2024年3月28日(木)、仙台駅の1階に、発酵飲料と酒類の醸造所「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria(仙台駅ブルワリー ファーメンテリア)」がオープンしました。
SAKETIMES編集部は、日本酒ファンにとっての新しい名所となるこの醸造所を、オープン前日に訪問。醸造所の雰囲気や、実際に提供されている発酵飲料の味わいを、いち早くレポートします。
目印は、壁一面に並んだ透明タンク!
「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria」があるのは、仙台駅西口の1階にある商業施設「tekute せんだい」の北側の飲食店ゾーン「tekute dining」。3月28日にオープンしたばかりの注目の飲食店街で、東北にゆかりのある10店が並んでいます。
「tekute dining」に入ると、中央に小さい研究所のような空間が見えてきました。ここが、新しい醸造所「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria」です。
店名に入っている「Fermenteria(ファーメンテリア)」は、「発酵」を意味する「Fermentation」という単語に、「店」を意味するラテン語系の語尾「-eria」を組み合わせた造語。発酵を通して、地域コミュニティに根差した“街の発酵屋さん”になりたいという想いを込めています。
「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria」は飲食店ゾーンの一角にありますが、飲食店ではなく、あくまでも醸造所。壁一面にディスプレイされた透明タンクを使い、毎日できたての味わいが楽しめるお酒「サケベイビー」と、ノンアルコールの発酵飲料「ライスブリューミルク」を醸造し、テイクアクトで販売します。
酒類製造免許が発行される時期の関係で、「サケベイビー」の醸造は5月以降を予定。それまでの期間は、合計30個の透明タンクで「ライスブリューミルク」を仕込みます。
完成までにかかる発酵期間は約10日間。毎日3タンクずつ仕込み始めるため、オープンしてから10日目以降は、1〜10日目の発酵の様子が常に見られる状態になります。
「ライスブリューミルク」のラインナップは、2種類の麹(黄麹・白麹)を使用した爽やかな酸味が特徴の「サワーキスト」、さらに、副原料を入れて風味を加えた「ココナッツ」と「カシューナッツ」の3種類です。
実際に試飲してみると、「サワーキスト」は、白麹菌が生成するクエン酸のおかげで、レモンをひと搾りしたようなジューシーな酸味を感じます。さっぱりとした印象で、特に春から夏にかけての気温が上がる時期にぴったりだと思いました。
「ココナッツ」は、米由来のほっこりとした甘味とココナッツの独特な甘味が相性抜群。「カシューナッツ」は意外な組み合わせですが、カシューナッツの脂肪分が麹の甘味と馴染み、コクのある味わいでした。隠し味の塩味が、全体を引き締めてくれています。
「ライスブリューミルク」は、甘酒の製法をベースに造られているため、どのラインナップにもやさしい甘味と酸味が感じられますが、使用する麹や副原料の違いによって、まったく異なる印象の味わいでした。
販売は「トライアル」「レギュラー」「ラージ」の3サイズ。醸造所では持ち帰り用のボトル(スーベニアボトル)も販売され、マイボトルとして利用すると割引を受けられます。
「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria」のオーナーを務める、勝花藏(しょうかぐら)株式会社の代表 伊澤優花(いさわ・ゆうか)さんによると、「ライスブリューミルク」の原料には、宮城県産の食用米「ひとめぼれ」を使用しているのだとか。
複数パターンの精米歩合で試験醸造し、理想の味わいを目指しました。副原料についても、例えばカシューナッツであれば、生がいいのか、それともローストしたほうがいいのかなど、試行錯誤を重ねたといいます。
ちなみに、「サケベイビー」は、いわゆる「どぶろく」に当たる酒類とのこと。「ライスブリューミルク」と同じく、地元産の「ひとめぼれ」を使用する予定です。「甘酒」「どぶろく」という表現をあえて使用しないことについて、伊澤さんは「先入観なく楽しんでほしいから」と話してくれました。
また、「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria」で醸造された発酵飲料や酒類は、同じ「tekute dining」にある飲食店にも卸される予定とのこと。各店のニーズに合わせて醸造のレシピを調整したり、各店でアレンジした商品を提供したりすることで、「造り手だけでなく、売り手による付加価値を創出したい」と、伊澤さんは語ります。
