飲食店や酒販店で見たり聞いたりする日本酒の用語を知ることで、さらに日本酒を楽しむことができるようになります。今回は、日本酒の表現としてよく使われる「フルーティー」という言葉を紹介します。
日本酒の「フルーティー」とは?
フルーティーな日本酒と聞いて、どんな香りや味わいなのかイメージできるでしょうか。
日本酒の世界では一般的に、"華やかで甘味のある香り"や"果実味のある味わい"のことを「フルーティー」と表現します。以下のような果物に例えられることが多いでしょう。
- メロン:メロンの果肉の甘い香りや甘味
- バナナ:熟したバナナの甘い香りや甘味
- ぶどう:巨峰の皮をむいた時のような甘い香り、果肉の甘味
- リンゴ:リンゴをすりつぶしたような香り、さわやかな酸味と甘味
- 白桃:白桃の果肉の香りや甘味
- パイナップル:トロピカルで甘味と酸味がまじった香りと味わい
※ 白桃やパイナップルについては、缶詰の香りがイメージに近いかもしれません
実際は、どれかひとつのみの香りがするわけではなく、さまざまな要素が混ざっている場合がほとんどです。
プロの方々が行なうティスティングでは「飲んでみて、どんな要素があるかを探る」という方法ではなく「飲んでみて、メロンの要素を探る。バナナの要素を探る・白桃の要素を......」というように、要素をひとつずつ探しながら全体の特徴を捉えていきます。
ところで、日本酒の基本的な原料は米・米麹・水のみですが、果物のような香りはどこからやってくるのでしょうか。もちろん、香味料などの添加物ではありません。
香りの由来は、アルコール発酵が進んでいくときに酵母が生成する化合物(酢酸イソアミル、カプロン酸エチルなど)です。発酵の途中にいろいろな香りの要素が生まれていくんですね。
実際に飲んでみよう!
① 華やかで甘味のある香り
華やかで甘味のある香りをもつ日本酒として「久保田 純米大吟醸」(朝日酒造/新潟県)を紹介します。2017年に限定発売された商品ですが、好評だったため、2018年4月に定番商品として再発売されました。
メロンや洋ナシのような華やかな香りが特徴的です。爽やかな甘味で、後味がすっきりとしています。
② 果実味のある味わい
果実味のある味わいをもつ日本酒として、「古伊万里 前(さき) 純米吟醸」(古伊万里酒造/佐賀県)を紹介します。試行錯誤を繰り返しながら改良を重ねている、近年注目の佐賀地酒です。
桃やプラムのような魅惑的な果実味を感じさせてくれ、すっきりとした飲み口と心地良い香りの余韻を楽しむことができます。
「フルーティー」というシンプルな表現からさらに一歩踏み込んで、「リンゴのような......」「パイナップルのような......」など、より具体的に特徴を捉えることで、さらに奥深い日本酒の世界を味わってみてください。
(文/小林健太)