あれこれと美味しいものが出回る季節となりました。何を肴に晩酌を楽しもうか、愛飲家としては楽しみが尽きません。

秋の味覚といえば「きのこ」。現代では年間を通して流通していますが、朝夕の気温が下がる頃になると食卓に上がる、その風情も格別です。今回の料理は、その美味しさをごくシンプルに、それでいて滋味たっぷりに味わいながら、酒との相性を楽しもうという趣向です。

さっと煮るだけ、溢れる美味しさ

福島県の日本酒・奈良萬と、きのこをふんだんに使った鍋料理

食べ方にルールはありませんが、風情を楽しむなら鍋スタイルがおすすめです。

しいたけ、しめじ、エリンギなど、キノコが入った鍋

【材料】

  • きのこ類
    お好みのものをご用意ください。今回はシメジ、マイタケ、シイタケ、エノキ、キクラゲの5種類です。
  • 下記【つゆ】の材料

【つゆ】

  • 出汁:1カップ
  • 味醂:大さじ1
  • 酒:大さじ1
  • 醤油:大さじ1
  • 塩:少々
  • 大根おろし:お好みで

煮だったキノコ鍋と、大根おろし

作り方はシンプルです。キノコを食べやすいサイズに切ったら、鍋にキノコとつゆを入れて煮るだけ。煮立ったら、お好みでおろしを加えてどうぞ。大根が溶け込んだつゆは得も言われぬ美味しさです。

きのこの滋味を秋の酒が引き立てる

季節柄、ひやおろしを楽しみましょう。料理との好相性が特に期待できる旬の酒です。

一般的にまろやかな酒質と言われるひやおろし。今回のために選ぶなら、酸味や甘味のバランスが整ったタイプと縁がありそう。また、香りや口当たりが控えめなものが良いと思います。やわらかく深い出汁の香味やキノコの滋味と溶け合い、料理の美味しさを余すことなく引き出してくれそうです。

グラスに注がれた奈良萬と、そのボトル

そこで選んだのは、夢心酒造(福島県)の「奈良萬 純米ひやおろし」です。

グラスに注ぐと果実香がほんのり。穏やかですが、凛とした香りです。ひやおろしならではの複雑味、いえ、素材味を予感させる含み香とともに、口の中に混然と融和した酸味と旨味が馴染んでいきます。

鍋の出汁とは実に良縁。きのこの風味が香る出汁の美味しさを酒がたっぷりと引き出してくれています。きのこを食べてはひと口。酒はまろやかさを帯びて、旨味とともにほんのりと心地良い甘味を伝えてきます。

徳利から注がれた奈良萬

酒の温度を上げてみましょう。ぬる燗にすると、より一層まろやかな口当たりに。さらに料理との相性を高め、その美味しさを余すことなく引き出しているかのよう。温度帯を変えて楽しめるおもしろい酒ですね。多くの料理と楽しめそうな、お気に入りの1本になりました。

ちょっと遊び心が湧き、試してみたのが出汁割り。出汁をぐい呑みに少し取り、同量の酒を足して味わってみると、これが何ともオツな味。これぞ良縁の味わいというやつでしょうか。

(文:KOTA/編集:SAKETIMES)

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