日本酒を知る

日本酒を楽しむ

日本酒を考える

特集

伊丹市立工芸センターの華麗なる取り組み【前編】

> > > 伊丹市立工芸センターの華麗なる取り組み【前編】
このエントリーをはてなブックマークに追加

台湾在住のSAKETIMESライター謝ひかりです。

「ドらぶ日本酒」な視点から、台湾情報をはじめとした生活・文化のアレコレをお伝えしています。

奈良市との熾烈な「日本酒発祥の地」バトルで全国的なニュースに取り上げられ、一躍お茶の間に名を馳せた兵庫県・伊丹市。大阪国際空港を擁し(と言いつつ実は伊丹市は兵庫県、『千葉県だけど東京ディズニーランド』っていうのと似たようなもの?)関空と並んで近畿地方の空の玄関口です。

sake_g_itamikougeicenter (1)

伊丹の豪商・鴻池善右衛門(後に鴻池家は財閥となり三和銀行を創設、現在は合併して東京三菱UFJ銀行)が改良した日本酒の三段仕込みにより、清酒を一気に大衆的に流通させた功績をもつ伊丹酒。

知らぬものはない「剣菱」「男山」「松竹梅」という銘酒ブランドも元々は伊丹発祥の酒で、特に伊丹酒「剣菱」徳川将軍御用達の御膳酒に指定されたほど。まさに当時の伊丹酒は、江戸期セレブの為のスーパー・ラグジュアリーブランドだった、といえるでしょう。

しかし諸行は無常。その後は明治期にかけて灘や西宮に追い上げられ、伊丹酒の規模は大きく縮小。数多くのブランドが他所に買収されてしまいましたが、現在も「老松」「白雪」が昔ながらの伊丹の伝統を今に伝えています。

そんな伊丹市では近年、伊丹酒のプライドをかけて日本酒文化を盛り上げていくべく多様な取り組みが行われています。全国でも珍しい、工芸(クラフト・アート)にスポットを当てた「伊丹市立工芸センター」でのイベントもその一環。

伊丹市立工芸センターは、市内に立地する文化ゾーン「みやのまえ文化の郷」内にある施設です。

今回はそんな「伊丹市立工芸センター」と日本酒との関わりについて、事業担当の向井智子さんにお話しを伺いました。

sake_g_itamikougeicenter3
「みやのまえ文化の郷」

クラフトに重点を置いている公立施設は日本国内でも珍しいと思います。伊丹市立工芸センター創設の経緯についてお聞かせください。

向井:当センターは、工芸(クラフト)を通して市民の豊かなくらしを創出し、産業の振興と文化の発展を図るために設置されました。プロのジュエリー・アーティストを育成する「伊丹ジュエリーカレッジ」などの事業や展覧会など、工芸文化がみなさんにとって身近なものになるように努めています。

日本酒とかかわる企画にはどんなものがありますか?

向井:「伊丹国際クラフト展」は「酒器・酒盃台」「ジュエリー」の2つのテーマで毎年交互に開催する国際公募展。「酒器・酒盃台」というテーマは、徳利やお猪口などのうつわのみならず場を彩る様々なものを指しており、伝統的な技法を用いた作品からコンセプチュアルなものまで幅広い作品が国内外より集まります。
「伊丹大酒器祭り」は、クラフト展の過去の入賞・入選者による酒器を一堂に集めて紹介する展覧会です。

sake_g_itamikougeicenter4

2015年は、約100人のデザイナーがデザインした日本酒(伊丹酒)のラベルを展示する「日本酒ラベルデザイン展」を開催します。伊丹が誇る日本酒と工芸とのコラボレーションにご期待ください。

センターに隣接する元・酒蔵はどんな建物なんでしょう?

向井:旧岡田家住宅は、延宝2年(1674年)築の町屋。住宅から店舗に改装され北に酒蔵が増築されたのは正徳5年(1715年)とされ、築年代が確実な現存する酒蔵としては日本最古です。

sake_g_itamikougeicenter5

これまでの「酒器・酒盃台」展で、グランプリを受賞した作品の解説、および向井さんの中で印象深い作品があればお願いします。

向井:2014年の大賞は台湾のWU Ching-Chihさんの酒器でした。ジュエリーを制作されている作家さんが、その技法を用いて作った繊細なシルバーの器です。造形の美しさと、「雨水の痕跡」から想を得たという詩的なイメージが魅力的です。

◎ 「The Trace of Rainwater」
作家名:WU Ching-Chih
出身:TAIWAN
素材:fine silver, enamel

content_05949414-e168-4740-a7ce-c7a782d4b895

そして、2012年の梶間智絵さんの作品は、層状の美しい色彩が印象的な磁器の酒器。
とてもかわいらしくて、日々の生活に取り入れたくなる作品です。

◎ 「虹の雫」
作家名:梶間 智絵
素材:磁器

sake_g_itamikougeicenter2
また、2010年の金鍾其さんのチタンの器には、わらを用いた台座がしつらえられていました。お酒のルーツである「お米」をイメージして作られているところに面白さを感じます。

◎チタンの器
作家名:金 鍾其(韓国)
所属:神戸芸術工科大学 特別研究員
素材:チタン・わら・純金箔

また、海外の方が作る作品の中には、従来の酒器のイメージを超えた新鮮なものもあり、驚かされます。
そういった意味で、2010年に奨励賞を受賞したClaudia ZACHOW & Steffen LEUSCHNER さんラブホテルをモチーフにした作品が印象に残っています。

◎ 「love-hotel」
作家名:CLAUDIA ZACHOW / STEFFEN LEUSCHNER(GERMANY)DESIGNER
素材:PORCELAIN(磁器)

sake_g_itamikougeicenter6 (1) (1)

 

これまでもSAKETIMESで酒器について紹介してきましたが、今回は「伊丹×酒器」にスポットを当てた伊丹市立工芸センター事業担当の向井さんのお話は、後編にも続きます!

さらに面白イベントもからめつつご紹介しますので、お楽しみに!

【関連】 みんなは、自慢の「うつわ」持ってる?〜わが家のぐい呑み・お猪口じまん〜
【関連】 【厳選】あこがれのうつわと恋におちる。 −−特別な気分になれるお猪口・ぐい呑特集

日本酒の魅力を、すべての人へ – SAKETIMES

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

ライター募集中!

栖来 ひかり

道草者。愛日本酒のライター、エッセイスト。山口県出身、京都暮らし10年、2006年より台湾在住。お気に入りの日本酒は、出身地である山口県の「長陽福娘」。著書に、台湾の地形歴史散歩本『台湾、Y字路さがし。』(台湾・玉山社/2017)がある。