みなさまこんにちは。ライターの片桐新之介(利酒師・焼酎利酒師)です。

「辛口?甘口?日本酒の味の表現とは?①『辛口』の意味と表現」の続きの記事です。今度は「甘口」の表現について考えてみたいと思っております。

●『甘口』ってなんだろう

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デジタル大辞林によれば、「甘い」が意味するものは
1 砂糖や蜜(みつ)のような味である。「あっちの水は苦(にが)いぞ、こっちの水は―・いぞ」→五味(ごみ)
2 塩けが少ない。辛くない。「味つけが幾分―・かったようだ」⇔辛い。
3 口当たりが穏やかで、刺激が少ない。酒の味などにいう。「―・いワイン」⇔辛い。
ということですが、
日本人の考えるお酒の甘口は、食べ物に関わる甘い、すなわち砂糖や蜜の甘さを考えているところが大きいのではないでしょうか。

では、甘い、という言葉から連想する食べ物のことを考えてみましょう。
果物系・・・いちご、バナナ、メロン、マンゴー、ラフランス
爽やかな、というイメージを与えます
菓子系・・・キャンディー、チョコレート、ソフトクリームなど。ケーキもですね。
どちらかというと果実系が持つ「甘い」イメージより、濃厚なイメージがあります。クリーム系、糖蜜系の甘さが頭に浮かびます。
食べ物系・・・蜜、かぼちゃ、さつまいも、豆、餅、肉・魚の脂部分

どれも確かに甘い、という表現に当てはまるものですが、本来の日本酒の甘口の味を表現するものに近いものといえば、お餅やかぼちゃや豆由来の甘さに近いような気がします。キャンディなどを連想させる日本酒もあると思いますが、直接的な糖分(菓子など)というより、野菜や穀物系から感じられる甘さが日本酒の表現に近い感じがしますね。

 

●甘口は様々な香りにも関わる

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もちろんこれだけでなく、果実系の甘さも非常に重要です。特に吟醸酒に含まれる香り(吟醸香)には、カプロン酸エチルなどの成分が含まれており、これがりんごや果実などの香りを感じさせます。「甘いけど爽やかで飲みやすい」という感想をいただくお酒は多くがこの吟醸香によってもたらされているのではないかと考えています。

 

●甘口の持つイメージ

では、甘口というイメージはどのように「受け入れられて」いるのでしょうか。私がこれまでに店頭などで経験したところから言うと、『甘ったるい』『濃い』というイメージもありますが、それ以前に『酒飲みの好む味ではない』という評価をしている人が非常に多いと感じています。
もちろんそうではなく、「やわらかくて刺激の少ない」ということでもあるので、きりっと引き締まった味わいとの対極にある表現、ということがどう伝えられるか、接客販売では非常に骨を折りました。

 

●「甘口」の伝え方を考える

橘倉酒造・井戸水

先ほどの「口当たりが和らかい」「穏やかな味わい」ということをまずイメージしてもらえる言葉が重要なのではないかと考えます。ただ吟醸香からくる「甘い香り」「爽やかさ」と口当たりは別です。甘口を表現するときに難しいのは、果実系のような甘さを持つ日本酒、濃厚な甘さを持つ日本酒とが違うことをいかにイメージさせていくことができるか。最低でもこの2つのタイプの「甘口」日本酒の味を表現できればと思います。

 

来月以降は、「辛口を英語で表現すると?」「甘口を英語で表現すると?」「辛口に変わる表現とは?」・・・などと、半年ほどにわたって、この問題について月1回考えていきたいと思います。時折、辛口や甘口への表現方法について少しづつ新たな表現方法のしようについて考察も織り交ぜていきます。
それではまた来月。皆様からのたくさんのご意見お待ちしております。

 

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