「お酒の神様」を祀ってるとして、全国の酒蔵が安全醸造を祈願するために足を運ぶことで有名な京都市にある松尾大社。この酒の聖地で、2019年4月7日(日)に「第6回 酒-1 グランプリ」が開催されました。
日本酒の品評会は「全国新酒鑑評会」や「SAKE COMPETITION」など数多くありますが、そのほとんどは選ばれた審査員の投票で決まるもの。一般の飲み手の投票だけで決まる「酒-1グランプリ」は珍しい存在です。
投票するのは、日本全国から集まった日本酒愛好家たち
第6回となる今大会は、全国各地から50蔵が参加(投票対象は49蔵)。当日集まった日本酒愛好家たちが「ひとり1票」でお気に入りの銘柄を決め、有効投票数948票をもとに順位が決まりました。
第5位は「土田」を醸す群馬県の土田酒造と、「AKABU」を醸す岩手県の赤武酒造。第4位は「くどき上手」を醸す山形県の亀の井酒造。第1回のグランプリ蔵です。
第2位は同数で「紀土」を醸す和歌山県の平和酒造と、「五紋神蔵」を醸す京都府の松井酒造でした。平和酒造は第3回、松井酒造は第4回のグランプリ蔵と、上位常連蔵ですね。
そして、日本酒愛好家たちによる投票でナンバーワンの栄冠に輝いたのは、奈良県桜井市の今西酒造が醸す「みむろ杉」。初めてのグランプリ獲得でした。
愚直な酒造りをすすめてきた今西酒造
グランプリを獲得した今西酒造の第14代蔵元、今西将之さんにお話をうかがいました。
今西将之さんが、28歳の時に蔵に戻って経営を継いだのが、2011年のこと。
その後の数年間で美酒を醸すために必要な設備を一気に導入するとともに、蔵人の平均年齢を20歳台まで下げる若返りを敢行。洗米は10キロごとに洗い、蒸したお米はエアシューターなどの設備は使わず、全量を担いで麹室と仕込みタンクに運ぶなど、質を高めるために効率化を求めず、愚直な酒造りを行っています。
こうした矢継ぎ早の努力のおかげか、「みむろ杉」の大都市圏での評判は急上昇中です。
「7年前に父が急逝して急遽家業を継ぐことになったのですが、その時の蔵のお酒は悔しいけれど、本当に美味しくなかった。それをなんとか美味しいものにしようと必死の努力してきました。
蔵のある桜井市三輪には大神(おおみわ)神社があります。松尾大社とならんで、こちらも酒の神様と言われる酒の聖地。多くの酒蔵が醸造祈願に訪れる場所です。そんな聖地にある酒蔵ですから、目指しているのは直球勝負で王道の日本酒です。味わいは奇をてらわず、香りおだやかでフレッシュな米の味がある綺麗な酒質を目指しています。
当初はなかなかお客様から評価されにくい部分もありましたが、それでも、飲み手が美味しいといってくださる酒を目指すんだと、蔵人とスクラムを組んでがんばってきた成果が認められたのだと受け止めています。これからもひたすらに美味しい酒造りにまい進していきます」(今西さん)
わずか7年で長足の進歩を遂げた今西酒造ですから、「みむろ杉」はこれからもっともっと美味しくなるに違いありません。
(取材・文/空太郎)