2020年に東京オリンピックの開催を控え、訪日外国人旅行者のますますの増加が見込まれています。訪日外国人旅行者に対して英語でおもてなしができれば、より親しみを持って接することができますね。

英語コミュニケーション能力を評価する世界共通のテスト「TOEIC® Program」を日本で実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(以下IIBC)は、楽しく学びながら実用的な英語力を身につけ、英語学習に対するモチベーションの向上を図るために「IIBC ENGLISH CAFÉ」という期間限定の英会話講座のイベントを開催しています。

そのなかで趣味を通して英語を学ぶことができる「ホビングリッシュ」という企画があり、2月28日(木)に開催された「日本酒」がテーマの回を取材しました。

日本の文化でもある日本酒の魅力を英語で伝えられたら、より日本を楽しんでもらえるかもしれません。講座内で紹介された英語での日本酒の表現もあわせてお伝えします。

日本酒の味わいを英語で表現

講師のKirsty Orreillさん

株式会社WeのKirsty Orreill(カースティ オリエル)さん

講師を務めるのは、株式会社WeのKirsty Orreill(カースティ オリエル)さん。講座はすべて英語で進みました。

はじめに行われたのは、日本酒を説明する上での基本表現について。味や香りを説明する語句は、以下のようなものがあるようです。

  • 甘口・・・sweet
  • 辛口・・・dry
  • 重みがある・・・heavy
  • 軽やかな・・・light
  • キレがある・・・sharp
  • 芳醇な・・・mellow
  • 味わう・・・savor
  • 飲みやすい・・・easy to drink

また、知っておくと役に立つ語句の紹介もありました。

  • 熱燗・・・hot sake
  • 冷や・・・room temperature sake
  • にごり酒・・・unfiltered sake
  • シュワシュワ感・・・tingling sensation

「dry」や「heavy」ではうなずきながら聞いている方が多いなか、「easy to drink」や「tingling sensation」などは初めて知ったという方も多く、聞きながらメモを取る姿も見受けられました。このような語句を知っていると、日本酒の味わいをよりスムーズに説明できそうですね。

次は、学んだ語句を使って日本酒の味わいを英語で表現する実践編です。

まずはお手本として、カースティさんが「一ノ蔵」と「雁木」をテイスティングし、その味わいを説明しました。

講師のKirsty Orreillさん

「一ノ蔵」は「fruity」な香りで、味わいは「dry」「sharp」「fresh flavor」と表現。「雁木」の香りは「wet grass」「rainy morning」と、雨が降った朝の草原の香りがするとのこと。味わいは「sweet」「long after finish」と、甘口で長い余韻があると表現しました。

カースティさんのお手本が終わると、いよいよ参加者の番です。

テーブルには「甘口」「辛口」「スパークリング」「にごり酒」を代表する日本酒として、それぞれ「東洋美人」「南部美人」「獺祭」「七田」が用意されており、これらの味わいを各テーブルでディスカッションをしました。

テーブルを回るKirsty Orreillさん

最初こそ緊張した雰囲気でしたが、日本酒を飲みながらのディスカッションということもあり、みなさんの緊張も段々とほぐれてきた様子。思い思いの英語で、それぞれの味わいを表現していました。

テキストによると、「東洋美人」の説明は「香りは穏やかな果実の香り。口に含むと綺麗な旨味と酸がバランスよく広がり、フレッシュで透明感のある味わいが感じられます」とのこと。

これを英語で表現すると、以下のようになります。
「Fragrance has a gentle scent of fruit. The well balanced “umami” and acidity spread in your mouth giving it a fresh and crisp taste.」

五味のひとつである「うま味」については、ぴったりと合う英語の表現はないそうです。しかし、世界中で日本食への注目が高まっている現在では、「umami」というそのままの表現で通じるようになってきています。さまざまな工程を経て「うま味」を醸し出す日本酒にとっては、とても重要な表現ですね。

日本人に必要なのは「自信」

講座終了後、講師を務めたカースティさんにお話を伺いました。

講師のKirsty Orreillさん

「日本酒を英語で伝える需要は高まってきていると感じます。『日本酒ホビングリッシュ』は私の英会話スクールでも開講している講座ですが、『英語は苦手だけど、日本酒を外国人に紹介できるようになりたい』という方や、日本酒に興味を持った外国人も参加しています。日本酒の魅力を外国人に初めて伝えるとき、まずは味わいについて説明するのがいいですね。製法も魅力的ですが、初めて日本酒を知る外国人にとっては伝わりづらいかもしれません。日本人は英語を話せるのに恥ずかしがり屋な部分があるので、自信を持ってコミュニケーションを取るといいと思います」

続いて、「IIBC ENGLISH CAFÉ」を実施・運営しているIIBC広報室の島田敬子さんにお話を伺いました。

IIBCの島田敬子さん

IIBC広報室の島田敬子さん

「私たちがよく耳にしていたのが、『仕事における専門分野の英語では会話ができるが、そのあとの食事の際に、英語で日本のことがうまく表現できない。特に日本酒の言い回しや表現がわからない』という声でした。日本酒は日本の文化でもあります。その魅力を英語で伝えられるスキルは重要だと考えていましたので、『IIBC ENGLISH CAFÉ』で講座を開催したいと考えていました。そんな矢先、株式会社Weさんの『ホビングリッシュ』を知り、一緒に講座を開催することになったんです。日本人は英語を完璧に話さないといけないという思いが強く、そこが苦手意識につながっているのではないでしょうか。そんな人の背中を押すために、英語を話す機会や場を提供するのが私たちの役割です」

お二人のお話に共通するのは、「日本人は英語に対して完璧を求めすぎている」ということ。講座でも紹介があった通り、比較的簡単な単語でも日本酒の魅力を伝えることはできます。自信を持って会話をすることが大事なのですね。

「まずは話してみること」が魅力を伝える第一歩

講座に参加していた男性に話を伺いました。現在は学生で、IIBCからのメールでこの講座を知ったそう。

「懐石料理屋でアルバイトをしていますが、外国人のお客様に日本酒の味わいをうまく伝えられなかったんです。そんな時にこの講座を知り、応募しました。今回学んだ表現を実践していきたいですね」と話してくれました。

「IIBC ENGLISH CAFÉ」の集合写真

今回の講座では、日本酒の魅力を外国人に伝えるため、英語への苦手意識を克服したいという目的の人が多く見られました。そんな不安を解消できるように、講座では「dry」や「sweet」など、なじみのあるわかりやすい英語で日本酒の説明がされています。

「完璧な英語で伝えなきゃ」と縮こまるより、まずは身近な単語からでも話してみること。それが、英語で日本酒の魅力を伝える第一歩かもしれません。

(文/SAKETIMES編集部)

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