宮城県の7酒蔵が結成したユニット「DATE SEVEN(ダテ セブン)」。彼らが挑戦しているのは、造りの工程を各蔵で分担して1本のお酒を仕込むという試みです。

完成したお酒はユニットの名前にちなんで、毎年7月7日に発表されます。1年目は純米大吟醸酒2年目はスパークリング3年目は生酛(きもと)の純米大吟醸酒。4年目となる今年は、食用米「ひとめぼれ」を33%まで磨いた純米大吟醸酒に挑戦しました。

「DATE SEVEN EpisodeⅣ 純米大吟醸」の説明パネル

第4シーズンのテーマは「ひとめぼれ」を使った純米大吟醸酒

今年の造りは以下のように作業を分担しました。

酒造りを行う場所の提供と全体の管理を務めるリーダー蔵は、川敬商店が担当することになりました。今年の全国新酒鑑評会で金賞を獲得し、秋田県の高清水御所野蔵とともに15年連続受賞の新記録を樹立した蔵です。

大吟醸酒を得意とする蔵だからこそ、今回は難易度を高く設定し、食用米のひとめぼれを33%まで磨いた純米大吟醸酒を造ることにしました。川敬商店の出品酒が40%精米であることを考えると、大きな挑戦といえるでしょう。

宮城の7酒蔵による有志ユニット「DATE SEVEN」のメンバー

左から佐藤さん、伊東さん、伊澤さん、川名さん、新澤さん、澤口さん、岩崎さん

各蔵の担当者は、今年の酒造りについて次のように話してくれました。

新澤醸造店 新澤巌夫さん(精米):
「今シーズンは米の品質がいまいちで、割れやすい傾向がありました。そのため、精米機をゆっくり回して、慎重に米を磨いていきました。手間と時間がかかりましたが、納得のいく出来になったと思います」

萩野酒造 佐藤曜平さん(原料処理):
33%まで磨いた米はとても小さいので、慎重に扱いました。少量の米で水の吸い具合を見てから、本番に取り組みました。蒸しの際も常に様子を見ながらタイミングを図ったおかげで、狙いどおりに外硬内軟の蒸米に仕上げることができました」

墨廼江酒造 澤口康紀さん(麹):
「川敬商店の人たちといっしょに作業をして、麹造りの作業でさえ、洗米の限定吸水のようにストップウォッチを使うような厳密な時間管理をしていて驚きました。麹室が広く作業しやすかったので、思ったとおりの麹になったと思います」

仙台伊澤家勝山酒造 伊澤平蔵さん(酒母):
「全国新酒鑑評会の金賞を連続で受賞し続けている川敬商店の造りをフィードバックすることが目的でした。勝山酒造の流儀で進めるのではなく、川敬商店のやり方を尊重して良好な酒母を造りました。川敬商店のやり方には、細部にまでこだわりが詰まっていて、とても参考になりました」

寒梅酒造 岩崎健弥さん(醪):
「データを事前に送ってもらい、今年の米は溶けやすく雑味が出やすい傾向にあることがわかったので、水を多くして酵母が活動しやすいように配慮しました。寒波が過ぎたので冷えすぎる心配はありませんでしたが、大吟醸造りなので、温度管理には細心の注意を払い、搾りの担当にバトンを渡しました」

山和酒造店 伊東大祐さん(搾り):
「醪の終盤の成分と面(つら)を見ながら、搾りの候補日を徐々に絞りこんで、ベストな日を決めました。大吟醸酒に使う香りのよく出る酵母は発酵力が弱く、搾りのタイミングが一日ずれるだけで、それまでの努力が台無しになることもあります。念には念を入れて、搾る日を決定しました」

挨拶をする「DATE SEVEN(ダテ セブン)」リーダー蔵・川敬商店の川名由倫さん

リーダー蔵になった川敬商店の川名由倫さんは、今回の造りを次のように振り返ります。

「今季は蔵の大黒柱である父の体調が悪く、私も蔵人たちも不安いっぱいでした。『そんな年にリーダー蔵を務めることになるなんて!』と恨めしく思うこともありましたが、先輩たちが未熟な私を支えてくれたおかげで、食用米を使った純米大吟醸酒を造り上げることができました。

できあがったお酒は、ひとめぼれらしい柔らかな甘味が感じられます。そして、純米大吟醸酒の清らかさや瑞々しさ、キレの良さを楽しめる酒質になりました。香り高いですが、料理の邪魔をしないタイプなので、ゆっくりと楽しんでいただきたいです」

毎年恒例!7月7日午後7時に乾杯

乾杯をする宮城の7酒蔵による有志ユニット「DATE SEVEN」のメンバー

例年通り、7月7日にお披露目会が行われました。今年の会場は、6月にオープンしたばかりの「はせがわ酒店 日本橋店」です。事前に注文したお客さんには、同日の19~21時に手元へ届くように配達され、七夕の夜に各地で「DATE SEVEN」の完成を祝う乾杯の声が上がったことでしょう。

「DATE SEVEN EpisodeⅣ 純米大吟醸」のパネル

実際に飲んでみると、33%まで磨いた純米大吟醸酒にしては、軽快ながらも魅惑的な旨味を秘めた可憐な味わいでした。2杯、3杯と飲みたくなるような仕上がりです。みなさんも、4季目となった「DATE SEVEN」の出来栄えを、ぜひ確かめてみてください。

◎「DATE SEVEN EpisodeⅣ 純米大吟醸」

  • 原料米:ひとめぼれ
  • 精米歩合:33%
  • アルコール度数:16度
  • 価格:720ml 2,700円(税込)

(取材・文/空太郎)

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