こんにちは、日本酒指導師範&酒伝道師の空太郎(くうたろう)です。

本日は宮城県の7つの酒蔵が新ユニットを結成したので、ご紹介したいと思います。

その名も「DATE(ダテ)SEVEN(セブン)」です。

伊達藩=宮城で酒造りをしている勇者7人との意味を込めています。7人が酒造りの工程を分担して受け持ち、一緒に美酒を造るという企画で、今年スタートしました。

セブンにひっかけて、1年目のお酒のお披露目は7月7日に設定。

当日は都内で大々的に発表会も催され、酒好きの注目を集めました。

彼らは受け持ちを変えながら、毎年いろいろなスペックのお酒造りに挑戦し、宮城のお酒の存在感を全国に強烈にアピールしようとしています。

ユニットに参加しているのは次の7人です。

・仙台伊澤家勝山酒造(仙台市)の伊澤平蔵さん=奥右から2人目

・墨廼江酒造(石巻市)の澤口康紀さん=奥左から2人目

・新澤醸造店(大崎市)の新澤巌夫さん=奥左端

・山和酒造店(加美町)の伊藤大祐さん=手前中央

・萩野酒造(栗原市)の佐藤曜平さん=奥右端

・寒梅酒造(大崎市)の岩崎健弥さん=手前右

・川敬商店(美里町)の川名由倫さん=手前左

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7人は20代から50代まで幅広い世代で構成されており、他の県で結成されている酒蔵ユニットのほとんどが同世代の仲間たちであるのとは一線を画しています。

ちょっと不思議に思い、その点を伺うと、

宮城県は蔵元たちが世代を超えて非常に仲がいいんです。お互いにフラットになんでも言い合える雰囲気があります。酒造組合の委員長職なども、誰が適任かを優先して考え、若いからダメとはなりません。今回も全く違和感がないままユニット結成に至りました」(伊澤さん)とのことでした。

DATE SEVEN結成の経緯

ユニット結成の話が持ち上がったのはまさに偶然でした。

昨年(2014年)9月に佐藤さんが、「造りが始まる前に情報交換でもしませんか」と県内の蔵元さんに声を掛け、たまたま都合がよくて参加したのが今回の7人だったのです。

仙台市内で酒を飲みながらいろいろな話をしているうちに、「宮城は純米酒率でも日本一だし、いい酒を造っているのにいまひとつ地味。秋田のNEXT5(ネクスト・ファイブ)みたいな目立つことはできないだろうか」という話になりました。

ちなみにNEXT5とは秋田県の新政酒造、秋田醸造、福禄寿酒造、栗林酒造店、山本(合名)の5蔵が2010年に結成した酒蔵ユニットで、毎年5蔵が協力して話題作となる酒をリリースして、全国的に話題をさらっている先端グループです。

同じ東北地方で以前から7人も気になっていたようでしたので、「そうだそうだ。我々もやろう。マネでも構わない」と一気に盛り上がってしまったのです。

「これも何かの縁だから、7人でユニットを作ろう」

と決まり、名前も「宮城県は元伊達藩。その7人だから」とすんなり、「DATE SEVEN」に落ち着いたのでした。

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そして、「複数の蔵が1つのお酒を造るという趣旨はNEXT5と同じだから、こっそり始めるよりも、俺たちも真似してやるぞと内外に宣言した方が楽しい。」

ということになり、酒造りに着手する前の1月下旬に澤口さん、新澤さん、佐藤さんの3人が秋田まで足を運んでNEXT5に挑戦状をたたきつけたのでした。

そうはいっても、実際はお土産持参で挑戦状を渡し、ついでに酒蔵見学もさせてもらうという友好的なものだったそうです(笑)。

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酒造りの分担は次のようになりました。

リーダー蔵(醸す場所と仕込みの全体管理)=伊藤さん

精米=新澤さん

原料処理=岩崎さん

麹造り=佐藤さん

酒母造り=川名さん

醪管理=澤口さん

上槽(搾り)=伊澤さん

精米は担当した新澤さんの蔵でやりましたが、残る作業はすべて伊藤さんの蔵で行いました。
担当ではない方々もその都度集まって、熱く意見交換をして、相互に技術研鑽も図りました。

 

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お酒に使用したお米は宮城県産の蔵の華(くらのはな)。

今回リーダー蔵となった山和酒造店は、昨年の「SAKE COMPETITION」という大品評会の純米大吟醸部門で全国1位を獲得していることから、純米大吟醸酒を造ることに。

