日本酒とチョコレート。あまり聞き慣れない組み合わせかもしれません。意外に思う人が多いかもしれませんが、とても美味しく、かつ奥深いペアリングなんですよ。
今回は、日本を代表する高級チョコレートメーカー・メリーチョコレートのブランド「トーキョーチョコレート」のシェフショコラティエ・大石茂之さんが、チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ 2018」で開催したセミナーから、日本酒とチョコレートの具体的な楽しみ方をいくつか紹介します。
絶妙なバランスのペアリング
「五味(ごみ)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、食べ物や飲み物がもっている"味"を表す言葉です。読んで字のごとく、"5つの味"を意味し、甘味・旨味・酸味・苦味・塩味の総称として使われます。
日本酒には、五味のうち、甘味・旨味・酸味・苦味の4つが含まれており、塩味だけが足りません。五味がバランス良くそろっていると、より美味しさを感じるのだそう。そのことを、大石シェフは実際にペアリングを提案することで教えてくれました。
用意した日本酒は、大石シェフがもっとも好きな純米大吟醸酒と語る「出羽桜 一路」。合わせるチョコレートは、ホワイトチョコレートにアーモンド・シリアル・海塩を混ぜた「トーキョーチョコレート 塩とアーモンドのチョコレート」(写真右)です。
チョコレートをひとくち食べて、その後、日本酒を口に流し込みます。
アーモンドとチョコレートの香りが、ふわりと広がっていきました。「日本酒には、塩味を和らげてくれる働きがある」と大石シェフ。ペアリングによって、五味の絶妙なバランスをとっているんですね。
ぬる燗×ガナッシュのペアリングが魅せる世界
次の提案は、「安芸虎(あきとら) 純米酒 山田錦80%精米」と「日本酒のガナッシュ」の組み合わせです。
大吟醸酒などの高スペックな日本酒に使われるイメージのある山田錦を精米歩合80%で醸した、珍しいお酒。大石シェフは「吟醸系の香りもありつつ、米の味わいを感じられます」と、高く評価しています。
ガナッシュとは、溶かしたチョコレートに生クリームを加えて冷やし固めたもの。今回は、同じ安芸虎を加えることで、日本酒の風味を味わうことができるガナッシュになりました。鼻を近づけて香りをかぐと、お酒の香りをハッキリと感じ取れます。
まずは常温でテイスティング。ふくよかな旨味と、どっしりとした安定感があります。
次に、少しだけ温めていただきます。大石シェフがいちばん美味しく感じた温度は35〜40℃。燗をつけることで香りが開き、後味がキリッとした印象に変化します。
ガナッシュには、エクアドル産のフルーティーなチョコレートを使用しているのだそう。日本酒と同じように、チョコレートも原料のカカオ豆や造り方によって、さまざまな味わいを生み出すことができるのです。今回は、日本酒を加えたことで水分量が増え、ムースのような舌触りになっていました。柑橘系の風味もあります。
ぬる燗の安芸虎とガナッシュを合わせてみましょう。 日本酒とチョコレートが、口のなかで優しくまとまっていきます。どちらの味わいも崩れないのは、同じお酒を使っているからかもしれません。 「寝る前に、デザートリキュールのように楽しんでみてはいかがでしょうか」 と、大石シェフからの素敵な提案もありました。
日本酒もチョコレートも、コンビニやスーパーなどで、気軽に入手できるもの。ぜひみなさんも、今回紹介した大石シェフのペアリングを参考にしてみてはいかがでしょうか。
(文/嘉手川瑞姫)