和食に欠かせない大根おろし。料理に添えれば味わいがふくよかになること請け合いの、おなじみの食材です。特にこれからの時期は、焼きサンマの引き立て役に。旬を彩るその様は何とも食欲をそそりますね。
今回は、そんな脇役を主役にして美味しさを愛で、酒との相性を楽しもうという趣向です。
おろしが美味しい簡単小料理2品
ほんのり甘くて、でも何かしら郷愁を誘うようにほろ苦くもあり、まさに滋味と呼ぶにふさわしい味わい。そんな大根おろしに添えるなら、同じく滋味を感じられる食材がふさわしいでしょう。
どちらの料理も、作り方というほどのものはありません。材料はお好みの量を。あとは大根おろしを添えるだけ。
おろしやっこ
【材料】
- 木綿豆腐:食べやすい大きさに切る
※大根おろしの味が薄くならないように、豆腐は一旦ざるに上げるなどして水分を切っておくとよいでしょう。 - ぽん酢
- かつおぶし
器に盛り付けたら、かつおぶしを飾りぽん酢をかけて、好みで黒酢でもよいでしょう。大根おろしを身にまとい豆腐の旨みも際立つ一品です。
茄子の揚げびたし風
【材料】
- 茄子:1cmほどの輪切りにする
- 小ねぎ:小さく刻む
- めんつゆ:麺のつけつゆぐらいの濃さに
茄子を素揚げして温かいうちに盛り付け、小ねぎを飾り、めんつゆをかけます。油の浸みた茄子と大根おろしが実に良縁。まったりとしたうまみに箸が進みます。
瑞々しい大根の滋味を小左衛門の軽やかなうまみと
穏やかながら香りは清涼感に満ちジューシー。そんな大根おろしには香味すっきりとした酒が軽やかに溶け合いそう。今回はポン酢を使うこともあり、ならば吟醸酒が好かろうと考えました。
また、大根の滋味との相性をじっくりと堪能しつつ、その合間には酒そのものも、ゆるゆると味わいたい。晩酌をそんなテンポで過ごすなら、飲み飽きしないような軽やかに旨みを湛える酒が相応しい。
そんな思いで選んだ一本はこれでした。
冷やで晩酌を始めました。甘酸っぱい香りに迎えられひと口。さわやかな飲み口、甘味や素材を思わせる旨味がすっと口の中に広がります。キレの良さはほどほど、心地よい余韻が印象的です。
実はこの酒、原料は「あさひの夢」という食用米で造られています。大吟醸ですが、価格は1,200円(税別)とリーズナブル。晩酌愛好家にはうれしい限りです。それにしても酒造好適米でないものを50%にまで磨き上げる酒蔵のこだわりには感服するばかりです。
おろしやっことは期待通りに良縁です。ポン酢とともにフレッシュな香味の大根おろしとさらりと響き合います。また、酒のうまみは豆腐とも溶け合い、おろしやっこはじんわりと心が和むような美味しさとなりました。
酒をゆるゆると楽しみつつ、茄子をひとくち。油とめんつゆの風味が加わった大根おろしは自らの美味しさをふくらませ、これまた酒と縁が良い。
この料理を口にしての酒は、口当たりを少し辛口に変化させたように感じられます。おかげで茄子までさっぱりと味わうことができ、料理に合わせ相性を高めるポテンシャルの高さにも感心した次第です。
(文:KOTA/編集:SAKETIMES)