日本酒を知る

日本酒を楽しむ

日本酒を考える

特集

純米酒専門店店主のひやおろしについての考察

> > > 純米酒専門店店主のひやおろしについての考察
このエントリーをはてなブックマークに追加

日本酒好きが高じて、大阪天満で『純米酒専門店 酒肴屋かわむら』の店主で、SAKETIMESで外部ライターをやらせていただいてる川村です。

私の持論や店での提供をなるべく専門用語を使わず、分かりやすいように書かせていただいています。今回は、今が旬の「ひやおろし」を私の持論で伝えさせていただきます。

日本酒の旬は秋

私の持論ですが日本酒には旬があります。
その旬は「秋」だと思っています。

日本酒は一般的には、2回火入れをしたお酒なのです。
秋が深まったころから酒造りが始まり、春先に絞って火入れをして蔵で落ち着かせ貯蔵して熟成させて、秋に出荷前にもう1度火入れをして出荷します。

これが一般的な日本酒です。

ただ、現在は冷蔵技術が発達したので各家庭や酒販店さんに普通に冷蔵庫が普及しています。
流通するときですら冷蔵車があり、低温のまま運ぶことができるようになっています。

そのおかげで、冷たく冷やして飲む冷酒が出てきて昔は蔵でしか飲めなかった火入れのしていない「生」の日本酒も楽しめるようになりました。

そう考えてみると冷酒が頻繁に飲まれ出したのは、まだほんの50年ぐらいじゃないでしょうか?
だって冷蔵庫がないでしょ。
もちろん冬場勝手に冷たくなってる。
夏場は冷たい川で冷やすことは出来ると思いますが・・・
(次回は「いつから飲まれてる?」といった内容で書いてみたいと思います。)

 

火入れってなに?
カンタンに言うと、日本酒は生モノです。
お刺身と同じです。そのままだとすぐ傷んでしまいます。
そこで、酵母の動きを止めて雑菌の繁殖を防ぐため60~65度ぐらいで15分程度の湯煎で加熱殺菌するのです。

鉄製の管でできている熱交換器を通す場合や、手間が掛かりますが一升瓶に入れて瓶ごと湯煎をする場合などもあります。

その火入れをしたものを搾る貯蔵前と出荷前の2回するのが一般的な日本酒です。

「ひやおろし」はその2回目の火入れをしないのです。
安定して熟成させるために、春先に絞ったお酒を火入れして夏の暑い時期を、ひんやりとした蔵で程よく熟成させます。そして旨味が増しておいしくなったころ、外と蔵の温度が同じぐらいになった秋口に熟成した風味をそのまま楽しむため
2回目の火入れをせず出荷するお酒のことです。

一応、一部の酒造組合や協会では9月9日が解禁日となっています。

なぜ?9月9日なの???日本酒と節句との関係

9月9日は重陽の節句です。
節句は年中行事を行う季節の節目です。
桃の節句や端午の節句や七夕は知ってるけどあと2つは?知らない人もいると思いますので超簡単に説明させていただきます。

・1/7 人日(じんじつ) 七草の節句
「人日」とは「人の日」と言う意味です。
あまり聞きなれない言葉ですがカンタンに言うと「七草粥」を食べる日です。
七草粥を食べて1年の豊作と無病息災を願います。

・3/3 上巳(じょうし) 桃の節句
3月の最初の「巳(み)の日」という意味です。
桃の咲く頃なので、桃の節句です。自然の生命力をもらって厄災をはらいます。

・5/5 端午(たんご)  菖蒲の節句
5月最初の「午(うま)の日」という意味です。
軒先に菖蒲(しょうぶ)やヨモギを挿し(軒先の上に乗せる?吊るす?)、
チマキやカシワモチを食べて邪気をはらいます。

・7/7 七夕(しちせき) 笹の節句
7月7日の夕方を意味しています。簡単にいうと「たなばた」ですね。
昔から笹は邪気をはらうといわれてきました。また、そうめんを食べる日とも言われています。

・9/9 重陽(ちょうよう) 菊の節句
菊を用いて不老長寿を願うことから「菊の節句」といわれています。
9という数字は奇数で一番大きい数字ですので、この9が2つ重なる日は
非常にめでたいとされています。菊を入れて菊の香りがする菊酒を飲んで
邪気を払って長命を願います。

9月9日が解禁日になったのは菊酒からきたのかな?
秋が旬の食材も出てくる頃だからかな? と私は解釈しています。

ひやおろしではなく夏の名残酒

sake_g_thinking_of_hiyaoroshi1 (1)

しかしまだまだ認知されていないのと、強制力がないため8月の下旬にでまわる「ひやおろし」も多く見かけます。

その時期はまだまだ残暑が厳しく暑いはずです。
9月9日も年によっては残暑が厳しいかも知れません。
暑い時期に出るのはひやおろしの定義に当てはまっていないため、私の考えでは「ひやおろし」ではなく『夏の名残酒』です。

私個人的には10/1が日本酒の日だから、その日がいいと思うのですが、販売戦略上の事情があるのではないでしょうか。

蔵元さんは、出来たお酒は早く売りたいと思うはずです。
だって、手元に置いていると売上がないからです。
熟成の期間が長ければ長いほど、多くの場所が必要です。
さらに、よほど大きな組織でない限り資金繰りが大変だと思うのです。

酒販店さんも同じだと思います。
また、私なら他の酒販店さんが売る前に先に売りたい。

年末や新春にでる「あらばしり」が出る前に売り切りたい。

sake_g_thinking_of_hiyaoroshi2 (1)
全然別のお酒なのですが、あらばしりを売ってるのに横にひやおろしが並んでいたら、売れ残りって気がする人もいるのではないでしょうか?

飲食店さんは、秋の新メニューにひやおろしを載せたい。販売戦略上の理由があるのですね。

個人的にはひやおろしは、せめて9月9日以降に出してほしいです。

私は解禁日は10/1だと思っていますので、私の店では10/1に9月以降に瓶詰したひやおろしを提供しています。
(もちろん私の手元で育てた昨年以前のものも提供します)

早く飲みたい!
早く売り切ってしまいたい!
提供側も飲み手側も季節のお酒ですので、季節感を大切にして楽しんでいただけたらと思います。

今回も最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
あなたの日本酒ライフのひとつに加えていただければ幸いです。

【関連】日本酒の「辛口」に関する考察 その1
【関連】日本酒の「辛口」に関する考察 その2
【関連】日本酒の「辛口」に関する考察 その3

日本酒の魅力を、すべての人へ – SAKETIMES

このエントリーをはてなブックマークに追加

ライター募集中!

川村 道宏

純米酒専門店 酒肴屋(さかなや)かわむら店主『タバコを吸う人がいない安心を、あなたへ約束します』をコンセプトに 「非喫煙者限定」「会員制」「予約営業」「1日1組」で純米酒と懐石料理を提供する。日本酒の新しい楽しみ方の提案を執筆中。