長野県佐久地方にある13軒の酒蔵の若手後継者たちによるプロジェクト「SAKU13(サク・サーティーン)」。地域の酒蔵が共同出資などで酒造りをするプロジェクトは最近増えてきましたが、田植えから絞りまで、全蔵が一緒になって作業するのが信州佐久市の「SAKU13(サク・サーティーン)」の大きな特徴です。
6月4日(土)に東京・銀座にて開催された「SAKU13 3rdシーズン御披露目会」の模様をレポートします。
「SAKU13」のはじまり
ことの発端は、佐久市酒造組合「若葉会」の懇親会でのひとこと。伴野酒造の蔵元杜氏・伴野貴之さんから「”佐久市”という地域を全面に出したお酒を売り出せないか」という提案でした。この提案に他の蔵も大賛成。
そこで「すべての蔵が一緒になって、酒造りの作業を行う」という、今までにないやり方の企画が誕生しました。それぞれが異なる個性を持っている13蔵が一斉に集まって酒造りを行うというのですから驚きです。
第一弾は、この企画の発案者である伴野酒造からスタート。「SAKU13」という名前で2014年に発売されました。
「若葉会」会長の井出 平さん(橘倉酒造)にお話を伺いました。
「合同作業だからこその苦労もあるけれど、それ以上に良い面が多いですよ。担当蔵は大変でしょうが、蔵同士の交流も増え、蔵ごとの酒造りのやり方も見られて、とても勉強になるようです。この活動を続けながら、佐久市全蔵のレベルが上がって欲しいと願っています」
担当蔵の順番は、蔵元杜氏の蔵から順にはじめようと決めたそうです。13蔵のうち、蔵元と杜氏が同じなのは4蔵のみ。1年目は伴野酒造、2年目は大澤酒造が担当しました。
13蔵の仕込み水を使った「3rdシーズン」
3年目の今季は黒澤酒造が担当蔵でした。「次は自分の蔵」と決まった時は正直複雑な気分だったようです。13蔵全部の想いを受け止めなければならないので、プレッシャーも大きかったことと思います。
担当蔵となって、まずは黒澤らしさを出そうとした時に、自然と生酛造りでいこうと考えました。そして、13蔵の仕込み水を使おうと決めました。これが思った以上に大変で、黒澤銘柄と同じ酵母を使用しても、醪の発酵タイミングが全く違い、毎日心配ばかりしていたそうです。
搾りの日を無事に迎えた時はきっと安心したのではないでしょうか。苦労の甲斐あって、生酛で黒澤造りらしい仕上がりとなり、13蔵の仕込み水ブレンドにも注目が集まりました。
このラベルに描かれているものは「煙をはく浅間山と千曲川」をデザインしたもの。1stシーズンから使われていています。
SAKU13で乾杯!
SAKU13で乾杯をして、お披露目会はスタート。
この日は、SAKU13のほかに、佐久市各蔵の代表銘柄も取り揃えており、蔵元自ら提供していました。
各蔵のお酒を味わいつつ、蔵元の話も聞ける楽しい時間です。
3rdシーズンにあう料理とは?
当日の料理を担当したのは佐久市にある「お料理れもん」店主の濱口さん。「若葉会」会長の井出さんとは同級生という間柄です。佐久市の食材をふんだんに使った濱口さんの料理は本当に素晴らしく、東京で口にできる機会は滅多にないものばかりでした。
SAKU13を呑んだ濱口さんの感想は「黒澤さんらしい、しっかり目の味」。これに合うのは、苦味のあるものだそうで、お酒との相性を考えた料理が並んでいました。
信州の朝獲れ野菜や信州サーモン、佐久鯉など、地元・佐久市の食材でつくられた特別メニュー。特に「鯉の煮こごり」は抜群の出来栄えで、3rdシーズンとよく合い、口の中で旨みが倍増しました。
4thシーズンの担当蔵は戸塚酒造
次回の担当蔵は「寒竹」の戸塚酒造で、すでに田植えは終了。みんなで作業した田植えはとても楽しかったそうです。
杜氏の西村さんにお話を伺うと、やはり本音は「大変だな……」ということでした。普段の酒造りとは重みが全く違うようです。
まだお米も出来上がっていないので、どういうお酒にするかは決まっていませんが、13蔵合同のお酒ということでバランスの良い仕上がりを目指したいと仰っていました。
今後は、1年に1蔵という方法ではなく、1年に2蔵同時でお酒を仕込むという考えもあるようです。同じ年に異なるSAKU13を呑み比べできるようになるとは、それもまた楽しみでなりません。
こんなイキイキとした蔵元、杜氏たちが集まるのですから、よいお酒を造ってくれるのは間違いないでしょう。来年が待ち遠しいですね。
(文/まゆみ)
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