日本酒は、夏には冷やして冷酒で、冬は温めて燗酒とさまざまな温度帯で楽しめるお酒です。また、季節だけでなく、料理にあわせて温度帯を変えて楽しむこともあります。

ワインも種類や製法によって飲むときの温度帯を変えますが、日本酒とワインではどのような楽しみ方の違いがあるのでしょうか。この記事では、それぞれを楽しめる温度帯に注目して探っていきます。

ワイングラスに入った日本酒

日本酒とワイン、それぞれ最適な温度帯とは?

日本酒とワインの飲み方を「冷やして飲む」「常温で飲む」「温めて飲む」の3つの温度帯にわけて考えていきましょう。

冷やして飲む

冷やして飲む場合、日本酒とワインの温度帯はほぼ同じですが、飲み方が異なります。

「ワイン」×冷やして飲む

冷やして飲むワインは、主にスパークリングワインや白ワイン。適温は6〜10度前後です。事前に冷蔵庫やセラーで冷やしておいて、飲む直前や飲んでる間は、氷水を入れたワインクーラーにワインボトルを入れて冷たい温度をキープします。

「日本酒」×冷やして飲む

冷蔵庫や氷水の中に入れてキンキンに冷やした日本酒を「冷酒(れいしゅ)」と呼びます。温度帯は5〜15度くらいです。

冷たい温度帯では日本酒特有の香りやアルコール感が分かりづらくなるので、日本酒を飲み慣れてない人でも比較的飲みやすくなります。

通常は冷やした日本酒はグラスに注いで飲みますが、ウィスキーのように氷を入れて飲む方法もあります。

常温で飲む

ワインと日本酒では、常温が示す温度帯が異なるので注意が必要です。

「ワイン」×常温で飲む

「白ワインに対して、赤ワインは冷やさなくていい」とよくいわれますが、赤ワインの飲み頃の温度帯は、飲み口が軽いタイプであれば14~16度前後、しっかりとしたコクがある重いタイプであれば16~18度前後です。

冷やさなくてもいいといっても、それは「白ワインと比べて」という意味でのこと、室温で温度が上昇することも考慮に入れて、赤ワインも冷蔵庫やセラーで冷やしておいたほうがよいでしょう。

ワインの常温が低めに設定されているは、日本に比べてフランスやアメリカが比較的涼しい気候なことも関係しているようです。

「日本酒」×常温で飲む

常温の日本酒は「冷や(ひや)」と呼ばれます。「冷や」というと、冷やして飲むお酒を連想しがちですが、温度帯でいえば20〜25度前後です。

最近は冷やしたお酒のことを「冷や」と呼ぶ人も増えてきているので、常温のお酒を指す場合は、そのまま「常温」と伝えたほうがよいかもしれません。

常温はお米そのものの旨みやまろやかで深い味わいを楽しめるので、特に純米酒や本醸造酒を飲む時におすすめです。生酒でなければ日光の当たらない冷暗所で保管することで、ゆるやかに熟成させることもできます。少しずつ味の変化を楽しむのも良いですね。

温めて飲む

「ワイン」×温めて飲む

ワインを温めるといえば、「ホットワイン」を思い浮かべる方も多いかもしれません。寒空のなかでもホットワインがあれば、身体の芯から温まります。

ホットワインは、ワインにはちみつなどの甘みやシナモンなどのスパイスを加え、沸騰直前まで温めてつくります。抜栓してから数日経ったワインも、ホットワインにすれば最後まで美味しく飲むことができます。

ホットワインは、赤ワインでつくることが多いようですが、白ワインやロゼワインでも美味しくつくれます。

「日本酒」×温めて飲む

日本酒も温めて飲みますが、世界的にみて珍しいのは、その温度帯ごとに名前がつけられていること。

30~35度は「日向燗(ひなたかん)」、35~40度は「人肌燗」、40~45度は「ぬる燗」、45~50度は「上燗(じょうかん)」、50~55度は「熱燗」、55度以上は「飛び切り燗」といった具合です。

「人肌燗」「ぬる燗」の低い温度帯では、お酒の旨みが感じられ、「熱燗」や「飛び切り燗」の熱い温度帯では、アルコールの刺激が強く感じられます。温度を変えることでお酒の味わいがガラッと変わるのが燗酒の面白いところです。

燗酒は、日本酒を徳利に十分に入れて口を塞いだ徳利を湯煎すると簡単に美味しくできあがります。

日本酒

同じ日本酒でも温度の違いで味わいが変化する

お酒をより楽しむうえで、日本酒もワインも温度管理が大切です。

ワインは、赤ワイン、白ワイン、スパークリングと、製法や種類によってそれぞれの最適な温度帯がありますが、日本酒が面白いのは、同じ銘柄でも温度帯によってそれぞれ異なる表情を見せることです。冷酒であればすっきりとした味わい、冷やは米の旨みが感じられ、燗酒はふくよかな香りが際立ちます。

いつも飲んでいるお酒を、たまには温度帯を変えて楽しんでみてください。日本酒の新たな美味しさに気づけるかもしれませんよ。

(取材・執筆:神崎なつめ/編集:SAKETIMES)

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