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南部流の杜氏・蔵人が大集合!専門家とともに最新の研究を学ぶ酒造講習会

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南部杜氏酒造講習会は全国の南部流の杜氏や蔵人が集まる勉強会で、岩手県石鳥谷(いしどりや)と紫波(しわ)で毎年夏に4日間に渡って開催されます。

この講習会は南部杜氏組合の正会員でなくとも、賛助会費を支払えば誰でも受講できます。クラスは特科・研究科・杜氏科に分かれて、酒造りの基礎や最新の研究について学ぶことができます。未来の杜氏を目指す私は杜氏科を受講しました。

毎回メインテーマが決められ、それにあわせて昨年までの出品酒・市販酒の傾向や今年の米の出来、近年の研究を講師が説明していきます。今年のテーマは「麹」でした。

講師は、各県の醸造試験場の先生や、札幌・仙台・東京などの国税局鑑定官室の担当者、昨年の南部杜氏自醸酒鑑評会での主席杜氏のみなさんです。また、今回は株式会社はせがわ酒店・長谷川社長の特別講演もありました。

各地の醸造試験場から専門家が集合!最新の研究を学ぶ

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醸造試験場は、おおよそ県単位に設置されていて、日本酒に関わる研究や酒造りの指導をしています。県オリジナルの酵母や商品の開発、研究論文の紹介、出品酒等の分析やデータ集積などが主な仕事です。

各地の試験場からさまざまな研究テーマをもった先生が講義を担当します。

福島県からはハイテクプラザ会津若松技術センターの鈴木氏。全国新酒鑑評会で多くの金賞を獲得した福島県を支える先生です。山形県は山形県工業技術センターの小関氏。ワインの熟成で起きるマロラクティック発酵を日本酒に取り入れたことで有名です。山形の新しい酒造好適米「雪女神」も今後市場をにぎわすでしょう。

秋田県は総合食品研究センターの渡邉氏で、UT-1酵母の開発や清酒の貯蔵が近年のテーマです。青森県は青森県産業技術センターの村中氏、製麹および製麹中の衛生管理に関する研究報告などで、さまざまな対策を示しています。

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国税局担当者による講義は、酒税法規の解説もありましたが、鑑評会の結果についての話が主でした。地域ごとに開かれる鑑評会の結果と近年の傾向、そしてその技術を市販酒にどう活かせば良いかなど、さまざまな話が聞けました。

たとえば、清酒の香りに含まれるクセについて「なぜ感じるか」「どう感じるか」「そしてその発生原因は果たして何なのか」「これを防ぐにはどうすべきかといった」など、化学的な視点で勉強します。

憧れの杜氏になるために・・・ 資格選考試験と自醸酒鑑評会

この講習会と同時に、杜氏資格選考試験も開かれました。三役(頭・もと屋・麹屋)、助手の経験年数や酒税法違反の有無などを鑑みて受験資格が与えられます。こちらは正会員でなければ受験資格は得られないので、個人で簡単になれるものでもありません。

試験内容は醸造学の筆記・小論文・きき酒で、さらに面接を経て合格者が決まります。今年も10名が南部杜氏の資格を得たようです。

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杜氏組合に所属する蔵から酒を数本持ってきて、きき酒して順位をつける自醸酒鑑評会もあわせて開かれました。このような会は全国各地の杜氏組合でも行われているようです。

一般には非公開の鑑評会ですが、講習会の期間中であれば南部杜氏講習参加者・酒造関係者はきき酒に参加できます。

成績順に上位・中位・下位に分けて、審査員のコメントや成分値とともに酒が用意されています。配布された自分のコップに日本酒をスポイトで移し、きき酒をします。その時の印象と審査員のコメントを照らし合わせて、自分の感覚を鍛えます。杜氏になるにはきき酒が上手にできなければ何も始まらないと言われているほど、重要なスキルなんです。

南部杜氏の伝統を学びに道の駅「石鳥谷の伝承館」に行ってみよう!

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南部杜氏の技を一般でもが学べる施設が「道の駅 石鳥谷」に併設された「南部杜氏伝承館」です。

中はひんやりとして涼しい場所だと思ったら、実は酒蔵として使われていた土蔵を解体し、移築復元した貴重な建物だとか。そのため外気の影響を受けにくい造りになっているのですね。昔の酒造道具や酒造りの記録映画、祭りや甑倒しなどのジオラマなどが展示してあります。

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記録映画「南部杜氏」 の1シーン。機械がない時代の、人力による造り方です。

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全国の酒蔵からの化粧樽もたくさん!

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酒造りの使われていた木製の道具。

現代の酒造りでは樹脂やステンレスの道具に入れ替わっているものが多いです。木製の道具が多いと、木の香りが酒にたっぷり付きそうですね。原料米もあまり精米されていなかったと思われるので、昔の酒はかなりパワフルな味だったのかもしれません。

また、原料の木は近くにあるとしても、木工職人も必要になりますし、道具を洗うのも大変だったでしょう。洗米も雪降る川でやる、夜通し働く昔の蔵人の苦労が木目に刻まれているようです。

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近年は木桶仕込を復活させている蔵元も増えてきました。木桶仕込がどのくらい大変なもので、どういう風味が出せるのか。逆にステンレスやホーローの長所はどこにあるのだろうと考えてみるのもおもしろいと思いますよ。

「道の駅 石鳥谷」にも冷蔵庫が完備されていて、さまざまな日本酒が販売されています。なんときき酒もできるのです。おみやげ選びの参考に、南部杜氏の技を味わってみてはいかがでしょうか。

(文/リンゴの魔術師)

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リンゴの魔術師

札幌生まれ、弘前大学人文学部に入学するも農学生命科学部を卒業。今は秋田で杜氏を目指し修行中。夏は技師、冬は麹室助手をやっています。造りを通して見た日本酒というものを書いてゆきたいと思います。お酒って、飲んでも考えてもおもしろいですよね。趣味はお絵かき、リンゴ彫刻、鉄道、雑魚釣り、花いじり、猫いじりなどなど。