富山県生まれの酒米「雄山錦」。その名前は雄大な立山連峰の主峰「雄山」に由来しています。母(胚珠)は「ひだほまれ」、父(花粉)は「秋田33号」が親となったお米で、開発にかかった歳月は10年以上。1997年に新品種として登録されました。
吟醸用に開発された酒米「雄山錦」
富山県の酒造好適米「雄山錦」について、玉旭酒造の嶋光国杜氏にお話しを伺いました。
Q:「雄山錦」の味の特徴は?
北陸地方で生産の多い酒米「五百万石」と比較すると、味わいが上品です。そのため、ともすれば新酒の時は味が軽すぎると感じるかもしれません。
Q:「雄山錦」育成のきっかけは?
「雄山錦」は、当初「富山酒45号」という名前で開発がはじまった新品種です。富山県の酒米の主力品種が新潟生まれの「五百万石」でしたが、「五百万石」は心白が小さく、米を多く削る吟醸酒をつくるのには不向きでした。そこで新たに富山産の育てやすい酒米をつくろうという動きにつながりました。ちょうどそのころ各県でも新品種の話があちこちから聞こえていて、全国的な育成ブームだったのかもしれません。
Q:酒造りの段階で、他の酒米と異なる点は?
導入当初は随分と米が溶けやすかったのですが、最近はそうでもなく、逆に大量処理でも使いやすくなっています。特性に慣れるのも簡単です。
Q:「雄山錦」を酒造りに取り入れる理由は?
最近では新たな富山県育成品種の登場で影が薄くなった感はありますが、やはり富山生まれ・富山育ちの酒米だからですね。現在富山県での「雄山錦」のシェアは、県内で醸造される日本酒の総量の1%もありません。
お話しを伺ったこの日は「雄山錦」の田んぼの除草作業日、私もお手伝いしました。実際、自分が作業を手伝った酒米で醸された日本酒を呑めると考えると、とても特別な気分になります。
「玉旭 純米吟醸 SILVER」をテイスティング!
「雄山錦」を使った玉旭酒造の新作が「玉旭 純米吟醸 SILVER」です。
雄山錦の精米歩合は55%。含み香はマスカットやりんご、返り香はヨーグルトや若いパイナップル。上品、繊細と思わせながら、どこか親しみやすさがあるお酒です。食中酒としても、日本酒単体としても、食前酒、宴の後半にもあう雄山錦の魅力を存分に味わえる銘柄です。
◎玉旭 純米吟醸 SILVER
・原料米:雄山錦
・精米歩合:55%
・日本酒度:+4
・酸度:1.4
・価格:1.8L・2,808円(税込)、720ml・1,728円(税込)
この他にも「雄山錦」を使った銘柄には「玉旭 BLACK」「玉旭 DESPERADO」「玉旭 豊穣純米 山吹」「おわらの里 純米吟醸」「月の蜜 純米吟醸」「さら宮 純米吟醸」などがあります。
(文/濱多雄太)