那須の大地で良酒を醸す小規模蔵
慶応2年(1866年)に創業。那須高原の麓、古墳の町でもある旧湯津上村に広がる田園地帯の中に「大那」を醸す菊の里酒造があります。 酒蔵専務で下野杜氏の阿久津信氏を中心に家族3世代と従業員1名、年間生産量は約300石の小規模蔵ながら、すべて小仕込みの妥協のない酒造りでファンを全国に広めています。
「下野杜氏」で復興の栃木酒
栃木は小規模ながら良酒を醸す若手蔵が増えてきていますが、それは下野杜氏の制度が大きいようです。2001年から栃木県酒造組合が実施している認定制度で、1990年代から、他県に頼っていた杜氏の高齢化による引退が相次ぎ、小さな蔵は廃業の危機を迎えます。しかし、酒造りの危機を打開し、さらに技術を継承していくため、同組合は2001年から利き酒や面接などの試験を課し、職人としての育成を続け、今も新世代の目が育っているのです。
同蔵の特筆すべきこだわりは米作りです。地元那須地区の五百万石を中心に自社田の栽培にも力を入れ、同地域で初めて山田錦、雄町も栽培。現在は7ヘクタールの自社田で栽培しています。契約栽培のお米は有機循環農法という、乳牛など家畜が輩出した有機物や落ち葉や稲わらを有効活用し完熟堆肥として使用し、化学肥料や農薬の使用を最小限にとどめています。
現在の主流?呑み易い生酛
今回ご紹介の生酛純米も自社田の美山錦を57%まで磨いて醸されています。生酛造りは平成20BYから取り組んでいます。「究極の食中酒」を目指す酒蔵らしく、昔ながらのガツンとした生酛と違い、適度な酸を感じながら非常に切れ味良い味わいです。最近のニュースタイル生酛の代表的味わいでしょうか。とはいえ温めると旨みがふくらみ、大きな味の変化を楽しめると思います。ぬる燗あたりが落ち着いて飲めそうです。
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