2019年の訪日外国人旅行者数は約3,000万人を超え、日本の観光地は多くの海外からの旅行者で賑わっていました。現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で旅行者数が激減したとはいえ、それでも外国人観光客の日本への関心はまだまだ高いままです。

日本交通公社(JTBF)と日本政策投資銀行(DBJ)が、2020年6月に海外に居住する外国人を対象に実施した「新型コロナの流行収束後に観光旅行したい国・地域」というアンケートでは、「日本」は依然として高い人気を示しています。

紅葉

日本を観光で訪れたいと考えている外国人旅行者の大半は、日本の文化に興味がある人たち。そこで、日本酒について英語で説明ができれば大変喜ばれます。

この記事では、外国人に日本酒のことを伝えるために知っておくと便利な英単語についてお伝えします。

日本酒の専門用語を英語で話してみよう

説明中

日本酒は、日本で飲めるお酒の中で「最も外国人にわかりづらいお酒」といえるかもしれません。

最近人気が高まっているクラフトビールは「Pale Ale」や「IPA」など、欧文表記がされていることがほとんど。「山崎」や「竹鶴」などウイスキーは海外でも人気が高く、“ジャパニーズウイスキー”というジャンルがあるほどです。

ですが、日本酒といえば、「ラベルは日本語表記」「無数にある酒蔵と銘柄」「酒質や味わいの幅が広い」と日本語を理解できない外国人にとっては三重苦です。

たとえば、フランスの旅行中に隣席のフランス人からワインについて教えてもらったら、それはとても素敵な思い出になりますよね。それは日本酒でも同じこと。日本酒について外国語で説明した情報はとても少ないので、日本酒で困っている外国人旅行者がいたら、日本酒の基礎や選び方について教えてあげるととても喜ばれます。

それでは、外国人旅行者が知りたがっている日本酒のあれこれについて、英語ではどのように表現すればいいのでしょうか?英語は多少間違えても問題ありません。伝えることができればそれで成功ですので、肩肘張らずに、酔いに任せてリラックスして話してみましょう。

「産地」について

日本を訪れる外国人が増えたとはいえ、多くの外国人旅行者は日本の地名について知っていることは稀です。

日本のどんな地域で米づくりが盛んなのかも知りませんし、その土地が銘醸地かどうかもわからないことがほとんどでしょう。そこで、日本酒の原料であるお米が育つ地域や実際に日本酒が醸される地域について説明してみます。

「都道府県」は、日本語をそのまま英語にすればOKです。京都のように有名な地名であればそのままで伝わりますが、例えば滋賀のように外国人旅行者にとってはわかりづらい地名であれば、「Next to Kyoto (京都のとなり)」という言い方ができます。

This sake is made in the place next to Kyoto. 
(このお酒は京都の隣の県で作られているんだよ。)

複数の都道府県にまたがる「地方」をついては、こんな言い方をします。

  • 東北地方:North-East
  • 関東地方:Tokyo region
  • 関西地方:The area around Kyoto and Osaka

どうしてもわかりづらければ、Googleマップなどの地図アプリを使いながら説明するのもおすすめです。

「甘口」「辛口」について

「甘口」「辛口」は自分の味の好みを伝えたり、また、飲食店側から味わいを伝えるときにも使うので重要な言葉です。ワインの世界でも使われている言葉なので、外国人にとっても馴染み深いでしょう。

甘口:Sweet
辛口:Dry

「甘口と辛口だったらどっちが好き?」と聞きたいなら、Which do you like~と尋ねてもよいですが、酒席では会話のテンポも大切なので「Sweet or Dry ?」 だけでも十分に通じます。

「精米歩合」について

「精米歩合」は、日本酒の重要な要素なので、ていねいに説明してあげたい言葉です。

精米歩合:Polishing ratio
玄米:Brown rice
白米:White rice
磨く:Polish
割合:Percentage

普段、ご飯として食べている白米は精米されたものですが、日本酒の仕込みに使われる米は食用の米よりもたくさん削られて(磨かれて)います。その割合が「精米歩合」として表されていることを教えてあげられれば完璧です。

Rice of this sake is 50% polished. 
(このお酒のお米は、50%磨いているんだよ。)

すべてを英語で説明するのは難しそうに感じるかもしれませんが、ボトルに書かれた精米歩合の数値を指しながら身振り・手振りで伝えれば、意外と通じるものです。

外国人だからといって必ずしもネイティブな英語を話すとも限りませんので、英語力を気にする必要はありません。

「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」について

この3つの違いを伝えるには、醸造アルコールについて説明してあげるとわかりやすくなります。

醸造アルコール:Distilled alcohol
添加する:Add

Distilled alcohol is added to this sake. 
(このお酒には醸造アルコールがはいっているよ。)

このあたりの話題は、日本人でもこだわり持っていたり見解が異なることが多いので、そういったことも伝えてあげると面白いかもしれません。

日本酒と一緒に日本の文化も伝えてみよう

ご飯

日本酒に興味を持ってくれるようであれば、日本人とお米の関係についても伝えてみてはいかがでしょう。

お米は古くから主食として日本人の食を支えていますし、お米を原料にして作られるお菓子もたくさんあります。「食事をする」ことを、日本語では「ご飯を食べる」ともいいますし、「朝食・昼食・夕食」のことも「朝ご飯・昼ご飯・夜ご飯」と呼びます。

極め付きは、土地の生産性を「石(こく)」という米の単位で表現したことです。米の1石は、1,000合に相当。日本では1日3合が成人ひとりの米の消費量とされていたので、1石は「大人が1年間に消費する米の量」でした。

北陸にあった加賀藩は「加賀百万石」と呼ばれますが、これは「100万人を1年間養える力を持った国」という意味。藩の国力を米の生産量で表し、大名や旗本の格付けにまでお米を使っていたわけです。日本好きの外国人の中には戦国時代ファンがいますので、そういった方には特に喜ばれるかもしれません。

お酒は文化であり、文化には必ず歴史的な背景があります。日本の歴史はとても古く、ユニークかつ豊穣。日本酒を楽しむときに、このような文化的・歴史的な小話を話してあげられると喜ばれるでしょう。

酒席であれば流暢な英語や正しい英語は求められません。外国人旅行者と席をともにする機会があったら、ぜひ、おすすめの日本酒について話してみてください。

(文:星知紀/編集:SAKETIMES)

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