千葉県の津田沼にあるセブンイレブンが、SNSで大きな話題になりました。いたって普通のコンビニにもかかわらず、地酒専門店のような日本酒をそろえているのです。店内のスペースを大きく使って、専門店でもなかなか手に入らないと言われる「獺祭」「作」「楯野川」「東一」「くどき上手」など、プレミアムな日本酒がラインアップされています。

セブンイレブン津田沼店の陳列棚の写真

多くの日本酒を取りそろえているため、日本酒ファンの方々から「みんなでお酒を持ち寄るのですが、あっと驚かせられるような銘柄はありますか?」などのリクエストを受けることも少なくないようです。

豊富な品ぞろえに目を奪われますが、専門の酒販店と比べて、コンビニエンスストアの品質管理は劣ってしまうのではないかという疑問も浮かびます。百聞は一見に如かずということばがあるように、実際に店へ足を運び、豊富なラインアップをそろえた功労者である、店長・三橋聡康さんに話を伺いました。

セブンイレブン津田沼店のオーナーの息子である三橋聡康さんの写真

実は、コンビニとしての営業を始める前は「金二(かねに)商事」という名前の酒販店だったのだそう。セブンイレブンの1号店が出店した翌年(1975年)に、酒販店を取り込む形で「セブンイレブン 津田沼店」としての営業を始め、今年で43年目を迎えています。

コンビニの利点は"高い品質管理"

─ 日本酒の品ぞろえがとても豊富ですが、これほどまでに力を入れることは、コンビニとして問題なかったのでしょうか。

三橋:基本的には、セブンイレブンの商品をしっかりと販売したうえで、お客様のニーズに応えるため、プラスαの部分でお酒に力を入れています。もともと、地元に昔からある酒販店だったため、お得意様がたくさんいたんです。そこで、酒類の販売にも注力したいと、本部に相談をしながらいっしょに方向性を決めました。セブンイレブンとしても、お客様に喜んでもらえる商品をそろえるのが大前提ですからね。

セブンイレブン津田沼店の陳列棚に並ぶ日本酒

─ 最所は酒販店をやっていたそうですが、どうしてコンビニ営業に切り替えたのですか?

三橋:オーナーである父が当時オープンしたばかりの豊洲店を見て、今後はコンビニという形態が大きく広がっていくのではないかと感じたようです。もともと酒販店だったので、初めから日本酒を扱っていましたが、いわゆる"地酒"と呼ばれるような日本酒に力を入れ始めたのは、セブンイレブンになってからですね。今から20数年前、地酒ブームの草分けでもあった「八海山」に父が5年ほど通い、直接取引させてもらったのがスタートです。

─ 扱っている地酒は、酒蔵と直接取引しているのですか?

三橋:そうですね。現在は常温の日本酒を置いた棚が3つ、冷蔵ケースが4つあって、合わせて250種類ほどを取り扱っています。ほとんどが直接取引なので、適正価格で値付けをすることができます。およそ10年前に、自分が後継ぎとして戻って来てから、専門店にも負けない品ぞろえにできないかと思い、全国の酒蔵をいくつもまわりました。

セブンイレブン津田沼店に陳列されている日本酒銘柄リスト

─ コンビニという形態では、取引が難しいのでしょうか?

三橋:4,5年通ってようやく取引してくれた酒蔵もあれば、すぐに取引してくれた酒蔵もあります。全体的には、何度も通った酒蔵のほうが多いですね。コンビニには、お酒の棚が少ししかないと思われていますから。当店のように、日本酒の販売にここまで力を入れているイメージがなかなか湧きにくいと言われることも多いですね。

また、コンビニにお酒を卸しても、きちんと品質管理をしてくれるのかという疑問もあるでしょう。しかし逆に、生鮮食品を扱うこともあるコンビニの設備は最先端だと思います。蛍光灯の紫外線もカットされていますし、場所によってはLEDを採用している店もあります。

当店の冷蔵庫は、コンピューター管理によって適温に保たれていますし、倉庫のなかも気温が上がらないようにきちんと管理しています。鮮度の良い状態で販売するには、良い環境だと思いますよ。

日本酒の魅力を、"気軽に"伝えていく

─ 取引してくれる酒蔵が増え、専門店でもなかなか買えないような銘柄がそろっていることから、一時期、SNSでも話題になりました。これから、同じ試みをしようとするコンビニが増えていくかもしれません。

三橋:一朝一夕ではできないと思います。当店はオープンから43年間、少しずつ販売本数を伸ばしてきました。ロットでまとめて仕入れる必要があること、販売本数のノルマ、季節限定酒はそのシーズンで売りきらなければならないという制限......きちんと売り切ることと、品切れを起こさないことを両立させる必要があります。品切れを防ぐという点では、当店は冷蔵庫や倉庫が大きいので、大量に保管しておけるというのが良かったですね。

もちろん、コンビニだからこその利点もあります。コンビニの良さは気軽に入りやすいことなので、お酒を買わないといけないというお客様のプレッシャーも低いと思います。お酒が目当てでなくても、ふと目に入ったことで興味をもっていただけることもあります。なによりも、24時間いつでもお酒を買うことができるので、特に週末などは、友人同士やご家族の団体客が夜の時間帯によく来店されます。飲食店の方が営業終了後に仕入れに来るという光景も、当店ならではだと思います。

若い方から年輩の方まで幅広く、お酒を購入していただいています。自由に選んでもらえるように、必要最低限の情報のみをポップに書き、おすすめの商品などはチラシを作成してお客様にお渡ししています。コンビニだからこその気軽さを大事にしていきたいですね。

セブンイレブン津田沼店の定番商品

福島県田村市の玄葉本店が醸す「あぶくま」は定番の人気商品

─ SNSでの拡散の影響は大きかったですか?

三橋:遠方から買いに来られるお客様が増えましたね。大きな反響があって、びっくりしています。SNSで話題になったことで、コンビニにもかかわらず日本酒に力を入れていることが周知されました。しかし、"高い品質管理"についてはまだ知られていないので、その点を伝えていくことが今後の課題ですね。ただ、セブンイレブンで本当に良かったと思います。酒蔵の方とお会いしたときにも、自信をもって「当店に卸しませんか?」と言えますから。

セブンイレブン津田沼店の外観

24時間365日、いつでも美味しい日本酒が買える「セブンイレブン 津田沼店」。コンビニとしての強みを最大限に活かした、新しい日本酒の伝え方を知ることができました。

(文/乃木 章)

◎店舗概要

  • 店名:セブンイレブン 津田沼店
  • 住所:千葉県習志野市津田沼6-13-9
  • 電話番号:047-452-0121 (担当:三橋)
  • 定休日:年中無休

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