宮城県の7酒蔵が結成したユニット「DATE SEVEN(ダテ セブン)」。ついに3年目のお酒が都内で発表されました。

「DATE SEVEN」が挑戦するのは、造りの工程を各蔵で分担して1本のお酒を仕込むという試み。できあがったお酒はユニットの名前にちなんで、毎年7月7日に発表しています。

3年目のテーマは「生酛造り」

1年目は純米大吟醸酒2年目はスパークリング酒を発売しました。そして3年目は、生酛造りの純米大吟醸酒。今年の造りは以下のように作業を分担しました。

  • リーダー蔵(酒造りを行なう場所の提供と仕込み全体の管理):萩野酒造(佐藤曜平さん)
  • 精米担当:新澤醸造店(新澤巌夫さん)
  • 酒母担当:墨廼江酒造(澤口康紀さん)
  • 原料処理担当:山和酒造店(伊藤大祐さん)
  • 麹担当:川敬商店(川名由倫さん)
  • 醪担当:仙台伊澤家勝山酒造(伊澤平蔵さん)
  • 搾り担当:寒梅酒造(岩崎健弥さん)

左から川名さん、伊藤さん、新澤さん、佐藤さん、岩崎さん、伊澤さん、澤口さん

今回のハイライトは、なんといっても生酛造り特有の工程「酛摺り(もとすり)」でしょう。酛摺りは、蒸し米を適度に摺り潰すことで糖化を促進させるための作業。厳寒の2月中旬、全員が早朝から萩野酒造(栗原市)へ集合し、酛摺りに取り組みました

意外なことに、メンバーのうち6人が初体験だったという酛摺り。そのなかで唯一経験があったのは、伊澤さん。

「ずっと昔に一度だけ、生酛のお酒を造ったことがありました。ただ、当時の技術ではもっさりとした仕上がりになってしまい、うちの目指す酒質とは違うということでやめてしまったんです。しかし近年、技術の向上によって、生酛や山廃のお酒でもクリアで綺麗な仕上がりになると聞いていたので、初体験の気分で臨みました」

酛摺り後の酒母造りを担当した澤口さんは、納得の表情を浮かべます。

「酛摺りは思った以上に重労働でした。江戸時代の酒がすべて生酛造りだったと思うと、さぞかし蔵人は大変だったでしょうね。生酛造りは初めてだったので、みんなに迷惑をかけてはならないと緊張しました。それでも、萩野酒造の蔵内にいる自然の乳酸菌を順調に呼び込むことができたと思います。酒母タンクの表面が独特の面構えになり、特徴的でフルーティーな香りが漂っていました」

酒造りの根幹となる麹造りを担当した川名さんは、次のように語ってくれました。

「麹室で蒸し米に種麹(もやし)を振る作業は、萩野酒造さんの流儀に挑戦したんです。いちばん驚いたのは、種麹を振る高さの違いでしたね。うちの蔵は肩ぐらいの高さから振るのですが、萩野さんはわずか30センチの高さから。まんべんなく振るのにとても苦労しました。それでもなんとか最低限の仕事はできたと思います。みんなのおかげでお酒は良い仕上がりでした」

今年のリーダー蔵になった萩野酒造では、生酛と同じく蔵内に存在する自然の乳酸菌を育成する、山廃のお酒を造っています。今回の生酛造りでは同蔵に自生する乳酸菌を取り込むことになるので、できあがる酒質もふだん造っている山廃のお酒と似てくるのではないでしょうか。

佐藤さんはその点について「うちの山廃と似た、綺麗なお酒ができあがりました。みなさんにも喜んでもらえると思います」と、話します。リーダーとしての役目を果たすことができて安堵している様子でした。

7月7日午後7時に乾杯!

東京・大手町にて行われた発表会。7月7日午後7時ちょうどに参加者全員で乾杯をしました。

生酛のお酒にしては酸味が抑え目で、ヨーグルト系のまろやかな酸味が甘味や旨味とバランスを取りながら調和して、爽やかで飲み飽きない酒質です。発表会に集まった日本酒ファンの方々も、満足そうな笑みを浮かべながら、蔵元たちとの談笑を楽しんでいました。

◎「DATE SEVEN 2017 生酛 Episode Ⅲ」

  • 原料米:美山錦
  • 精米歩合:33%
  • アルコール度数:16度
  • 日本酒度:+3.5
  • 酸度:1.6
  • 価格:720ml 2,160円(税込)

(取材・文/空太郎)

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