長野県佐久地方にある13酒蔵の若手後継者たちが共同で美酒を造るプロジェクト「SAKU13(サク・サーティーン)」の第4シーズンが1月にスタートし、ついにお酒が完成しました。
これまでの3シーズンは、13蔵の後継者全員が米づくりから酒造りまで徹底的に関わる形でしたが、今シーズンからは、蔵のあるエリアごとに「北部」「中部」「南部」の3チームを編成し、1年ごとに1銘柄をリリースするという、さらに密度の濃い協同醸造になっています。
今シーズンの酒造りに挑んだのは、北部チームの5蔵。完成したお酒は「SAKU13 project K」と名付けられました。プロジェクトがどんなふうに進んでいったのか、メンバーのみなさんに話を伺います。
「SAKU」ブランドを世界に広めるプロジェクト
メインで醸造を担当するのは、懐古園など、観光スポットの多い小諸市にある大塚酒造。同蔵の杜氏・大塚白実さんとともに、北部チームのメンバーである、大澤酒造・大澤実さん、古屋酒造店・荻原深さん、武重本家酒造・武重有正さん、千曲錦酒造・原知行さんの5人がお酒を醸します。
「SAKU13」というプロジェクトには、それぞれが培ってきた酒造りのノウハウを結集することで、メンバーの技術力をアップさせることだけでなく、「SAKU」というブランドを世界へ発信していくというねらいもあります。
杜氏になってまだ3年の大塚白実さんにとっては、ベテラン4人から酒造りを学べる貴重な機会。そこで、これまでに造ったことのないお酒に挑戦することにしました。
そこで白羽の矢が立ったのは、長野県が独自に開発した酒造好適米・信交種545号「山恵錦(さんけいにしき)」と長野D酵母です。これらを使用し、オール長野の純米大吟醸酒を造ることにしたのです。
この「山恵錦」は、まだ数蔵しか使用していない新しい酒米だったため、大澤さんにとっても、共同醸造の企画にふさわしい、挑戦しがいのあるテーマだったのだとか。
造りが始まると、中部や南部のメンバーを含めた13人が入れ替わりで手伝いに参加しました。そのなかでも、大塚さんがもっとも頼りにしたのは、人気銘柄「明鏡止水」を醸す、酒造歴24年の大澤さんでした。
大澤さんは「蔵が違えば、酒の造り方が異なるのは当たり前。ですから、私の役割は、自分がふだんからやっていることを、折りに触れて細かく話すことでした。それを取り入れるかどうかは、すべて大塚さんの判断です」と、話していました。
アドバイスを受けた大塚さんは「私が悩んでいるときは、蔵まで来てもらって、いろいろな意見を聞かせてくれました。とても助かりました」と、感謝しきりの様子でした。
大塚さんに造りの苦労を伺うと、酵母の活動が予想外に活発すぎたことだったようで、「思ったよりも醪の温度が上がってしまい、対応にあたふたしました」と、当時の様子を振り返っていました。
搾るタイミングについても、次の日にするか、その次の日にするかで迷ってしまい、最終的には大澤さんの意見を聞いたそうです。完成したお酒は、大塚さんのイメージしたとおりになりました。
お披露目イベントは地元で4/22(日)、東京で5/25(金)に開催
完成したお酒のについて、大塚さんは次のように話します。
「料理に合わせたかったので、香りはあまり出し過ぎず、きれいでしっかりとした味わいのあるお酒に仕上げました。白身魚の煮付けに合うと思います」
荻原さんは「シャープな印象があるけど、芯がしっかりしている。天ぷらといっしょに飲みたいですね」と話していました。
完成したお酒は、4月22日(日)の午前11時から、小諸駅前の停車場ガーデンにて開かれる完成お披露目会で発売されます。価格は720mlで、2,300円(税抜)。都内でのお披露目は、5月25日(金)に試飲会が予定されています。
佐久にある13蔵が集結し再始動した「SAKU13」のプロジェクト。SAKUの地に思いを馳せながら飲むお酒は、どのような味がするのでしょうか。
(取材・文/空太郎)