猛暑が続いた平成最後の夏。暑さが少しずつ和らぎ、秋の気配が感じられるようになりました。

秋になると出回り始める旬の日本酒「ひやおろし」。ひやおろしとは、春に搾った日本酒を秋まで熟成させてから出荷する酒のことです。

また、一般的な日本酒は、火入れと呼ばれる加熱殺菌を2回行ないますが、ひやおろしの場合は、酒の質が変化してしまわないように行なわれる貯蔵前の1回のみ。2回目の火入れをせず、「ひや」の状態で「卸す」ことから、「ひやおろし」と呼ばれるようになったようです。

ひやおろしの特徴は、半年間の熟成を経て、深くまろやかになっているその味わい。そのため、秋が深まっていくこれからの時期にぴったりな日本酒です。

今回は、ひやおろしを味わう際のポイントを3つ、紹介します。

その1:秋の味覚とともに味わう

最初のポイントは「秋の味覚とともに味わう」です。

さんまの塩焼きと燗酒

ひやおろしの特徴は、まろやかな飲み口と熟成を経た深い味わい。脂がのった秋の魚や薫り高いキノコ類などと相性が良く、これらと合わせることで、食材と酒、それぞれの旨味がより強く感じられます。

旬の酒と旬の食材をいっしょにいただいて、日本の四季を味わってみましょう。

その2:温度を変えてみる

2つ目のポイントは「温度を変えてみる」です。

ちろりと燗酒

日本酒を飲む温度帯には、それぞれ呼び名がついています。これは、日本酒の温度が、その味わいに深く関係しているため。飲む温度を変えることで、香りや味わいの変化をさらに楽しむことができます。半年間の熟成を経たひやおろしは、味わいがふくよかに感じられる燗酒に向いているものが多いのです。

同じ1本でも、冷蔵庫で冷やして、常温で、30℃程度の"日向燗"で、45℃ほどの"上燗"で......温度を変えてみると、また違った印象の一杯に出会うことができますよ。

その3:同じ酒蔵の日本酒と飲み比べてみる

最後のポイントは「同じ酒蔵の日本酒と飲み比べてみる」です。

全国各地の蔵元の菰樽

秋が旬のひやおろしは、たくさんの酒蔵から販売されています。かつては、酒を貯蔵する蔵と外の気温が同じくらいになるころから出荷され始めたようですが、現在はそれよりも少し早い9月初旬から、酒販店の店頭や居酒屋のメニューに並び始めます。

お気に入りの銘柄があれば、通年商品とひやおろしを飲み比べてみるのはいかがでしょうか。同じ酒蔵の日本酒を飲み比べることで、新しい発見があるかもしれません。

秋の到来を告げる「ひやおろし」。さまざまな楽しみ方で、旬の一杯を味わってみましょう。

(文/鈴木紗雪)

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