「獺祭」を醸す旭酒造株式会社は、7月1日より飲食店向けの限定酒「獺祭 純米大吟醸 夏仕込み しぼりたて」を発売しました。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、様々な業種が想像もしなかった状況に追い込まれたこの数ヶ月。飲食店や酒販店、そして酒蔵も大きな打撃を受けました。そんな中、「街のにぎわいを取り戻したい」と、飲食店を応援するための限定酒を販売することにした旭酒造。

万全の感染拡大防止策が取られたなか、銀座にある日本料理店「夢酒みずき」で行われた「獺祭 純米大吟醸 夏仕込み しぼりたて」のプレス向け試飲発表会では、新商品に対する想いが語られました。

街のにぎわいを取り戻すために

旭酒造4代目蔵元、桜井一宏氏

旭酒造 4代目蔵元・桜井一宏氏

旭酒造4代目蔵元の桜井一宏氏にお話をうかがいました。

「外出自粛期間中は蔵のある山口県にずっと居ました。最初のころは、会社で電卓を叩くような毎日で、免税店など外国人旅行者をターゲットとしたところは、99.5%の売上減という状況。そんな会社の売上のゆくえのことばかり考えていました」

しかし、このままではいけないと新たな取り組みを続々と始めます。

たとえば、若手社員で造る「クラフト獺祭」の発売。これは洗米から搾りにいたるまで、ひとつのタンクを2人1組の若手社員に任せて、技術力とモチベーションを向上させる取り組みです。

オンライン同時乾杯」では、日本と同じく外出自粛期間中だった中国と中継をつなぎ、オンライン同時乾杯のギネス世界記録に挑戦しました。

「お恥ずかしながら、実はちょっとしたミスで証拠映像がなくて、世界記録には認定されなかったんです」と笑う桜井社長ですが、楽しいことを考える時間になったといいます。

トークをする桜井社長

飲食店向けの限定酒「獺祭 純米大吟醸 夏仕込み しぼりたて」の発売も、新たなチャレンジのひとつです。

あわせて飲食店を応援するためのSNSキャンペーンも、2020年9月30日まで展開中です。これは飲食店で「獺祭 純米大吟醸 夏仕込み しぼりたて」を楽しんでいる写真を撮り、InstagramやTwitterから、ハッシュタグ「#街飲み獺祭」をつけて写真を投稿すると、抽選で毎週23名の方に「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」がプレゼントされるというもの。

飲食店限定の「獺祭 純米大吟醸 夏仕込み しぼりたて」を発売し、大盤振る舞いともいえるプレゼントキャンペーンを始めたのは、「街のにぎわいを取り戻したいという想いから」と、桜井社長は話します。

「社会の元気さを考えると、人がまばらな街並みはけっして良い状態とは言えません。人と人との触れ合いが少なくなっている現状に対して、少し寂しい気持ちがあったので、この企画を立ち上げたんです。街の飲食店は、活気や元気を共有していく場所ですから」(桜井社長)

出荷ごとに酒の味わいが変化する完全受注生産

乾杯の音頭をとる桜井社長

試飲発表会は桜井社長の乾杯で始まりました。直接、顔を見合わせながらの乾杯も久しぶりです。

「獺祭 純米大吟醸 夏仕込み しぼりたて」が発売できるのは、四季醸造ができる旭酒造だからこそ。通常、搾ったお酒は火入れをして出荷されますが、この商品は注文を受けてから搾り、瓶詰して、そのまま出荷される完全受注生産の商品です。注文は9月22日の出荷分まで毎週受け付ける予定です。

飲食店応援の想いが込められた限定商品のため、スペックは非公開。毎回搾るタンクが異なるため出荷ごとに酒の味わいも微妙に変わり、まるで蔵で「しぼりたて」を飲んでいるかのように楽しめそうです。

試飲発表会で提供された「獺祭 純米大吟醸 夏仕込み しぼりたて」は、まだ荒々しさが残っていましたが、フルーティーな香りとすっきりとしたさわやかな酸を感じます。口当たりは滑らかで、しばらくするとミルキーさが顔を出し、苦みと渋みでフィニッシュする味わいでした。

この日、お酒に合わせて提供された料理は、季節メニューの「鱧の白焼き」と「河豚の冷やし雑炊」です。

「鱧の白焼き」

「鱧の白焼き」は、しっかりとした塩気と焼いた皮目の香ばしさが絶妙です。梅が添えられることが多いですが、甘酸っぱいプルーンのアレンジがきいています。これがお酒のフルーティーな香りとよく合っていました。

「河豚の冷やし雑炊」

「河豚の冷やし雑炊」は、出汁がしっかり感じられる味付け。お米は、このイベントのために「獺祭」の原料米である山田錦を使っています。

山田錦は一般的な飯米よりも粘りが少なく粒が大きいため、雑炊にして水分を含んでも歯ごたえが残ります。お酒とお米の風味が繋がっていると実感できるペアリングでした。

人生を楽しむきっかけとなる酒を目指して

桜井会長

旭酒造 会長・桜井博志氏

旭酒造会長の桜井博志氏は、「都市にお返しをしなければならない」と話します。

「山口県の小さな酒蔵と言われていた当時、地元で売れずに泣きながら東京に出てきました。東京という市場がなければ『獺祭』は成り立ちません。だからこそ、都市にはがんばってほしいし、私たちができる形でお返しをしようと思います」

終わりが近づくと、桜井会長は「人生は楽しまなければなりません。こんな時代ですが、ブレーキをかけながらも、楽しむきっかけがつくれたらと思います」と締めくくり、イベントは幕を閉じました。

獺祭 純米大吟醸 夏仕込 しぼりたて

まだまだ収束が見えないコロナ禍のなか、飲食店では、入店制限やアルコール消毒、検温、換気の徹底など、感染防止策を徹底しながら営業を再開しています。

油断ができない状況ではあるものの、飲食店を通して、少しずつ日々の楽しみを取り戻していきたいですね。

(文/まゆみ)

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