蔵の梅の木の香りから命名
約600年前、九条関白の息子・厳中和尚に帯同し、肥後(現在の熊本県)玉名郡内に初めて下った神田家の先祖はその地に根を下ろします。妙見神社所有の「神田」の名を譲り受け、1902年(明治35年)に神田酒造として創業しました。蔵の周りに梅の古木があり、春になると蔵一面に花の香りが漂っていたことから、「花の香」の銘柄名がつきました。その後、会社名も銘柄と同じ「花の香酒造」と変更されます。清酒のほか焼酎も生産しています。
「獺祭」の旭酒造で修業! 全量山田錦の新たな「花の香」が誕生
「花の香」も以前は普通酒を中心に製造していましたが、行政の不振と相まって、蔵元の神田清隆さんが手作りの高品質の酒を醸そうと2014年に一念発起。今や世界的な人気銘柄となった「獺祭」を醸す旭酒造(山口県)へ修業を直談判しました。これを旭酒造の社長・桜井博志さんが承諾。同年9月から蔵元5人で修業を行いました。蔵も小仕込み用に改修。若き蔵元と地元産の山田錦を使った、手仕込みの新しい「花の香」を2015年3月から世に送り出しています。
熊本地震の被害受けるも営業再開
新酒祭りを行ったわずか4日後の4月14日、そして16日にも、蔵は震度7、6強という激震に見舞われました。前震では被害は比較的軽かったものの、16日の本震で床や壁に20カ所以上のひび割れ、さらに蔵前の道路が崩壊寸前となり、明治から残る蔵の煙突はこの夏倒さざるを得ない状況となっています。しかし幸い家屋には大ダメージはなく、4月末より営業は再開されているようです。
コスパ抜群!これからが楽しみな逸品
菊花は、熊本県産の山田錦を50%まで磨いています。香りは穏やかな林檎系の果実香。熊本だけにおそらく9号酵母系かと。フルーティーな香りの中に、伝統的な「撥ね木搾り」を採用しているためか、ほのかな木香もただよってきます。口に含むと、山田錦由来の米のうまみが膨らむとともに、シャープな酸が絶妙なバランスで口の中に広がります。透明感がありながら密度の濃い味わい。アフターはスパッと切れていきます。エレガントかつ引き締まった味わい。
食事は、魚介系など上品な味わいのものなど幅広く合わせられそうです。お燗にするとこれも酸やふくらみがさらに出てきて、意外にも燗上がりします。飲食店関係者も「久々に、蔵に行って取扱いしたいお酒だ」と絶賛。
値段も山田錦の純米大吟醸で3000円を切るため、コスパも抜群です。まだ特約店など少ないですが、これは楽しみなブランドが誕生したと言えるでしょう。
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