東京・四ツ谷エリアで信州のお酒を味わえるイベント「大長野酒祭り」が7月16日(日)に開催されました。
四ツ谷の飲食店に長野県から50の酒蔵が集結し、参加者が町を練り歩きながら信州のお酒を楽しむというこの企画は今年で7年目。企画の発起人であり、運営を担っている「日がさ雨がさ」の店主・宮澤さんにお話をうかがいました。
何よりも気を付けているのは"安心"と"安全"
第1回は3店舗、17酒蔵という小さい規模からスタートしました。しかし、第3回には早くも45酒蔵、参加者1000人という大きなイベントに成長してきました。
この盛況ぶりに宮澤さんは「最初は、もっと大勢の方にイベントを知ってほしい、そして参加してほしいと思っていました。でも今は、個人での運営に限界を感じています。これ以上、酒蔵や参加者の数を増やす予定はありません」と語ります。
というのも、イベント開催にあたって、何よりも気を付けていることが"安心"と"安全"。
「トラブルも負担もなく四ツ谷をまわっていただき、信州のお酒を味わってほしい。それをいつも考えています」と、言います。
第7回となる今回は酒蔵50、飲食店28、参加者1100人。安全性を考えて決めた、限界ギリギリの規模だそうです。また、参加者が大汗をかきながら外でお酒を待っているのを見たことや飲食店の負担を考慮して、開催時期を8月ではなく7月の連休中に前倒ししました。
さまざまな配慮が散りばめられた、今年の「大長野酒祭り」。盛り上がりはどうだったのでしょうか?
それぞれ好みのお店に集合!
四ツ谷に到着すると、参加者のみなさんは待ってましたとばかりに、お気に入りの酒蔵や常連の店舗を目指していきます。
飲み歩きになれているのか、ストラップ付きのお猪口や枡を持っている人も多く見かけました。「あれ、自分のお猪口がない。どこいったっけ?」ということも珍しくありませんからね。
各店舗がそれぞれおつまみと日本酒をたっぷり用意し、準備万端。蔵元も参加者たちを迎える心構えをしています。
「本金」(酒ぬのや本金酒造/諏訪市)
「アルプス正宗」(亀田屋酒造店/松本市)
「和田龍登水」(和田龍酒造/上田市)
「井筒長」(黒澤酒造/南佐久郡)
黒澤酒造は、今年からはじめて取り組んだ酒造好適米「金紋錦」を使った、生酛造りのお酒を持ってきていました。甘くて酸っぱくて、いろんな味が含まれているお酒。黒澤酒造が醸してきたこれまでの生酛とは違った味わいで、これからどう変化していくのか楽しみな一本です。しかし現在、発売は未定とのこと。
「白馬錦」(薄井商店/大町市)
薄井商店が持ってきていた「白馬錦」は、蔵では初めてとなる生酛造りに挑戦した1本。ラベルが完成していなかったそうで、とりあえず仮の銘柄をプリントアウトしてきたのだとか。むしろこちらの方がプレミアかもしれません。
「菊秀」(橘倉酒造/佐久市)
橘倉酒造はリニューアルした前掛けをアピール。
「明鏡止水」(大澤酒造/佐久市)
大澤酒造は燗酒も用意していました。夏にも熱いお茶を飲むように、暑い時期の燗も良いものですよ。特に「垂氷」はぬる燗がおすすめです。
最後の乾杯をどこで、どのお酒で迎えるか
イベントも中盤になってくると、参加者のみなさんはすっかり陽気な雰囲気に。友人同士はもちろんのこと、当日知り合った方々とも楽しく会話をしていました。
なかにはイベント当日が誕生日という男性もいたようです。他の参加者から「おめでとう」 と声をかけられるだけでなく、店主のはからいでハッピーバースデーの合唱が始まる場面も。
酒造好適米の食べ比べができるコーナーも設置されていました。
米農家の多い信州では、地元特有の酒造好適米もつくられています。信州の酒米を知ってもらうのと同時に、食べてみたときの味はどうなのかを体験してほしいとのこと。この企画は長野県酒造組合の協力で実現したのだとか。
参加者から「まずくはないですよ」という声が上がりましたが、美味しいという反応はほとんどありません。実際に食べてみると、酒米と食用米の違いがよくわかりました。
後半にさしかかると、最後の乾杯をどの店で、どのお酒で迎えるかという話題が持ち上がります。
「はじめて飲んだお酒でしたが、美味しかったから戻ってきました」なんて声が聞けると、蔵元も飲食店の方もうれしいですね。
最後は、店内の全員で「かんぱーい!」と、大盛り上がり。
「楽しかった」「美味しかった」などと感想を言い合いながらお店を後にしていました。
「大長野酒祭り」は今年も大盛況!
今年は、太陽もイベントを歓迎しているのではないかと思うほどの大晴天。7月開催にも関わらず驚きの暑さで、参加者もスタッフも「暑い暑い」と連呼して汗をかいていました。それでも、みんな笑顔なのは変わりません。
宮澤さんが気にかけていた、イベントの"安心"と"安全"はしっかりと守られた様子。事故無く無事に終えられた上に、参加者のマナーも良かったと思います。道端で騒いだり、ポイ捨てをしたりする人もなく、終了時間にはみなさんしっかりお店を出ていました。
「チケットは購入者の顔が見えるように販売しています。必ず、参加店舗のどこかで直接購入してもらうんですよ」
これが功を奏しているのでしょう。お店の常連はもちろん、はじめての参加でも常連に連れて来てもらった人なら、スタッフも安心ですね。万が一の事態を未然に防ぐことで、トラブルは最小限で事故も無し。安心して参加できますね。
宮澤さんは18歳まで、長野県千曲市で過ごしました。その後、飲食店で働くことで日本酒に携わるようになってから郷土愛に目覚めたのだとか。信州への愛がこれほどまでに大きく発展していったのは、宮澤さんの底力はもちろん、同じように信州を愛する方々の連鎖反応があったからかもしれません。
四ツ谷と信州を繋げた、見事なイベントでした。
宮澤さんは「実は、毎回これで最後にしようと思っているんですが......飲食店や蔵元、そして大勢の参加者に声をかけられて、結局毎年続けているんですよね」と、苦笑い。
「今後は単なる"信州のイベント"ではなく、『日本酒』『地域』『蔵元』のイベントとして、質を上げていきたい」と、抱負を語ってくれまました。来年はさらに質の高いイベントになると確信しています。
(文/まゆみ)