しかも、40%精米ではありきたりなので、さらに磨いて、各蔵が未体験なゾーンに設定しようと、33%精米に決まりました。酵母は宮城県産業技術総合センターに頼んで、既存の酵母に手を加えて、特別な酵母を提供してもらい、「DATE SEVEN酵母」と命名しています。

2月から作業に入り、3月の上旬から仕込み開始。4月上旬に完成して上槽しました。

その後、早めに火入れ殺菌を1度して、全量瓶詰(一升瓶と四合瓶)、冷蔵保管に入りました。

各蔵は蔵の華というお米は普段から使い慣れているものの、33%磨きというのは初体験の方々が多く、いろいろな意味でチャレンジだったそうです。

各蔵のみなさんのDATE SEVEN造りの感想

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以下、皆さんの感想です。

精米の新澤さん

「蔵の華は硬いので削りやすいが、やはり慎重になりました。いい磨きができたと思います。」

原料処理の岩崎さん

「精米がしっかりしているので、やりやすかった。普通ここまで磨くとお米が水を吸いやすくて気を使うが、蔵の華はゆとりがあり、狙った通りでした。」

麹造りの佐藤さん

「蒸し上がったお米がいい感じだったので、33%精米のお米だということをあまり実感せずにスムーズにいけた。麹菌(もやし)を振る量には気をつかい、少な目にしたところ満足のいく突き破精になりました。」

酒母造りの川名さん

「蔵に戻って3年目で、今季初めて酒母担当になったばかりなので、大丈夫かな、と不安もありましたが、各蔵の技術のおかげでうまくいきました。」

醪管理の澤口さん

「33%の醪は初めてなので、酵母の活動具合が心配だったが、発酵は順調にいった。櫂入れをしても軽快でいい感じでした。」

上槽の伊澤さん

「目的とした酒質ができた。お互いに意見交換をしながら、実験的なこともして、その結果として搾ったお酒は次世代型の酒質で、うちの蔵でも造りたかったレベル。若い飲み手に受け入れられる酒質だと思う。1年目だけど、100点満点。」

リーダーの伊藤さん

「3月は気温が上がる日もあるので、温度管理には非常に気を遣いました。うちは仕込み部屋に空調設備がついていないので、氷もたっぷり使ってなんとかコントロールできたと思います。」

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仕込みタンク2本で実施しました。

搾ったお酒の味は、「2本とも寸分たがわず、見事に一緒のものになりました。再現性のある酒造りを目指していたので、納得でした。我々の技術力に自信が持てました。」と一同、満足そうでした。

7月7日に代官山にてお披露目会

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搾ったお酒は瓶の中で少し落ち着けて出荷する方がいいと考え、発表はSEVENにちなんで7月7日に決まりました。

そして、DATE SEVENの活動を紹介した雑誌のメトロミニッツさんの協力で、7日の夜、渋谷区で大々的なお披露目パーティーが催され、200人以上の日本酒好きが集まって、ユニットの門出を祝いました。

当日は、最初に各蔵自慢のお酒を楽しんでもらい、会の半ばでDATE SEVENを発表するという趣向でした。

お酒のラベルは青地に金色の7(SEVEN)の文字と、7蔵を連想させるカラフルな7色の糸が流れる斬新なものでした。

糸は各蔵のテーマカラーになっていて、当日は7人がその色と同じネクタイやポロシャツ、スカーフなどを身に着けて、パーティーを盛りあげていました。

お酒のお味は・・・?

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肝心のお酒の味は、というと、香りは謙虚に、味わいの背後に流れる程度に。甘さは抑えて、米の旨味がたっぷり前面に出ています。酸味や渋味が強いわけではないものの、後半のキレはとてもよく、飲んだ後の爽快感が印象的な仕上がりでした。

33%の純米大吟醸らしからぬ意欲的な作品でした。

DATE SEVENは、7蔵が取引している全国の酒販店で販売されています。一升瓶4000円、四合瓶2000円で、33%精米の純米大吟醸酒としてはとても割安だと思います。

皆様も是非、飲んでみてください。

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DATE SEVENは来季以降も、担当をローテーションしながら、7年間、次々と単独の蔵では難しい新しいチャレンジを重ねながら、日本酒好きを唸らせる作品を提供していくそうです。

彼らの活躍で宮城のお酒がもっともっと全国的に広がるといいですね。

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