酒の神が鎮まる地・三輪の老舗蔵

三輪の地

蔵のある三輪の地は、古くから「酒の神が鎮まる地」と言われ、酒造りの歴史を語るに欠かせない大神(おおみわ)神社があります。同神社は日本最古の神社で、三輪山そのものをご神体として祀っています。

三輪山は、古来から「三諸山(みむろやま)」と呼ばれ、「みむろ」=「実醪」=お酒のもと=お酒の神様として大切にされてきたそうです。

大神神社

毎年11月中旬には、同神社に全国の蔵元や杜氏が集まり、祈願祭が開かれています。また、酒蔵に吊るされる杉玉も三輪が発祥で、大神神社から全国の蔵に届けられています。

みむろ杉のボトル上部のラベル

そんな清酒の聖地と言っても良い三輪の地にある今西酒造も歴史が古く、何と万治3年(1660年)の創業です。創業以来の銘柄は「三諸杉(みむろすぎ)」と「鬼ごのみ」。ご神体の三輪山が「三諸山」とも呼ばれ、同山には杉に神が宿ると言われることから命名されています。

大神神社の鳥居

同蔵にもさまざま逸話があります。文楽「妹背山婦女庭訓」(歌舞伎・浄瑠璃)の舞台となったり、寛保2年(1742年)に五代目当主・今西新右衛門が国宝十一面観音に天蓋を寄贈したり。また、幕末時代には尊攘派の天誅組を蔵元の別荘に匿い、明治28年に奈良県から感謝状を贈られています。

伝統ある蔵で若き蔵人たちが銘酒造りに励む

みむろ杉ラベル

350年以上の歴史が詰まった蔵ですが、現在は若き14代目当主・今西将之さん、そして全員20代の蔵人が酒造りに勤しんでいます。現当主は平成23酒造年度(23BY)から蔵に戻り、同時に蔵人も若返りも進めました。翌24BYから、すべて吟醸や大吟醸クラスの徹底した小仕込みで醸した特約店限定流通のブランド「みむろ杉 ろまんシリーズ」をスタート。旨口・甘口の印象が強い奈良のお酒の中で、同シリーズは綺麗な香りとフレッシュな米の旨みが広がるスマートな味わいです。

奈良唯一の酒米「露葉風」の芳醇辛口酒

みむろ杉の裏ラベル

今回紹介する辛口純米酒は、奈良県で唯一の酒造好適米「露葉風(つゆばかぜ)」を使用、60%まで精米しています。露葉風は奈良県のみで栽培されている酒米で栽培の困難さから一時、生産が途絶えていましたが近年、生産者の努力で復活しました。奈良県内でも、使用する酒蔵が増えてきています。味わいは切れの良い淡麗傾向のようですが、蔵によって個性の違いが大きく出るようです。

こちらの辛口純米は、上立ち香は本当に穏やかで乳酸系の香味。口当たりは非常にシャープでドライ。しかし、しっかりした酸味とジューシー感もあります。キリッと引き締まった中に、米の旨みも感じられる心地よい味わいです。切れ味はズバッと切れていく、まさに芳醇辛口酒。お燗にすると米の旨みと膨らみが増し、さばけも良くなります。お刺身などの和食から肉料理まで合いますし、脂っこい料理でも、上質な酸と切れの良さがきれいに洗い流してくれる印象です。肩ひじ張らずに呑む晩酌酒としてオススメできます。

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