こんにちは、内藤醸造にて清酒『木曽三川』の製造と販売をしております、SAKETIMESライターのしゅんです。

現在日本では、日本酒ブームが起きていると言われています。しかし日本各地の蔵元は一部を除いて、景気が良くないと嘆く意見もあるようです。以前より明らかにメディアでも日本酒は報道されるようになり、若い人が日本酒を飲む機会が増えてきていることは実際に蔵元で働く私も実感しています。

それなのに何故景気が良くないと各地の蔵元は嘆くのでしょうか。今回はそういった、日本酒ブームの影にあたる蔵元の実情についてお話ししていきたいと思います。

日本酒ブームなのに日本酒の売れ行きが落ちている??

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国税庁調べによる平成23年度から平成26年度における課税移出数量実績を元に、実際に過去4年間における蔵元の課税移出数量を比較してみました。
平成23年度 3323千石
平成24年度 3283千石(前年比98.7%)
平成25年度 3217千石(前年比97.9%)
平成26年度 3139千石(前年比97.5%)

平成23年度と比べると、年々2%近くの減少がみられます。2%というと少ない数字にみられる方もいるかもしれないので『石』という単位について説明をさせていただきます。『石』はお酒の一升瓶換算100本の値のことです。180ℓが1石となります。

たとえば平成25年度から平成26年度においては78千石の減少がありますが、これは一升瓶でいえば780万本ものお酒が売れなくなってしまったということです。非常に由々しき事態であることがわかりますよね。

しかし、なぜ日本酒ブームと言われている昨今、このように出荷数量は減っているのでしょうか。そのからくりについて、お酒の種類ごとの課税移出数量をみることで少しわかってきたことがありました。

純米酒・純米吟醸酒・吟醸酒などの特定名称酒が増加する半面、
落ち込みの激しい一般酒

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国税庁調べによる、お酒の種類ごとの平成23年度から平成26年度における課税移出数量実績を見てみました。すると純米酒については年々2%から3%、純米吟醸酒については年々8%、そしてなんと吟醸酒については10%近く年々の出荷数量が増えていることが分かります。

しかしその反面、一般酒については3%から4%出荷数量が落ちていることも分かりました。純米酒などに代表される特定名称酒は全体として出荷が伸びていても、そうではないお酒、いわゆる普通酒についての出荷が落ちることは蔵元にとってどう影響するのでしょうか。

蔵元の生命線はやっぱり普通酒?

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ここまでのお話をするとひとつ疑問がわいてきますよね。普通酒の出荷が落ちていても、純米酒や吟醸酒といった付加価値の高いお酒が売れているから蔵元にそこまで悪影響はないのではないかなと。これはとても難しい疑問です。答えはyesでもありnoでもあると思います。

まず悪影響がないyesの側面からお話をします。有名な蔵元の特定名称酒については出荷が伸びていますので、そういった蔵元はそこから更に設備や人員を増やして付加価値の高いお酒を増産することで更に売上を伸ばすことができるでしょう。

次に悪影響があるnoの側面からお話をします。そこでまず前提として考えなければいけないことは、特定名称酒の出荷数が伸びたとはいっても現在の清酒の出荷数量の約7割を依然、普通酒が占めるという事実です。

そしてその普通酒造りについても日本全国各地の蔵人が手を抜くことなく寝食を犠牲するほどの努力の末に醸して生まれたお酒であり、特定名称酒と比べて劣っているだとか甲乙がつけられるものではないということです。

普通酒の出荷量が減ってしまうということはそれだけ全国各地の蔵人の酒造りを無くすということです。売上の大半をしめていた普通酒の出荷が落ちたことで廃業を余儀なくされた蔵元、また蔵人をリストラせざる得なかった蔵元は数多くあります。そしてその中には全国新酒鑑評会で金賞を受賞した実績を持つ蔵人や蔵元もあるのです。

普通酒は蔵元にとって看板商品とはなりにくいものですが、屋台骨である場合が多いことは事実です。その屋台骨が失われ、それと同時に伝統の技術も消えてしまっていくこと。それを寂しいと感じてしまうのは私だけでしょうか。

以上が日本酒ブームと言われる中での全国各地の蔵元の現状となります。

私の持論となってしまいますが、特定名称酒が普通酒に比べてより優れているなどという考えを皆さんにはしてほしくはないのです。それぞれに個性があり造り手の思いが入ったお酒に違いはないのですから。場所や状況に応じて普通酒がベストなシーンがどこかに眠っているかもしれません。

日々の何でもない晩酌において皆さんが普通酒を飲み、それが更なる日本酒業界の発展につながることを私は願います。

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