試作段階の商品を味見しに来ている飲食店もあるそうで、「tekute dining」の中でどのように広がっていくのか、期待が高まります。
「できたて」の感動を体験してほしい
新しい醸造所をオープンした理由について、伊澤さんは次にように話します。
「この醸造所は、酒蔵の設備を縮小するという発想ではなく、自家醸造を拡張するというアプローチで設計しました。その背景には、日本酒の製造免許を新規に取得するのが難しいという、日本酒業界の現状に対する危機感があります」
伊澤さんは、免許という特権を持った酒蔵しか日本酒を造れなくなってしまった結果、酒造りという行為と消費者の距離が離れてしまっているのではないかと考えます。
「日本では禁止されていますが、自家醸造のおもしろさを身近に感じてもらうため、2018年から海外向けに自家醸造キットを販売しています。たくさんのユーザーから共通して聞こえてきたのは、『できたて』の美味しさに感動する声でした。その時に、本当の『できたて』を一般の消費者が体験できないというのは、もったいないと感じたんです」
「できたて」の感動を体験してほしい。そんな想いから、この「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria」はオープンしたのです。
さらに、伊澤さんは、醸造所としての役割について話します。
「うちは小さい醸造所なので、さまざまな試験醸造ができることも魅力。例えば、発酵の途中で水を加える工程があるのですが、1つ目のタンクは最初に入れる、2つ目は少しずつ入れる、3つ目は最後に入れるなど、実験的にレシピを変更することができます。そこから得られた新しい発見を業界にフィードバックしていくことも、この醸造所の役割だと思っています」
仙台駅という好立地で「できたて」の魅力を伝える「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria」。この醸造所でどのような発酵飲料や酒類が造られていくのか、今後の展開が楽しみでなりません。仙台駅を訪れる機会があれば、ぜひ「できたて」の味わいを体験してみてください。
ちなみに、「SENDAI STATION BREWERY Fermenteria」では、販売や醸造に関わるスタッフを募集中とのこと。募集の詳細は、記事の最後にある「スタッフ募集の概要」をご覧ください。
(文:SAKETIMES編集部)
◎醸造所の概要
- 店名:SENDAI STATION BREWERY Fermenteria(仙台駅ブルワリー ファーメンテリア)
- 住所:宮城県仙台市青葉区中央1-1-1 仙台駅 1F
- 開業日:2024年3月28日(木)
- 営業時間:11:00〜23:00
- 定休日:「tekute せんだい」に準ずる
- 公式SNS:
・X(旧Twitter):@SakeBabySendai
・Instagram:@sakebabysendai
◎スタッフ募集の概要
- 募集職種:
・販売スタッフ(アルバイト/副業可)
・醸造スタッフ(アルバイト/副業可)
・醸造スタッフ(正社員/試用期間有)
※販売と醸造を兼任できる方を優遇 - 勤務地:宮城県仙台市青葉区中央1-1-1 仙台駅 1F
- 勤務時間:
・【販売スタッフ】12:00〜20:00の中で4時間以上(週3日以上)
・【醸造スタッフ】10:30〜12:00/20:00〜22:30(週5日以上) ※販売との兼任の有無で勤務時間は調整 - 福利厚生:
・社会保険 ※雇用条件による
・交通費支給 ※公共交通機関を利用する場合
・従業員割引
・制服貸与 - 給与:
・【販売スタッフ】時給1,100円
・【醸造スタッフ(アルバイト)】時給1,200〜1,500円
・【醸造スタッフ(正社員)】 年収400〜700万 - 応募資格:
・20歳以上
・マネジメントやコミュニケーションの能力がある方
・果敢な挑戦ができる方 - 仕事内容:
・【販売スタッフ】窓口での販売、レジ・記帳業務、在庫・衛生管理、マーケティング・PRのサポート
・【醸造スタッフ】製造開発のみ、もしくは販売・醸造の兼任 - 必須スキル:
・【販売スタッフ】多様な顧客対応、オンライン・オフラインでのコミュニケーション能力
・【醸造スタッフ】品質管理・安全管理・衛生管理能力、柔軟な創造力・論理的思考力・行動力、オンライン・オフラインでのコミュニケーション能力 - 優遇スキル:
・【販売スタッフ】動画・撮影、カメラ撮影、SNS運用
・【醸造スタッフ】醸造に関する専門的な知識や技術、創造力、数値解析や統計の知識・活用スキル、プロセスの効率化や品質向上のための論理的な問題解決能力 - 応募方法:Googleフォーム
- お問い合わせ先:euka@shokagura.com(勝花藏株式会社 伊澤)