SAKETIMES編集部が、いま気になるお酒をテイスティングする連載企画「SAKETIMES編集部 注目の一本」。

今回は、イギリス・ロンドンで開催された世界最大規模のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2023」のSAKE部門において、最高賞「チャンピオン・サケ」を受賞した「十六代九郎右衛門(じゅうろくだいくろうえもん)純米吟醸 美山錦」(湯川酒造店/長野県)をご紹介します。

「十六代九郎右衛門」を代表する一本

1650年(慶安3年)に創業し、長野県の木曽郡木祖村に蔵を構える湯川酒造店。全国の酒蔵の中で2番目の標高(936メートル)に位置する酒蔵で、杜氏・湯川慎一さんと社長・尚子さんの夫婦が中心となり、木祖村の立地を最大限に活かした日本酒「木曽路」と「十六代九郎右衛門」を醸しています。

「十六代九郎右衛門 純米吟醸 美山錦」

そんな湯川酒造店が、「十六代九郎右衛門」のフラッグシップとして打ち出しているのが、長野県で生まれた酒米・美山錦を100%使用して醸す「十六代九郎右衛門 純米吟醸 美山錦」です。

こちらは、「IWC 2023」のSAKE部門において、出品された1,601銘柄の中から最高賞「チャンピオン・サケ」に輝いた商品。受賞酒(2022BY)はまだ発売前のため、今回テイスティングするお酒(2019BY)とは醸造年度違いの商品になりますが、原材料や精米歩合などの基本的なスペックはほとんど変わっていません。

「十六代九郎右衛門 純米吟醸 美山錦」

製法に関しては、2022BYより生酛仕込みを取り入れているため、それ以前に造られた速醸酛のものとは違いがあるものの、「十六代九郎右衛門」のスタンダードな味わいは共通して感じられるはずです。

数ある銘柄の中から頂点に輝いた日本酒とは、いったいどのような味わいなのでしょうか。

きれいさと複雑味を兼ね備えた味わい

それでは、実際にテイスティングをしてみましょう。

色合い

グラスに注いだ時の外観は、黄色がかった透明です。仕込みから3〜4年が経過しているため、熟成が進み、黄色の色味が強くなっているのかもしれません。

「十六代九郎右衛門 純米吟醸 美山錦」

香り

グラスに鼻を近づけた時の第一印象は、アーモンドなどのナッツ類を思わせる香ばしい熟成香。また、同じく熟成酒特有の香りである、はちみつやメープルシロップなど、とろみのある甘みも感じられます。

熟成香と比べると存在感は弱いですが、炊いた米のようなふくよかな旨味や、りんごのようなフルーティーな甘みも感じました。一般的な日本酒よりも香りの要素が多く、これからの飲み口を期待させてくれます。

味わい

口当たりはやわらかく、はじめに米由来の旨味を感じました。その後、熟成酒らしい複雑な旨味が少しずつ口の中に広がっていきます。干した椎茸を思わせる出汁のような旨味で、ほっとするような安心感がありました。

終盤にかけては、ハーブのようなニュアンスの苦味が感じられるため、余韻の印象はすっきりとしています。全体的に穏やかな味わいで、複雑感がありながらも、きれいにまとまっている印象がありました。

「十六代九郎右衛門 純米吟醸 美山錦」

合わせる料理としては、出汁のようなニュアンスを活かして、旨味の強い和食との相性が良さそうです。魚料理では、ぶり大根やさばの味噌煮、かれいの煮付などが、肉料理では、豚肉の味噌漬けなどが合うのではないでしょうか。

今回は冷やした状態でテイスティングを行いましたが、温かい料理と合わせる時は、ぬる燗くらいまで温めると出汁のようなニュアンスが深まり、さらに相性が良くなるかもしれません。

生酛仕込みの「純米吟醸 美山錦」にも期待!

「十六代九郎右衛門 純米吟醸 美山錦」

蔵元が「『十六代九郎右衛門』の定番は?」と尋ねられたら、迷わず「純米吟醸 美山錦」と答えるというこの一本。木曽川の伏流水に由来する、きれいでやわらかな酒質でありながらも、米由来のふくよかで複雑な旨味も感じられ、とても飲み手の印象に残りやすい日本酒だと感じました。

「チャンピオン・サケ」を受賞したお酒は生酛仕込みで造られているため、さらに複雑味を増した、ボリューム感に優れた一本に仕上がっているのかもしれません。公式サイトによると、「受賞記念酒」として、9月〜10月ごろの発売を予定しているとのこと。気になった方は、ぜひ世界に認められた味わいを体感してみてください。

◎商品概要

(執筆・編集:SAKETIMES編集部)

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