:さらに特別な贈り物

贈り物の場合、この金額に箱代や包装代、送料などが加わることを見込んで、予算を決めておきます。

ちなみに、日本酒のボトルは大きく分けて2種類。一升瓶(いっしょうびん)と四合瓶(しごうびん)があります。一升瓶の容量は1800ml、四合瓶は720mlです。相手が日本酒をたくさん飲む人なのか、それとも少しずついろいろな種類を飲みたい人なのかを考慮して、購入する本数を考えておきましょう。

酒屋のスタッフに相談してみる

日本酒の選び方・店員さんに相談する

日本酒は光に弱いため、酒屋は窓ガラスにフィルムを貼ったり、店内の照明をできるだけ抑えたりしています。そのせいか、酒屋の店内が暗くて入りにくいと感じる人も多いかもしれません。

入店後、まずは店内をぐるっと一周してみましょう。その時点で気になるお酒があれば、それが"運命の出会い"になるかもしれません。どれを選べばいいのか悩んでしまったら、専門家であるスタッフに相談してみてください。

スタッフには、事前に考えておいた「予算」と「本数」、そして「プレゼントの目的」を伝えると良いでしょう。卒業、定年退職、就職、昇進、餞別......目的を伝えることで、各シチュエーションに適した日本酒を勧めてくれます。これだけでも、充分なおすすめをしてもらえると思いますが、さらに特別な1本を選ぶためのテクニックを紹介します。

プレゼント相手の「好み」で探す

相手が好きな香りや味わい(甘い、辛い、スッキリ、どっしりなど)を、わかる範囲でスタッフに伝えてみましょう。相手がよく飲む銘柄や、好きな料理があれば、それを伝えるのも有効です。

プレゼント相手の「キャラクター」で探す

年齢や性別、日本酒への精通度など、相手の人柄を伝えるのもヒントになります。穏やかな性格の人には"優しい味わいの純米酒"、新しいことに挑戦するのが好きな人には"蔵が初めて取り組んだ意欲的な純米吟醸酒"など、人の個性とお酒の個性を合わせることで、新しい発見につながりますよ。

プレゼント相手の「出身地」で探す

相手の出身地に合わせて日本酒を選ぶのも良いですね。その地で育った人には、地元のお酒が合うことが多いのも理由のひとつですが、「自分のことを考えて、お酒を選んでくれた」ことが相手に伝わりやすいので、きっと喜んでもらえます。

プレゼント相手に縁のある「ビンテージ」で探す

ワインのビンテージと同様に、日本酒にも熟成という概念があります。会社設立10周年のお祝いに、10年熟成の日本酒。成人祝いに、産まれた年に造られた20年熟成の日本酒。相手に縁のある年の日本酒を選ぶ方法です。ただ、日本酒のビンテージはあまり数が多くないので、購入を考えている場合は熟成酒に強い酒屋に行く必要があります。

日本酒の選び方・味わいのマトリックス

複数の銘柄を組み合わせる

相手の好みがわからない場合や、相手も日本酒初心者という場合は、いくつかの銘柄を組み合わせた"飲み比べセット"を贈るのもひとつの方法です。飲み比べセットには、"おいしい"に加えて、"楽しい"の要素が加わります。味のバランスを相談しながら、スタッフといっしょに組み合わせを考えてみましょう。

また、「ひやおろし」「しぼりたて」「新酒」など、季節のお酒を集めた飲み比べセットをつくって、「旬の味覚といっしょに飲み比べしてください」などの言葉を添えると、より魅力的な贈り物になるかもしれません。

ちなみに、スタッフに相談する場合は、混んでいる時間よりも空いた時間のほうがゆっくりと話ができます。夕方〜夜よりは昼間、週末よりは平日のほうが、ゆっくりと話しながら買い物できる可能性が高いでしょう。

店頭で目立っている商品を選ぶ

酒屋のなかには、個人経営や家族経営の小さな店も多く、タイミングによっては、お酒に詳しいスタッフがいない場合もあります。そういうときは、店内の情報から「これぞ!」という1本を探しましょう。店の中でひときわ目を引くお酒があれば、その酒屋の"おすすめしたいお酒"かもしれません。

お酒をおすすめしたいときは、たくさん陳列したり、店内に複数の売り場を作ったり、POPを作ったり......興味を惹くような仕掛けをするもの。「大量に並べるのは、在庫が余っているってことじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。ただ、それは違います。「おすすめしたい!」と思ったお酒だからこそ、大量に仕入れて紹介しているのです。

聞いたことのある銘柄を選ぶ

失敗しにくい選び方として、聞いたことのある銘柄を選ぶことは有効です。初心者でも聞いたことがあるということは、優れた特徴や、人気を博した実績をもっているということでしょう。

試飲して選ぶ

相手に合わせるのもいいですが、自分が美味しいと思った日本酒をプレゼントすることも素敵な選び方。店によっては試飲できる場合もあるので、スタッフに聞いてみてください。試飲をする場合は、電車などの公共交通機関を使って店に向かいましょう。

プレゼントする日本酒が決まったら

日本酒の選び方・さまざまなボトル

ラッピングにこだわる

箱に入れて包装したり、和紙やフィルムでくるんだり......きれいに包んでもらうと、受け取る側のわくわくが大きくなります。プレゼント用のシールや水引などの飾りを用意している店もあるので、料金も含めて相談してみてください。風呂敷を使った包み方を教えてもらえることも。

手紙やメッセージカードを添える

手紙やメッセージカードを添えると、より温かみのあるプレゼントになりますね。酒屋から直接発送する場合、日本酒以外の荷物は同梱できませんが、手紙やメッセージカードはいっしょに送ることができます。メッセージカードを用意している店もあるようなので、ぜひ、プレゼントに思いを込めた一言を添えてみましょう。

冷蔵クール便で送る

宅配便などを使って送るときのテクニックです。日本酒は保管状態で味わいが大きく変わるアルコール。せっかく、美味しいお酒を選んでも、贈り先で正しく保管してもらえないとお酒の質が下がってしまいます。

クール便で送ると「冷やして保管したほうが良さそう」と直感的にわかってもらえるので、冷蔵庫や冷暗所などの適切な場所で保管してもらえる確率が上がります。より美味しくお酒を飲んでもらうために、有効なテクニックです。

プレゼントに日本酒を贈ろう!

日本酒の選び方・さまざまなボトル

それでは、これまで紹介したテクニックをおさらいです。

  • インターネットで酒屋を探す
  • 地域の居酒屋で、酒屋の情報を集める
  • 予算と本数を事前に考えておく
  • プレゼント相手の「好み」で探す
  • プレゼント相手の「キャラクター」で探す
  • プレゼント相手の「出身地」で探す
  • プレゼント相手に縁のある「ビンテージ」で探す
  • 複数の銘柄を組み合わせる
  • 店頭で目立っている商品を選ぶ
  • 聞いたことのある銘柄を選ぶ
  • 試飲して選ぶ
  • ラッピングにこだわる
  • 手紙やメッセージカードを添える
  • 冷蔵クール便で送る

これらのテクニックを使って、ぜひ、プレゼントに日本酒を選んでみてください。

(文/小林健太)

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