先月の記事に引き続き、日本酒の表現について考えていきます。

※これまでの記事はこちら

 

今回は「日本酒の英語における表現」について考えたいと思います。断っておきますが、私は英語のプロフェッショナルではありません。あくまでここで話すことは「英語でこう表現すればいい」というのではなく、英語というよりはその概念を日本生まれ以外の相手に伝えるために、必要な考え方を提案したいということです。

 

 

1. 欧米における「dry」「sweet」とは

以前書いた記事にも書かせていただきましたが、そもそも日本語での「辛口」は、スパイシーというわけではなく、甘味が少ない、切れ味のいい口当たりということです。単純にワインを例に取ると、白ワインのdryとは残糖が少ないこと、糖分が残っている状態のものは甘口というものになります。

比較していいかどうかという疑問点もありますが、シャンパンは醸造工程の最後に、おりを外に出して、その減った分をリキュールなどで補充(ドザージュ、といいます)しますが、その加えた糖分によって甘口、辛口のランク分けがされます(「ドゥー」から「エクストラ ブリュット」まで5つの呼び名がある)。欧米での甘い辛いは、科学的見地によってそれなりに明確化されているという感覚があります。

 

2. 日本的「甘さ表現」「辛さ表現」は通じるか

そもそも日本では何をもって甘口とするか辛口とするかの明確な違いがあるとは言えません。

「日本酒度」はそもそも比重であって、アルコール度数が高ければ高くなるし、糖分が多ければマイナスには働くというものの、甘い辛いを決定する数値としては不十分です。秋田の新政、佐藤さんは、以前ブログで「グルコース濃度(=ブドウ糖の濃度のこと)」が甘辛判断の基準になる可能性をお話していました。(参考

しかし、これとて日本酒が甘い辛いと判断されうる決定打ではないように思います。とすると、「キリッとしている味わいで、フルーティー」とか「ほのかな甘みが、時間とともにほのかな苦味を感じられる」という表現をすると、かえって欧米人は混乱するのではないでしょうか?

「これはドライタイプだ」と表現することはいいですが、そう言って飲ませてしまうと、日本酒の香りや深みを説明していることにはならないのではと思います。お酒は嗜好品であり、説明によって印象がかなり変わります。安易な「dry-sweet」だけで説明してしまうのはあまり好ましくないと思います。

 

3. 日本酒の持つ特性を表現するには

日本酒を表現するには糖分だけでなく、香りの特徴や口当たり、苦味や酸味も考えなければならないと思います。しかもそれをわかりやすく表現することができ、ワインとは全く別の形で表現していかなければならないと思うのです(これは私の持論ですが、日本酒をワインにたとえて表現することや販売することは違うと思うのです。お酒の持つ複雑性をないがしろにしていて、酒蔵さんに失礼な表現ではないかと。あ、でもワインが日本酒に比べて単純という意見ではないです)。

私が今考えているものとしては、レーダーチャートのようなものがある方がいいと考えています。

軸は5つから6つ、ベクトルにどのような言葉を並べたほうがいいかということについては大いに議論の余地があると考えますが、私は「酸味」「苦味」を表現する言葉として「sharp」「bitter」という言葉を入れるべきではないかと思います。

SAKEの味わいを表すにはより的確な表現だと思いますし、欧米中心に外国の方にも訴えるべきポイントではないかと考えます。和食の味覚も、旨み、というものをどう表現するかが重要です。日本酒についても、その特徴を理解しやすくする表現の言葉と、その方法について考える必要があるのではと考えているのです。その結果として、SAKEがより世界中で飲まれることにつながっていくと思っています。

 

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