飲食店や酒販店で見たり聞いたりする日本酒の用語を知ることで、さらに日本酒を楽しむことができるようになります。今回は、日本酒の表現としてよく使われる「旨味」という言葉を紹介します。

日本酒の「旨味」とは?

そもそも「旨味」とは、いったいどんなものなのでしょうか。

「旨味」は、人間が味覚として感じられる基本の味(甘味・酸味・塩味・苦味、旨味)を構成するひとつです。和食における旨味というと、昆布や鰹の"だし"が代表的ですね。

日本酒の旨味は、有機酸という種類に分類されるコハク酸や、いくつかのアミノ酸が主体になっています。日本酒の場合、一般的にアミノ酸を旨味として捉えることが多いようです。アミノ酸は旨味の成分であると同時に、苦味などの雑味をつくる原因になるため、量が多いと"重たい酒"に、少ないと"軽い酒"になるのだそう。

◎代表的な旨味の成分

  • コハク酸(有機酸):貝類に含まれる。
  • グルタミン酸(アミノ酸):昆布、トマト、大豆などに含まれる。酸味がある。
  • アラニン(アミノ酸):しじみやレバーなどに含まれる。甘味がある。
  • アスパラギン酸(アミノ酸):アスパラ、大豆などに含まれる。酸味がある。
  • プロリン(アミノ酸):豚肉などに含まれる。甘味や苦味がある。

日本酒の旨味(アミノ酸)は、どのようにつくられるのでしょうか。

アミノ酸は、麹のもつ酵素が米のタンパク質を分解する過程で多くつくられます。タンパク質は米粒の外側に多く含まれるため、米をたくさん磨いた精米歩合の数値が低い大吟醸酒と比べると、あまり磨いていない精米歩合の数値が高い純米酒のほうが、旨味の多い傾向にあります。

旨味の強いお酒を見つけるには、どうしたらいいのでしょうか。

アミノ酸がどのくらい含まれているかを示した「アミノ酸度」という数値を参考にすることが多いようです。一般的な日本酒は1.0~2.0の範囲に収まるものがほとんど。数字が低くなるとアミノ酸が少なくスッキリとしたお酒に、高くなると旨味のある濃醇なお酒になる傾向があります。しかし、アミノ酸度をラベルに表示しない日本酒のほうが圧倒的に多いのも事実です。

国税庁が発表している『全国市販酒類調査』を参考に、アミノ酸度の高いお酒を探してみるのもひとつの指標になるかもしれません。たとえば、純米酒の平均アミノ酸度は1.53で、吟醸酒や本醸造酒よりも高くなっています。地域別にみると、鳥取県の1.91を筆頭に、中国地方の平均が1.69と、他のエリアに比べて高い傾向にあるようですね。

ただ、アミノ酸度が高くても、日本酒度や酸度をはじめとする他の数値とのバランスによっては、あまり旨味を感じられないという場合もありますので、ご注意ください。

実際に飲んでみよう!

旨味の強いお酒として紹介するのは、和歌山県の名手酒造店「黒牛 純米酒」。同銘柄のなかでもっとも定番の一本です。

「黒牛 純米酒」 720ml 1,200円/1800ml 2,450円(税抜)

「黒牛 純米酒」720ml 1,200円/1800ml 2,450円(税抜)

米の旨味を感じさせる穏やかな香り。強めの酸味、しっかりとした旨味が特徴です。余韻はスッキリとし、脂がのったタレの焼き鳥など、味の濃い食事と相性が良い純米酒です。

日本酒は、ビールやワインなどと比べて、多くの旨味をもっています。たとえば、昆布だしと鰹だしを合わせるなど、旨味の成分はお互いを組み合わせることで、相乗的に増していくのだそう。日本酒の旨味と料理の旨味による相乗効果を、ぜひ試してみてください。

(文/小林健太)

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